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花暦:舘花集作家往来

  止まぬ話     浅野 照子

ソフトクリーム舐めて紳士は少年に
駅弁にも止まぬ話や夏帽子
炎塵やゲームのやうに人撃たれ
線香花火ぽとりと黙の世を誘ふ
詩ごころを星に委ねし賢治の忌


  島の能舞台    池田まさを

父の日の母真つ先に杯をあげ
海暮れて火蛾舞ふ島の能舞台
飾られて馬の放尿秋まつり
白雲の流れに乗りて秋の蝶
大佐渡も小佐渡も墨絵天の川


  千畳の岩     野村えつ子

安らぎを葉の裏ときめ蝸牛
一村の田植すみたる遠嶺かな
崩れんとして立ち直る雲の峰
岩山をひと呑みにして夏の霧
千畳の岩走り来し水の澄み


(「花暦」2016年上期号より)

花暦:舘花集作家往来

  余生も楽し    加藤弥子

句座ありて余生も楽し初桜
ひとりにも些事のあれこれ夏燕
金魚ひらひら病む足腰を励ませば
八月の海ぢりぢりと夕日のむ
髪切れば強くなれさう鵙日和



  光り合ふ     進藤龍子

師亡きあとの吾の怠慢盆の月
蘆の芽や沼のさざ波光り合ふ
春昼の沼に影置き鷺佇てり
春の燈や静かに混める書道展
共に昭和を生き来し象よ夏の月


  ゆるやかに    根本莫生  

  沙緻師を偲ぶ
「精養軒でお茶」の叶はず青葉風
生ぶ皮を脱がずに丈余今年竹
ゆるやかによぎりし蛇の長さかな
水甕は水底を見せ旱梅雨
その昔鮴突きし川暴れ水

(「花暦」2016年上期号より)

花暦句会報:東陽(平成28年12月24日)

東陽(江東区産業会館)
席題「鍋」「水鳥」

高点3句
水鳥の翔たんと散らす日の雫    安住 正子
河豚鍋や話題にのぼる安楽死    堤  靖子
一本の鉤に鮟鱇従へり       野村えつ子

日の恵み産毛のつつむ冬木の芽   貝塚 光子
スカイツリー聖樹と仰ぎ納め句座  岡戸 良一
綿虫や群を離るるものは消ゆ    野村えつ子
枝打ちや半被の紋の見え隠れ    浅野 照子
てつちりを仕切る息子の頼もしく  長澤 充子
遠富士の黒々とあり冬夕焼     安住 正子
若者闊歩表参道欅枯る       堤  靖子
風紋の砂丘のしじま冬銀河     新井 洋子
火事後に三百年の仕込み樽     市原 久義

                      (清記順)

花暦句会報:すみだ(平成28年12月23日)

すみだ句会(墨田産業会館)

高点1句
点滴の音なきリズム聖夜かな   岡田須賀子

残照を闇に繋いで夕焚火     市原 久義
幹太き裸木並ぶ男子校      加藤 弥子
余さずに日差しを抱く蜜柑山   高橋 郁子
漱石忌アンドロイドの生まれけり 貝塚 光子
笹鳴きや日当りのよき父母の墓  工藤 綾子
冬至湯や十七文字の独り言    岡戸 良一
トナカイの萌木細工や聖夜来る  長澤 充子
出不精となり葉籠りの寒椿    岡田須賀子
うす暗き質屋の明かり街師走   福岡 弘子
旧道は林中に入る落葉坂     桑原さかえ

                     (清記順)

花暦句会報:若草(平成28年12月10日)

若草句会(俳句文学館)
兼題「枯一切」/席題「株」「骨」

高点3句
蓮の骨沼は入り日を吸ひつくす   加藤 弥子
残照の雲流れゆく枯野かな     岡戸 良一
枯木星原野真白く展けたり     新井 洋子

新しき切株に添ふ冬の草      岡戸 良一
切株の段だら子等の冬帽子     森永 則子
来し方に戦ありけり日記買ふ    加藤 弥子
十二月八日飛行機雲真直      市原 久義
ぎつくり腰とは極月の落し穴    坪井 信子
高騰の株価談義やおでん酒     針谷 栄子
底冷やディノザウルスの肋骨    新井 洋子
地の温み拾うて翔べる冬の蝶    矢野くにこ
                  (清記順)

花暦句会報:連雀(平成28年12月7日)

連雀句会(三鷹駅前コミュニティセンター)

高点2句
冬薔薇や復刊号の師の写真    春川 園子
海鳴りや焦土の妻に月寒し    池田まさを

実家焼けて妻悄然と冬の月    池田まさを
黄落を総身に浴び至福なる    根本 莫生
語部の顔を照らして榾火燃ゆ   田崎 悦子
芙蓉枯れひかりの失せし銀食器  加藤 弥子
風呂吹や祇園も裏の番菜屋    松成 英子
冬芽いま未来に備へ吾もまた   春川 園子
初雪や傘にかそけき音のせて   中島 節子
冬鵙の鋭き声吾をはげましぬ   進藤 龍子
砂漠に雪天地一転身じろがず   山崎千代子
ほの赤き衿元重ね冬木の芽    矢野くにこ
諸鳥の啄む落葉溜りかな     向田 紀子
枯菊の名残りの香り焚かれけり  坪井 信子
紅衣纏ふがごとき紅葉道     横山 靖子
                 (清記順)

 ※3句目=実家(さと)

「花暦作家近詠」

   雑 詠    相澤秋生

街灯の途絶えて石蕗の花明り
開墾者の夢さまよへる真葛原
林檎など丸噛りせし若き日よ
見送りに出て耳澄ます残る虫
夕波や向きばらばらの鴨の陣
プロフィール

艸俳句会

Author:艸俳句会
艸俳句会のWeb版句会報。『艸』(季刊誌)は2020年1月創刊。
「艸」は「草」の本字で、草冠の原形です。二本の草が並んで生えている様を示しており、草本植物の総称でもあります。俳句を愛する人には親しみやすい響きを持った言葉です。

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