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艸句会報:若草(令和6年4月13日)

若草句会(俳句文学館)
兼題「糸」 席題「坂」

印象句
ウィスキーボンボンやけに利く朧   霜田美智子
糸遊やパワーショベルの土匂ふ    松本ゆうき

【一口鑑賞】美智子さんの句。春の夜、大気中の水分が増加して万物がぼんやりと霞んで見えることを「朧」と言う。朧月はポピュラーだが、草朧、岩朧、鐘朧、朧夜など俳句では多彩な使い方がある。そんな夜にウイスキーボンボンを舐めた作者。口の中に広がった香りと甘みが情緒的に感じられたのだろう。ゆうきさんの句。「糸遊」も春らしいのどかな気象現象。広い工事現場の遠方に水蒸気が立ちのぼり、揺らぐ景が目にうかぶ。一方、パワーショベルは作者の近くで動いている。「土匂ふ」という春の季語もあるが、この句においてはただの土の匂いであって、むしろ臨場感を生んでいる。(潔)

嗣治の裸婦の白さや花馬酔木     新井 紀夫
春光や波の縁どる三番瀬       新井 洋子
坂道に糸の雨降る啄木忌       岡戸 林風
ほんたうの老いはこれから山桜    松本ゆうき
ランドセル見せに隣の入学児     安住 正子
囀をこぼす城址の夕まぐれ      飯田 誠子
糸綴じの小さき詩集や暮の春     山本  潔
花冷やまな板に散る魚の血      霜田美智子
天の繰る絹糸のごと春の雨      市原 久義
紅の粒よりひらく雪柳        石田 政江
ランドセル枕にれんげ畑かな     片岡このみ

(清記順)
※次回(5月11日)の兼題「鳥」

艸句会報:船橋(令和6年4月6日)

船橋句会(船橋市中央公民館)
兼題「手・掌」 ミニ吟行:海老川沿いの桜並木

印象句
集ひたる人それぞれの初桜      並木 幸子
花人となりて海老川遊歩道      岡戸 林風

【一口鑑賞】この日は午前中、船橋市内中央部を流れる海老川沿いの遊歩道を吟行した。両岸に往復約3㌔のお花見スポットがあり、満開の桜を楽しんだ。幸子さんの句。「初桜」はその年の春に初めて咲いた桜のこと。満開の桜とは意味合いが異なるが、この句は人それぞれに花と合う喜びを詠んでいる。下五を「桜かな」としてもいいだろう。林風さんの句。「花人」は花見をする人。風流な語感がある。「花見人」「桜人」とも言う。桜のトンネルを歩く嬉しさと同時に、地元の名所への挨拶の気持ちが込められている。(潔)

街川の流れの中の花明り       山本  潔
手信号の合図で渡る入学児      小杉 邦男
青空へ羽音響かせ恋雀        三宅のりこ
手作りの三段重や花の宴       飯塚 とよ
じやんけんは指のリハビリ花辛夷   川原 美春
永き日の手相に長き生命線      沢渡  梢
落花一片掌に七曜の過ぎゆけり    岡戸 林風
桜狩り海老川沿ひを行き来して    有賀 昭子
指折りて紡ぐ言の葉青き踏む     並木 幸子
鉄板に屋台準備の春キャベツ     岡崎由美子

(清記順)
※次回(5月4日)の兼題「みどりの日」
句会場は船橋市勤労市民センター

艸句会報:連雀(令和6年4月3日)

連雀句会(三鷹駅前コミュニティセンター)
兼題「虚子忌」

印象句
虚子の忌を思へば更に子規のこと   中島 節子
柳の芽草書のやうに揺らぎをり    束田 央枝

【一口鑑賞】高浜虚子は1874年(明治7)2月22日伊予松山に生まれ、1959年(昭和34)4月8日、85歳で没した。今年は虚子生誕150年。節子さんの句は、虚子を偲ぶと、その師である子規にも思いが及ぶというのだ。愛媛出身の作者にとっては二人とも誇るべき郷土の偉人。「虚子忌」は故郷への思いを新たにする日でもあるのだろう。央枝さんの句。萌黄色の新芽を吹いた柳の枝が揺れている。その様子を「草書のやうに」とは言い得て妙。日頃から書道の勉強にも余念が無い作者ならではの一句。(潔)

虚子の忌の夜目にも白き花椿     坪井 信子
清明や十五穀米など炊いて      束田 央枝
屋形船水より暮れてゆく朧      矢野くにこ
武蔵野は花の盛りの虚子忌かな    山本  潔
町川の底の見えたる水温む      春川 園子
霾や高齢パンダ天国へ        松本ゆうき
騙し絵の階のぼりゆく四月馬鹿    向田 紀子
知らぬ者同士手を振る花見舟     中島 節子
晩節や心自由に青き踏む       横山 靖子
あの窓に父の面輪の夕桜       飯田 誠子

(清記順)
※次回(5月1日)の兼題「八十八夜」

艸句会報:すみだ(令和6年3月27日)

すみだ句会(すみだ産業会館)
兼題「桜」一切

印象句
桜まじベンチの猫の毛繕ひ      大浦 弘子
待つといふそんな日も好き桜まじ   髙橋 郁子

【一口鑑賞】今年の桜は開花が遅く、東京では3月29日が開花日となった。平年より5日遅く、過去10年で最も遅い。とはいえ、暦通りだから異常でも何でもない。句会の日は開花前だったが、印象句はいずれも季語が「桜まじ」。桜の時期に吹く暖かい南風のこと。大浦さんの句はベンチで猫が毛繕いをしているのどかな光景を捉えている。この3月は寒の戻りが長かったから、猫も桜の開花を喜んでいるようだ。郁子さんの句は桜が咲くのを待ち望んでいた気持ちを素直に詠んだのだろう。「そんな日も好き」という感覚が「桜まじ」と響き合っている。(潔)

ほろ酔ひの足のもつれや春の月    岡戸 林風
古本を鞄に入れて春の昼       大浦 弘子
鳥交り犬は尿する花の道       松本ゆうき
すり減りし身替り地蔵花吹雪     福岡 弘子
教会の鐘やミモザの花揺るる     長澤 充子
豚カツの揚げたて夫にのどかなり   貝塚 光子
熊笹に隠るる山路鳥の恋       岡崎由美子
春風や指輪落としし聖橋       根本恵美子
肝心なこと聞きもらし桜餅      山本  潔
春雪や熱の子に読む「ぐりとぐら」  髙橋 郁子
雨粒を溜めて瑠璃濃き犬ふぐり    内藤和香子
深爪の足の小指や弥生尽       江澤 晶子

(清記順)
※次回(4月24日)の兼題「春惜しむ」

艸句会報:かつしか(令和6年3月24日)

かつしか句会(亀有地区センター)
兼題「前」

印象句
雪解川門前町を響かせて       佐治 彰子
前田家の赤門潜る春の昼       五十嵐愛子

【一口鑑賞】彰子さんの句。よく旅をする作者。桜の開花を待ちきれずに訪れたどこかの門前町か、あるいは雪深い故郷の早春の光景かもしれない。空気はまだ冷たいが、雪解け水が勢いよく流れている様子が目に浮かんでくる。その音は歓喜の声のように「門前町を響かせて」いるのである。豊かな水が春の光に輝いている。愛子さんの句も兼題からの発想。東大本郷キャンパスが加賀藩前田家の上屋敷だったことを踏まえて、「前田家の赤門潜る」と言ったところが面白い。行動的で吟行が好きな作者。春のあたたかくのどかなときを三四郎池のほとりで過ごしながら句作に励んだのだろう。季語が効いている。(潔)

雪の果て煎餅買ひに歩きけり     西村 文華
銀輪の若きらの背や春日影      西川 芳子
一年生前へならへの上手な子     片岡このみ
江戸前の天ぷら御膳花見船      霜田美智子
料峭や弘前城の石落し        山本  潔
建前の檜の香り春の風        佐治 彰子
春炬燵結末のみのラジオ聴く     近藤 文子
雪柳木橋の架かるビオトープ     新井 紀夫
「生かされてます」三月十日慰霊堂  五十嵐愛子
幼子の風につまづくたんぽぽ野    新井 洋子
目をみはる雛に目隠しして納む    千葉 静江
旧友と語らひながら木の芽道     笛木千恵子
それぞれにランチ持ち寄り花の宴   小森 貞子
鶴帰る孫に持たせる常備薬      高橋美智子
大試験終へて穏やかなりし孫     小野寺 翠
駐輪を根こそぎ倒す春疾風      伊藤 けい

(清記順)
※次回(4月21日)は折句「いつは」
 例句 石垣を突いて廻しぬ花見船 綾部仁喜

艸句会報:東陽(令和6年3月23日)

東陽句会(江東区産業会館)
兼題 テーマ「道」

印象句
新宿発夜行バスにて麦踏みに     伊藤  径
抜け径の静かさが好き花大根     飯田 誠子

【一口鑑賞】径さんの句。夜行バスは旅先での時間の有効活用やコストの面でも魅力がある。かつて新宿駅西口周辺に分散していた高速バスの乗降場は2016年に「バスタ新宿」として集約された。その新宿を起点にした「夜行バス」の旅が読み手の郷愁を誘う。早春のまだ寒さの残る麦畑はのどかでもあり、さびしくもある。下五の韻を踏んだ措辞が効果的だ。誠子さんの句。築地界隈に暮らし、銀座への道も知り尽くしている作者。昼間でもしんと静まり返った小径を抜けていく時のわくわくする気持ちが伝わってくる。「花大根」は大根の花をさすが、この句では「諸葛菜」の別名として使われている。(潔)

駅員の指呼の彼方へ鳥帰る      中川 照子
迷ひゐて花野に探す掲示板      飯田 誠子
裏径を隣の家へ蓬餅         斎田 文子
落花にも風の道あり誓子の忌     岡戸 林風
たんぽぽや少年いつも悩みあり    松本ゆうき
お彼岸の電車は風のゆりかもめ    伊藤  径
みちくさてふ響き懐かしつくしんぼ  向田 紀子
主なき書斎の椅子の春埃       岡崎由美子
この径やまつすぐ行かば彼岸寺    山本  潔
ほの白き荼毘の煙や花辛夷      新井 紀夫
雪しろや小沢溢れて日暮まで     関山 雄一
ほほじろや小さな庭の小さな木    新井 洋子
波がしら増えて夕日の若布籠     安住 正子
いつの日か花散る終の道ならば    沢渡  梢
潮入の渦音高し藪椿         中島 節子
清明の雨きらきらと石畳       堤 やすこ

(清記順)
※次回(4月27日)の兼題「念」

艸句会報:若草(令和6年3月9日)

若草句会(俳句文学館)
兼題「片」 席題「楽器」

印象句
蟻穴を出づこなごなのビスケット   沢渡  梢
唐橋に二胡の音色や春の宵      岡戸 林風

【一口鑑賞】梢さんの句。啓蟄(今年は3月5日)が過ぎて土中で冬籠りをしていた生き物が動き出した。「蟻穴を出づ」は身近な昆虫の代表格の季語と言っていい。掲句は、その季語とビスケットの取合わせが楽しい。「こなごなの」という描写に臨場感があり、早くも忙しそうな蟻たちの姿が見えてくる。林風さんの句。「唐橋に立てば二胡の調べが聴こえてくることだなあ、この春の宵は」。席題での即吟。蘇東坡の「春宵一刻直千金」に言うように、「春宵」は甘美な心地良い時間帯。浪漫的な作者の一句。(潔)

旅はいつも片道切符つくづくし    山本  潔
亀鳴くや昭和モダンのジャズダンス  飯田 誠子
T字路にバイクの破片春の雪      霜田美智子
精霊の朝の目覚めの百千鳥      新井 紀夫
少年の爪引くギター鳥雲に      松本ゆうき
園児らを横目につくし摘みにけり   片岡このみ
大寒に響く味噌玉たたきつけ     石田 政江
天井に揺るる日の斑や春の風邪    岡戸 林風
内裏雛ジェンダーフリーの右左     市原 久義
避難所の講堂に聞く卒業歌      安住 正子
小さき手の跳ねる鍵盤雛の間     沢渡  梢
あやとりのタワーを春の空に立て   新井 洋子

(清記順)
※次回(4月13日)の兼題「糸」

艸句会報:連雀(令和6年3月6日)

連雀句会(三鷹駅前コミュニティセンター)
兼題「野」

印象句
母の忌や残り香めきて沈丁花     横山 靖子
野火止の音なき流れ諸葛菜      向田 紀子

【一口鑑賞】靖子さんの句。「沈丁花」は中国原産で、日本には室町時代に渡来した。花は紫がかった紅色で香りが高い。春のまだ薄ら寒い頃に雪の中や、闇の中で匂ったりすると情感がある。3月にお母様の命日が巡ってくる作者。「沈丁花」が好きだった母への思慕の情は今も変わらない。紀子さんの句。「野火止」は東京の玉川上水から分水し、埼玉県内の荒川水系の支流へ至る全長24kmの用水路。武蔵野の風情を楽しめる遊歩道も整備されている。この句は、土手一面に「諸葛菜」の広がるのどかな景が浮かんでくる。(潔)

梅日和心身ともに動き出す      横山 靖子
啓蟄の雨に濡れゐる犬の墓      山本  潔
梅真白野仏に人影もなし       春川 園子
段丘の裾野に残る畑山葵       束田 央枝
雛の傷ひとつひとつの物語      飯田 誠子
啓蟄や蟇の棲みつく縁の下      向田 紀子
「老」と言ふ文字は春野に捨てて来し 坪井 信子
菜の花や柵に野良着の干されあり   中島 節子
もの忘れしたこと忘れ日永かな    松本ゆうき

(清記順)
※次回(4月3日)の兼題「虚子忌」

艸句会報:船橋(令和6年3月2日)

船橋句会(船橋市勤労市民センター)
兼題「走」

印象句
水やりのホースの走る春の芝     新井 洋子
叶ふなら犬と駆けたし春の野を    川原 美春

【一口鑑賞】この日の兼題は「走」。句友の隣安さんが3日の東京マラソンに出場することから、応援を兼ねてこの字を詠み込んだ。洋子さんの句は、若芽が萌え始めた庭園の芝生が目に浮かぶ。「ホースの走る」という切り取り方が巧みだ。水やりの人の姿とともに、周囲の自然の躍動が感じられる。美春さんの句。今は杖に頼る生活となり、走ることもできない作者だが、「春の野」に立てば走りたい気持ちが湧いてくるのだろう。愛犬のゴールデンと野を駆け回ったことが懐かしく思い出されるという。「叶ふなら」が切ない。(潔)

根の走る歩道のうねり糸柳      新井 紀夫
春風や走り書きする詩のかけら    岡戸 林風
走る走る隣安さんの春一日      沢渡  梢
青信号走り出す新一年生       三宅のり子
真つ白なマラソンシューズ風光る   山本  潔
天神に鳥語しきりや木の芽張る    新井 洋子
春暁のころがる薬おひかけて     有賀 昭子
寝静まり宴始まる五段雛       川原 美春
手作りの雛に着せたる古代絹     並木 幸子
乗り換えに走る靴音冴返る      小杉 邦男

次回(4月6日)の兼題「手・掌」

艸句会報:すみだ(令和6年2月28日)

すみだ句会(すみだ産業会館)
兼題「二月」

印象句
葦原の泥の艶めく二月尽く      貝塚 光子
春眠や誰かが食器洗ふ音       根本恵美子

【一口鑑賞】光子さんの句。冬の間に枯れた葦原で泥が剥き出しとなっている光景を目にしたのだろう。2月はそれなりに雨も降ったので水が染みて艶めいている。そんな「二月」が終わり、季節はいよいよ春本番へ。この句は、江東区内の旧中川水辺公園を一人吟行しての作という。恵美子さんの句。春の朝の心地良い眠りのなかに聞こえてくる音。先に起きたご主人が食器を洗ってくれているようだ。起きなければと思いつつ、もう少し寝ていたいという気持ちが読み手にも伝わってくる。上五の詠嘆が効いている。(潔)

菜の花忌夫の書棚のうす埃      髙橋 郁子
量子論語る俳人不器男の忌      松本ゆうき
春雪の轍跡ふむ女傘         長澤 充子
如月や巌頭に立つ風の神       岡戸 林風
路地ふさぐ引越しの荷や梅の花    内藤和香子
「幸せでした」と閉店の札風光る   福岡 弘子
さざなみの光たばねて春の鴨     貝塚 光子
本願寺堂宇の下の春日差       江澤 晶子
すれ違ふ喪服姿や二月来る      大浦 弘子
書けぬのに画帳買ひたる梅二月    根本恵美子
休まずに登る二月の男坂       山本  潔

(清記順)
※次回(3月27日)の兼題「桜一切」
プロフィール

艸俳句会

Author:艸俳句会
艸俳句会のWeb版句会報。『艸』(季刊誌)は2020年1月創刊。
「艸」は「草」の本字で、草冠の原形です。二本の草が並んで生えている様を示しており、草本植物の総称でもあります。俳句を愛する人には親しみやすい響きを持った言葉です。

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