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艸句会報:船橋(令和6年3月2日)

船橋句会(船橋市勤労市民センター)
兼題「走」

印象句
水やりのホースの走る春の芝     新井 洋子
叶ふなら犬と駆けたし春の野を    川原 美春

【一口鑑賞】この日の兼題は「走」。句友の隣安さんが3日の東京マラソンに出場することから、応援を兼ねてこの字を詠み込んだ。洋子さんの句は、若芽が萌え始めた庭園の芝生が目に浮かぶ。「ホースの走る」という切り取り方が巧みだ。水やりの人の姿とともに、周囲の自然の躍動が感じられる。美春さんの句。今は杖に頼る生活となり、走ることもできない作者だが、「春の野」に立てば走りたい気持ちが湧いてくるのだろう。愛犬のゴールデンと野を駆け回ったことが懐かしく思い出されるという。「叶ふなら」が切ない。(潔)

根の走る歩道のうねり糸柳      新井 紀夫
春風や走り書きする詩のかけら    岡戸 林風
走る走る臨安さんの春一日      沢渡  梢
青信号走り出す新一年生       三宅のり子
真つ白なマラソンシューズ風光る   山本  潔
天神に鳥語しきりや木の芽張る    新井 洋子
春暁のころがる薬おひかけて     有賀 昭子
寝静まり宴始まる五段雛       川原 美春
手作りの雛に着せたる古代絹     並木 幸子
乗り換えに走る靴音冴返る      小杉 邦男

次回(4月6日)の兼題「手・掌」

艸句会報:すみだ(令和6年2月28日)

すみだ句会(すみだ産業会館)
兼題「二月」

印象句
葦原の泥の艶めく二月尽く      貝塚 光子
春眠や誰かが食器洗ふ音       根本恵美子

【一口鑑賞】光子さんの句。冬の間に枯れた葦原で泥が剥き出しとなっている光景を目にしたのだろう。2月はそれなりに雨も降ったので水が染みて艶めいている。そんな「二月」が終わり、季節はいよいよ春本番へ。この句は、江東区内の旧中川水辺公園を一人吟行しての作という。恵美子さんの句。春の朝の心地良い眠りのなかに聞こえてくる音。先に起きたご主人が食器を洗ってくれているようだ。起きなければと思いつつ、もう少し寝ていたいという気持ちが読み手にも伝わってくる。上五の詠嘆が効いている。(潔)

菜の花忌夫の書棚のうす埃      髙橋 郁子
量子論語る俳人不器男の忌      松本ゆうき
春雪の轍跡ふむ女傘         長澤 充子
如月や巌頭に立つ風の神       岡戸 林風
路地ふさぐ引越しの荷や梅の花    内藤和香子
「幸せでした」と閉店の札風光る   福岡 弘子
さざなみの光たばねて春の鴨     貝塚 光子
本願寺堂宇の下の春日差       江澤 晶子
すれ違ふ喪服姿や二月来る      大浦 弘子
書けぬのに画帳買ひたる梅二月    根本恵美子
休まずに登る二月の男坂       山本  潔

(清記順)
※次回(3月27日)の兼題「桜一切」

艸句会報:かつしか(令和6年2月25日)

かつしか句会(亀有地区センター)
兼題「森」

印象句
木の芽雨筑波の森を覆ひけり     小野寺 翠
ペガサスに乗り旅に出る春の夢    小森 貞子

【一口鑑賞】翠さんの句。「木(こ)の芽雨」は春の芽吹きのときに降る雨。木々の芽がとりどりの色や形に芽生えてくるなか、雨に濡れてしっとりと輝いている森は美しい。バス旅行で筑波山へ行ってきた作者。森全体を覆うような春雨のなかで、木々の息吹を感じるままに詠んだ。貞子さんの句。「春の夢」は春の眠りのなかで見る夢のこと。この句は「ペガサスに乗り」という句またがりの措辞が読み手の興味を引きつける。さらに「旅に出る」でロマンを感じさせる。春らしい希望にあふれる一句。(潔)

賑やかに夜汽車見送る春コート    高橋美智子
煌めける庭木の雫雪の果て      笛木千恵子
この森を祖父から孫へ雪間草     近藤 文子
探梅の白寿の足の軽やかに      小野寺 翠
うららかや藩邸偲ぶ紀尾井坂     五十嵐愛子
雉子鳴く森閑として山も奥      新井 洋子
伊豆沖に行き交ふ船や春霞      伊藤 けい
うす暗き森の賑はひ百千鳥      片岡このみ
うぶすなの鎮守の森や苗木市     霜田美智子
風吹けば踊るが如しチューリップ   西川 芳子
靴下の毛玉取る癖春炬燵       千葉 静江
猫舌に熱きスープや春の雪      山本  潔
早春の早稲田の森の八一展      西村 文華
亀鳴くや今も手書きの診察券     新井 紀夫
音もなく勿忘草の咲く野かな     小森 貞子
春雷や逃げるシーサーぶりの猫    霜田美智子

(清記順)
※次回(3月24日)の兼題「前」

艸句会報:東陽(令和6年2月24日)

東陽句会(江東区産業会館)
兼題 折句「あいう」
例句 青空のいつみえそめし梅見かな 久保田万太郎

印象句
あいさつを犬からはじむうべの花   斎田 文子
杏咲き一斉に村浮きたちぬ      新井 紀夫

【一口鑑賞】文子さんの句。犬との散歩は楽しい。犬と犬、人と犬、人と人。それぞれにさまざまな出会いがある。そんな様子を日頃からよく観察している作者。折句として詠まれたが、焦点が犬に合っている。「うべの花」は郁子(むべ)の花の別称。アケビ科の蔓性植物で晩春の頃、葉の間に白みがかった淡い紫の小さな花が咲く。紀夫さんの句。杏は3〜4月に白または薄紅、紅の花を咲かせる。この句は一読して、杏の花がけむり立つように咲き誇る山里の景が浮かんでくる。折句とは思えない自然な詠みぶり。(潔)

朧夜の言葉はいらぬ二人かな     飯田 誠子
あと一首に息ひそめ合ふ歌がるた   中川 照子
跡継ぎの居る幸せや梅盛る      安住 正子
蟻穴を出でて何処へ裏参道      中島 節子
アーモンド色に日暮れて鶯菜     伊藤  径
連れ添うて歩きだしさう吉野雛    向田 紀子
綾とりの糸の思ひ出うららけし    堤 やすこ
厨から飛びだす猫や風生忌      山本  潔
春の夢ちいとあの世にゐたのかも   松本ゆうき
また友の旅立ち春の寒さかな     沢渡  梢
根つこより樹々の目覚むる雨水かな  新井 洋子
抱きし児の遠き目差し春の雲     斎田 文子
自分史を辞令に辿る目借時      新井 紀夫
淡雪や眠れる子犬売れ残り      関山 雄一
春宵の唐橋に聴く鐘の声       岡戸 林風

(清記順)
※次回(3月23日)の兼題はテーマ「道」

艸句会報:若草(令和6年2月10日)

若草句会(俳句文学館)
兼題「天気(テーマ)」 席題「目」

印象句
天気図にたをやかな尾根春きざす   市原 久義
犬ふぐり小さな見栄と誇り持ち    松本ゆうき

【一口鑑賞】久義さんの句。兼題のテーマ「天気」から発想して「天気図」を凝視したのだろう。西高東低の冬型の気圧配置が緩むと、シベリア方面からの移動性高気圧が徐々に勢力を増してくる。この句は、天気図の等圧線のなかに「たをやかな(気圧の)尾根」を見てとったのだ。春はまさにそこからやってくる。着眼点が素晴らしい。ゆうきさんの句。「犬ふぐり」は春、先がけて地表を覆う。ユニークな名称だが、メルヘン的な想像を誘う花でもある。掲句は、この季語によって辛うじて俳句に踏みとどまっているのではないか。(潔)

老いてなほ仲むつまじき二輪草    片岡このみ
暁闇の春雪すでに靴の跡       安住 正子
寒夕焼明日も平和な一日なれ     市原 久義
句作帳閉ぢてまどろむ春の宵     飯田 誠子
カーテンを開けて雪見の夕餉かな   沢渡  梢
ネーブルの臍のあたりの余寒かな   松本ゆうき
休眠の目醒む球根四温かな      霜田美智子
寒の水ごくりごつくん立山(たち)拝す 吉﨑 陽子
父さんのちちんぷいぷい山笑ふ    新井 洋子
逍遥の径や目刺焼く匂ひ       岡戸 林風
鳥籠のカナリア逝きし春日影     新井 紀夫
春立つやユニセフよりの感謝状    石田 政江
上がり目も下がり目もゐてうかれ猫  山本  潔

※次回(3月9日)の兼題「片」

艸句会報:連雀(令和6年2月7日)

連雀句会(三鷹駅前コミュニティセンター)
兼題「上・下」

印象句
春めくや鳥入れ替はる楠大樹     中島 節子
早春や娘と開くファッション誌    春川 園子

【一口鑑賞】節子さんの句。春の初めを示す季語には「早春」「春浅し」などもあり使い分けに迷うが、「春めく」は寒気がやわらいで暖かくなった感じを言う。副題に「春動く」「春きざす」がある。この句は、鳥が「入れ替はる」という把握が巧み。寒禽に替わって、繁殖準備に入る野鳥たちの明るい声が楠大樹から聞こえてくる。園子さんの句。まだ寒い時期だが、心待ちにしていた春がやってきた。外出はままならなくても、ファッション誌のカラフルな春の装いの写真が目を楽しませてくれる。娘さんとの心温まる早春のひととき。(潔)

城下町偲ぶ町の名下萌ゆる      向田 紀子
 追悼 進藤龍子様
またの日の願ひ叶はず冬菫      中島 節子
湧水の早春の音奏でをり       矢野くにこ
雪の道慣れて歩幅の定まりぬ     飯田 誠子
鬼やらひ人の声せぬ漁師町      松本ゆうき
風音のゆるみ冬芽のふくらみぬ    束田 央枝

 進藤龍子さんを悼み
料峭や浮上彫の白き龍        山本  潔
春寒やまだ行動の広がらず      春川 園子
如月の朝日木立に跳ね返る      坪井 信子

(清記順)
※次回(3月6日)の兼題「野」

艸句会報:船橋(令和6年2月3日)

船橋句会(船橋市中央公民館)
兼題「明」、ミニ吟行「中山法華経寺」

印象句
切手シート一枚当たる四温かな    川原 美春
一人とて明日を信じ福は内      飯塚 とよ

【一口鑑賞】美春さんの句。年賀状を出す枚数が年々減っており、自ずと届く枚数も少なくなった。1月も終わり近くになってお年玉付き年賀はがきの当選番号を確認した作者。期待はしていなかったのだろうが、3等の切手シートが1枚だけ当たっており、微笑ましい気分になったのだ。「四温かな」に気持ちが表れている。とよさんの句。若い頃の苦労を乗り越えて、今は離れて暮らす息子さんたちの幸せや、世界の平和を常に願っている作者。この日は節分。心のなかで「福は内」と唱えながら書きとめた一句。(潔)

和菓子屋の貼紙に春来たりけり    隣   安
冒険のやうな余生や月朧       川原 美春
赤い実をのせて明るき春氷      山本  潔
梅東風や白ブラウスの貝釦      新井 洋子
房総の菜の花畑岬まで        三宅のり子
荒行や木鉦叩く春の声        平野 廸彦
追儺式待つ境内のあんず飴      沢渡  梢
寒行の明けの近づく行者粥      岡戸 林風
頼られて頼る明け暮れ室の花     岡崎由美子
春暁の安房を駆けゆく貨車の列    小杉 邦男
節分会紅白幕の子供席        新井 紀夫
海老川の春満月の水明り       並木 幸子
ふところに手紙かくして日向ぼこ   飯塚 とよ

(清記順)
※次回(3月2日)の兼題「走」。句会場は船橋市勤労市民センター

艸句会報:かつしか(令和6年1月28日)

かつしか句会(亀有地区センター)
兼題「飾」

印象句
去年今年朱肉浸みたる黄楊の印    霜田美智子
離れ住む子ら来て過ごす三が日    千葉 静江

【一口鑑賞】美智子さんの句。大晦日の夜半が過ぎると、新年を迎えて元旦になる。去年を回顧し、今年への思いを抱くのが「去年今年」。掲句は、黄楊の印の朱肉の浸みを眺めながら、高浜虚子の「貫く棒」の句に思いを寄せているのかもしれない。それとは対照的な判子という“短い棒”を提示したところにユーモアのセンスが感じられる。静江さんの句。淡々と詠んでいるが、「三が日」という季語の使い方が効果的だ。ふだんは独り暮らしでも、正月ならではの家族との交流のひとときに元気づけられたのだろう。(潔)

大寒や芳書の文字黒々と       近藤 文子
冬座敷父の選びし床飾り       佐治 彰子
昨日まで賑やかなりし炬燵部屋    伊藤 けい
水洟や味噌汁熱き朝ごはん      五十嵐愛子
寒桜日課五千歩続きをり       笛木千恵子
辻店の鳶職けふは飾売り       小野寺 翠
梅の香の余韻ありけり闇の中     小森 貞子
葛飾の魅力の一句初句会       西川 芳子
ともかくも家族みんなの初写真    西村 文華
雲水にかうべを垂れて風邪封じ    千葉 静江
三寒を籠もり四温の旅支度      片岡このみ
乳匂ふ子も出す両手お年玉      霜田美智子
電飾の色を路面に冬の雨       山本  潔
冬旱空井戸に声落しけり       新井 洋子
裸木の続く並木のバス通り      三尾 宣子
葛飾の都市化の路地の花大根     新井 紀夫

(清記順)
※次回(2月25日)の兼題「森」

艸句会報:東陽(令和6年1月27日)

東陽句会(江東区産業会館)
兼題 折句「はおと」
例句 春を待つおなじところに鳥けもの 桂信子

印象句
人参に馬の頷く二度三度       新井 洋子
寒日和東京タワーの赤親し      堤 やすこ

【一口鑑賞】洋子さんの句。「人参」には江戸末期に中国を経て渡来した東洋系と明治以降に入ってきた西洋系がある。冬場に旬を迎えるのは東洋系で、歳時記でも冬の季語になっている。この句は、牧場で餌をやるシーンだろうか。馬も旬の味わいを知っているかのような仕草が目に浮かぶ。やすこさんの句。東京タワーは、高さこそスカイツリーに抜かれたものの、東京のランドマークとしての存在感は今も変わらない。冬の抜けるような青空に向かって聳え立つ赤と白に塗られた東京タワーへの親しみが込められている。(潔)

机上のみ照らす寒燈鬼房忌      岡崎由美子
白鳥の音なく翔つを遠くして     岡戸 林風
寒の川一枚板の水鏡         斎田 文子
機織の音とだえたる年行く夜     中川 照子
バス停に足踏みの人冬深し      向田 紀子
濁り湯のいよいよ白し母亡き冬    伊藤  径
はらからと女正月遠き富士      中島 節子
日脚伸ぶ結構当たる腹時計      新井 紀夫
耳付の壺に届くや霜の声       新井 洋子
箱根駅伝応援の人十重二十重     堤 やすこ
底抜けの空や鳶の初飛翔       安住 正子
寒鯉の寄り来る橋の荒筵       飯田 誠子
箸を置く音つつましく年の酒     山本  潔

(清記順)
※次回(2月24日)の兼題は折句「あいう」
 例句 青空のいつみえそめし梅見かな 久保田万太郎

艸句会報:すみだ(令和6年1月24日)

すみだ句会(すみだ産業会館)
兼題「光」

印象句
鷽替や嘘のやうなる鷽のこゑ     松本ゆうき
神宮の杜の狸とにらめつこ      貝塚 光子

【一口鑑賞】ゆうきさんの句。「鷽替」は福岡県の太宰府天満宮で1月7日夜に催される神事で、新年の季語。東京では亀戸天神で24、25日に行われる。木彫りの小さな「鷽」を交換することで、前年の悪い出来事を「嘘」に変えてしまおうというもの。句会前に亀戸天神へお詣りしてきた作者。鷽の鳴き声が「ウソ」と聞こえることを踏まえて軽快に詠んだ。光子さんの句。「狸」が冬の季語。作者は、明治神宮の森で実際に狸に遭遇したことがあるそうだ。じっと見つめ合っている狸と人間の姿と軽い緊張感が伝わってくる。(潔)

音たてて汲めば若水光りけり     内藤和香子
大寒や沙緻師の句碑に想い馳せ    長澤 充子
七草粥湯気の向かうの母の唄     大浦 弘子
久女忌のツンと匂へる除光液     山本  潔
濠の水光れば春も遠からじ      岡戸 林風
春の海漕ぎ出す勇気私にも      根本恵美子
聞き上手のロボット欲しき老の春   福岡 弘子
平積みの古書に日差しや年新た    江澤 晶子
蛍光灯ひとつの駅舎雪催ひ      岡崎由美子
御神籤で覗く余生や初詣       髙橋 郁子

(清記順)
※次回(2月28日)の兼題「二月」
プロフィール

艸俳句会

Author:艸俳句会
艸俳句会のWeb版句会報。『艸』(季刊誌)は2020年1月創刊。
「艸」は「草」の本字で、草冠の原形です。二本の草が並んで生えている様を示しており、草本植物の総称でもあります。俳句を愛する人には親しみやすい響きを持った言葉です。

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