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艸句会報:すみだ(令和5年1月25日)

すみだ句会(すみだ産業会館)
兼題「寒」一切

印象句
寒禽の声や朝刊社説欄        岡崎由美子
【一口鑑賞】「寒禽」は渡り鳥や留鳥などの別なく、冬に見かける鳥のこと。木の実や虫が少なくなるため、食物を求めて人家の近くにやってくる。いつも新聞を丹念にチェックしている作者。その朝は、気になる社説を読んでいると、鳥の声がいつになく賑やかに聞こえたのだろう。凍えそうな寒さのなかで飢えをしのいでいる鳥たちも作者にとっては愛しい存在だ。この句は、寒禽と新聞の社説という意外な組み合わせによって多彩な読みを促している。(潔)

寒風を背にしゆこしゆこ空気入れ   岡崎由美子
鷽替へや両国に待つ若の里      松本ゆうき
朝靄の鋭き声の寒稽古        江澤 晶子

 六本木
スペイン坂のぼり来る人息白し    髙橋 郁子
拝殿の片方にふふむ寒紅梅      貝塚 光子
大寒のカラメル色のパンケーキ    山本  潔
独り身の俳三昧や寒明忌       岡戸 林風
運勢の本をひもとく三日かな     福岡 弘子
英語もて客引く車夫や寒日和     長澤 充子
回廊の一歩に軋む音寒し       内藤和香子
山峡の宿に満天冬の星        大浦 弘子

(清記順)

艸句会報:かつしか(令和5年1月22日)

かつしか句会(亀有地区センター)
兼題「黄」

印象句
藪入や休暇を取れといふ時代     新井 紀夫
【一口鑑賞】「藪入(やぶいり)」は正月十六日に奉公人に休みを与え、親元に帰したり、自由に外出させたりすること。戦前までは普通の習慣だったが、今や忘れられかけた季語だろう。「働き方改革」では休みを与えなかったり、取らなかったりすれば罰せられる。かつての風習に思いを馳せる一方で、時代の流れを冷静に見ている作者。「休暇を取れといふ時代」には、社会環境の変化の大きさに戸惑う気持ちがにじみ出ている。(潔)

石蕗の花姉の形見の黄八丈      伊藤 けい
半熟の黄身のまろやか寒卵      西川 芳子
菜の花の苦味迷はす辛子の黄     西村 文華
初夢や目覚めと共に忘れけり     三尾 宣子
新しみ目指し句作を喜寿の春     佐治 彰子
紅白の膾に柚子の黄を添へて     小野寺 翠
笑み交はす吉日の艸初句会      霜田美智子
蠟梅や登る参道黄檗宗        五十嵐愛子
梳初は母の形見の黄楊の櫛      笛木千恵子
春近しミス水仙の黄八丈       新井 紀夫
薄氷を戸惑いがちに割る子かな    近藤 文子
曳かれゆく鯨の骸寒夕焼       山本  潔
初暦赤で書き込む通院日       片岡このみ
どか雪の朝碧眼のペルシア猫     新井 洋子

(清記順)

艸句会報:若草(令和5年1月14日)

若草句会(ギャラリー バルコ)
兼題「亀・有」

印象句
ラメ入りの亀甲のへり畳替      霜田美智子
【一口鑑賞】「ラメ」の語源はフランス語。箔を施して金や銀の光沢を持たせた糸をラメ糸と呼ぶ。この句は、兼題の文字からラメ糸を折り込んだ亀甲模様の畳の縁(へり)を発想して詠まれた。「畳替」は仲冬の季語。近年は和室のある家も減っているが、正月を前に畳の表を替えれば気持ちも改まるというものだ。キラキラ光る畳の縁が趣のある冬座敷をも連想させる。〈亀のえさ有りますの札春近し〉も同じ作者の句。題詠は発想力が物を言う。(潔)

庭枯るる一枝一枝のよく透けて    石田 政江
モビールのじつとしてゐる寒の入   飯田 誠子
健やかに二人ゐてこそ老の春     新井 洋子
橋二つ越えてバルコや初句会     松本ゆうき
瀬戸内の兎の島へ旅心        岡戸 林風
「若草」へ身の引きしまる初句会   片岡このみ
冬北斗夢追ひ人のビスケット     吉﨑 陽子
寒紅差す有り難うと逝けたなら    沢渡  梢
吾がための一と日セーター新調す   安住 正子
亀甲の風呂敷包み年始客       市原 久義

 針谷栄子さんを悼み
茶の花や一輪ことに凛として     山本  潔
亀有はむかし亀無亀鳴けり      新井 紀夫
亀のえさ有りますの札春近し     霜田美智子

(清記順)

艸句会報:連雀(令和5年1月11日)

連雀句会(三鷹駅前コミュニティセンター)
兼題「歌(唄)」

印象句
虎落笛戦火を厭ふ歌のごと      松本ゆうき
【一口鑑賞】「虎落笛(もがりぶえ)」は冬の寒い日に、電柱や垣根、物干し竿などに強風が当たって発するヒューヒューという笛のような音。「もがる」には逆らう、反抗する、駄々をこねるなどの意味がある。掲句は、年が明けても一向に収まりそうになく、むしろ戦闘が激化しているロシアとウクライナの戦争を案じながら、兼題「歌」の文字をさらりと詠み込んだ。中七の「戦火を厭ふ」は誰しも共感する思いだろう。(潔)

行く年の第九は我の応援歌      横山 靖子
ごまめ噛む噛む生きざまを噛みしめて 束田 央枝
一行のメモ書きのやう初日記     中島 節子
除夜の鐘聴くや卒寿の耳痒き     坪井 信子
松過ぎの蒸気吐きだす洗濯屋     向田 紀子
初みくじ読むやたちまち旅心     山本  潔
若人の造語飛び交ふ初詣       飯田 誠子
みちのくやシャンソンもよし炬燵舟  松成 英子
何もないことが楽しき明けの春    松本ゆうき

(清記順)

艸句会報:船橋(令和5年1月7日)

船橋句会(船橋市中央公民館)
兼題「新」、ミニ吟行「船橋大神宮」

印象句
松取つて一束の縄残りけり      隣   安
【一口鑑賞】2023年の「艸」は千葉県船橋市の意富比(おおひ)神社(通称、船橋大神宮)のミニ吟行でスタートした。1900年以上の歴史を持つ神社。この日も初詣の参拝客で賑わう一方、元旦から飾っていた門松を取る「松納」が行われていた。その様子を見ていたゲスト参加の作者。竹の柱に松をくくりつけていた縄が外され土に置かれている場面を切り取った。単純写生のようでありながら、「一束の縄」に正月が過ぎていくことへの感慨が表れている。(潔)

人日の路地に朝湯の匂ひして     岡崎由美子
新宿のネオン浴びたる寒鴉      沢渡  梢
レリーフの手形に皺や寒に入る    隣   安
年の瀬の姉はいよいよ腰曲げて    三宅のり子
初句会等身大の我があり       小杉 邦男
使い捨て懐炉を腰に浦の町      岡戸 林風
寒柝や最長老の家の前        新井 紀夫
松おさめ出店のあるじ大あくび    飯塚 とよ
新日記まだ白きまま夢書けず     並木 幸子
新玉の光を受けて屠蘇の味      平野 廸彦
新年の新聞厚く睦まじく       川原 美春
たひらかに宮の土俵の淑気かな    山本  潔

(清記順)

艸句会報:かつしか(令和4年12月25日)

かつしか句会(亀有学び交流館)
兼題「五」

印象句
ボーナスや五黄の寅の娘来る     西村 文華
【一口鑑賞】「五黄(ごおう)の寅」は九星気学と干支の占いにおいて、強い運勢を持つ年に生まれた人を指す。近年では1950年(昭和25)、1986年(昭和61)、そして2022年(令和4)が該当する。この句は「ボーナスを持って五黄の寅の娘が遊びに来た」と解釈した人が多かったが、実はそうではなく、最近4人目にして初めて女のお孫さんが誕生した喜びを詠んだという。兼題「五」から「五黄の寅」への発想がユニーク。おめでとうございます。(潔)

小流れに攩(たも)持つ子ども小春空 伊藤 けい
煌めきだす聖夜の湾や展望台     五十嵐愛子
心充つ大根一本使ひ切り       新井 洋子
伝説の北信五山眠りけり       霜田美智子
着ぶくれて有馬記念の五点買ひ    山本  潔
あと五年生きると見込み日記買ふ   新井 紀夫
するめ焼くストーブ列車五能線    片岡このみ
冬の月三百六十五歩の跡照らす    近藤 文子
下仁田の葱買ふための遠まはり    小野寺 翠
病室の窓を横切る枯葉かな      西川 芳子
何時からか赤出汁仕立て納豆汁    西村 文華
玲瓏たる冬満月やひとり鍋      佐治 彰子
雪時雨旅の終りの石舞台       高橋美智子
薬飲む水から白湯に冬の朝      三尾 宣子

(清記順)

艸句会報:東陽(令和4年12月24日)

東陽句会(江東区産業会館)
兼題「視」

印象句
おしやべりに楽しく疲れシクラメン  安住 正子
【一口鑑賞】「シクラメン」は地中海東北部原産。もともとは春咲き、秋咲きのある野生種で、16世紀末にヨーロッパへ渡り、多くの園芸品種が生まれた。歳時記では春の季語だが、近年はクリスマスや正月に楽しまれるようになっており、冬に詠まれても違和感はない。歳末の忙しい時期におしゃべりに夢中になっていた作者。楽しい会話に心地良い疲れを感じながら目にした深紅のシクラメンに癒やされたのだろう。実感が伝わってくる。(潔)

着ぶくれて新宿駅の迷路かな     向田 紀子
野良猫に会ひにゆく道落葉道     岡崎由美子
毛布被つてゲームの夫の反抗期    飯田 誠子
聖樹綺羅いくさの闇は如何許り    堤 やすこ
呆け防止の新書に疲れ小春かな    中島 節子
水仙や墓地売り出しの赤幟      斎田 文子
冬怒濤視界の果ての七ツ島      安住 正子
衰へし視力師走のATM        岡戸 林風
少年の視線定まる寒稽古       山本  潔
かんむりは折紙の星クリスマス    中川 照子
水晶玉に見る過去未来暖炉燃ゆ    新井 洋子
あの世とはこんなものかな日向ぼこ  松本ゆうき
煤逃げや独演会の「芝浜」を     新井 紀夫

(清記順)

艸句会報:すみだ(令和4年12月21日)

すみだ句会(すみだ産業会館)
兼題「暖房器具」一切

印象句
独り居の洋間にでんと置炬燵     福岡 弘子
【一口鑑賞】部屋の中に炉を切って櫓を組む「切炬燵」に対し、「置炬燵」は持ち運びができるという点で画期的な発明だっただろう。江戸中期には浮世絵にも描かれている。現代の電気置炬燵は昭和の高度経済成長期から一気に普及したようだ。掲句は、この冬の作者の暮らしをそのまま素直に詠んだという。「洋間にでんと」とはユーモラスで力強い一方、独り暮らしになった寂しさの裏返しのようにも感じられる。ほんのりとした味わいのある一句。(潔)

故郷は遠のくばかり雪積る      工藤 綾子
電気毛布の虜となりて予後の夫    貝塚 光子
ストリートピアノ奏づる聖歌かな   福岡 弘子
手焙や当ての鯣をあぶりつつ     山本  潔
裏高尾足裏にやさし落葉径      髙橋 郁子
年の瀬やひよいと出てくる探し物   内藤和香子
暖房のスイッチ入れて二度寝かな   長澤 充子
文机に母の似顔絵床暖房       大浦 弘子
何かまだ為残してをり師走かな    松本ゆうき
セーターを買うて一人の午後のカフェ 岡崎由美子

(清記順)

艸句会報:若草(令和4年12月10日)

若草句会(ギャラリー バルコ)
兼題「大・久・保」

印象句
寒紅や豆大福の上新粉        沢渡  梢
【一口鑑賞】「寒紅」は文字通り寒中に作られた口紅。品質が良く、化粧品というだけでなく、口から入る病や虫を防ぐ毒消しとしても珍重されたようだ。この句は、上五の「寒紅や」で切れた後、直接的には何の関係もない「豆大福の上新粉」が登場する。いわゆる「二句一章」という形で俳句の骨法の一つ。冬の寒さのなか、鮮やかな紅と大福の白さの意外な取り合わせによって、ハイセンスな作者の日常が垣間見えるようで面白い。(潔)

旧かなの亡母のレシピの煮大根    霜田美智子
干大根立山(やま)風海風つかみをり 吉﨑 陽子
大らかに生きて見上ぐる冬銀河    岡戸 林風
汁までもすすつてしまう大根焚    飯田 誠子
大久保も新大久保も冬めける     山本  潔
大隠に遠き起き臥し実千両      松本ゆうき
神宮のたなごころにて七五三祝(しめいはひ)石田 政江
泥染の大島紬句座納む        沢渡  梢
河豚の鰭干して開店準備中      新井 洋子
暇無き介護勤労感謝の日       市原 久義
極月や干支の張子のうす埃      安住 正子
宿坊の朝の大玉寒卵         新井 紀夫

(清記順)

艸句会報:連雀(令和4年12月7日)

連雀句会(三鷹駅前コミュニティセンター)
兼題「気」

印象句
冬麗の富士全容やアロエ咲く     向田 紀子
【一口鑑賞】アロエは南アフリカ原産の多肉植物。世界に400種以上の原種があるという。観賞用や食用、薬用に栽培され、日本でも11〜2月頃に一般家庭の玄関先などに赤やオレンジの花をつけているのを見かける。近年は冬の季語として歳時記に載っている。この句は季重なりだが、冬のよく晴れた日の美しい富士山を遠くから一望する感動を、足元に咲いたアロエの花が盛り立てる。作者は西東京市の眺めのいいマンションに暮らしている。(潔)

蕎麦切りの小気味よろしき町師走   向田 紀子
始祖鳥の夢追ひかける厚毛布     坪井 信子
湯気立てて老老介護風邪心地     飯田 誠子
川沿いに芝居の幟冬夕焼       松成 英子
通院と入院ばかり古暦        矢野くにこ
白菜切る音夕闇を連れてくる     束田 央枝
革ジャンや気持十歳若くなり     松本ゆうき
素つ気ない風情の猫や年の暮     山本  潔
くじ引きの三等ファイル街師走    中島 節子
胃カメラの麻酔の醒めて冬紅葉    横山 靖子

(清記順)
プロフィール

艸俳句会

Author:艸俳句会
艸俳句会のWeb版句会報。『艸』(季刊誌)は2020年1月創刊。
「艸」は「草」の本字で、草冠の原形です。二本の草が並んで生えている様を示しており、草本植物の総称でもあります。俳句を愛する人には親しみやすい響きを持った言葉です。

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