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花暦作家近詠

  春の河    相澤 秋生

枝揺るる乾びしままの鵙の贄
登校児蹴り崩しけり霜柱
冬夜汽車娘の住む町を今し過ぐ
冬耕の田の荒塊のまま光る
水切りの礫発止と春の河

(2017年2月28日投句)

花暦句会報:東陽(平成29年2月25日)

東陽句会(江東区産業会館)
席題「梅」「猫の恋」

高点4句
和船ゆく下町運河水の春      岡戸 良一
古草や吹きつさらしの出土跡    新井 洋子
デュエットは一オクターブ猫の恋  市原 久義
老梅の切りつめられて咲きにけり  野村えつ子

発掘の軍手に光る春の泥      浅野 照子
写経会の堂に墨の香梅の花     長澤 充子
のどけしや歯科医の腹の虫の鳴り  新井 洋子
ぎこちなき琴も宜しき雛の間    市原 久義
白梅やふはりと交はす巫女の袖   安住 正子
春光の道を歩きて帰りけり     白崎千恵子
裏店に仕入荷の嵩水温む      堤  靖子
水は照り風は弾みて猫柳      野村えつ子
ものの芽や十年越しの通院路    岡戸 良一
白梅の夜雨に匂ふ路地灯り     貝塚 光子
真白といふ濃さうすれゆく枝垂梅  飯田 誠子

                      (清記順)

花暦句会報:すみだ(平成29年2月22日)

すみだ句会(墨田産業会館)

高点3句
竜天に登る一夜か風唸る      貝塚 光子
冴返る八方睨みの天井画      岡戸 良一
春めくや園の猿にも母子手帳    福岡 弘子

店先の置き看板や春一番      斎田 文子
早春の風やさざ波飛沫して     大野ひろし
石蔵の小窓明りに古雛       市原 久義
磯岩の縞目濃くせり春時雨     岡戸 良一
甘夏をジャムに仕立てて師を偲ぶ  長澤 充子
夫よりも大きな声で鬼やらひ    福岡 弘子
埋め込まれしスターの手形春うらら 岡田須賀子
江戸よりの暖簾巻き上げ春一番   高橋 郁子
天空に捕食の和毛寒鴉       工藤 綾子
潮の香や光を放つ花菜畑      貝塚 光子
激つ瀬の早さ二ン月ゆく早さ    加藤 弥子
                      (清記順)

花暦句会報:若草(平成29年2月11日)

若草句会(俳句文学館) 
兼題「薄氷」/席題「指」

高点3句
回想のひとこま欠ける薄氷    矢野くにこ
アネモネを鏡に増やし美容院   加藤 弥子
掛け襟は白と決めをり針供養   針谷 栄子

風呂敷の男結びや犬ふぐり    矢野くにこ
薄氷や波長乱れし心電図     飯田 誠子
冴え返る切株になほ樹の力    加藤 弥子
裏窓に花鉢一つ納税期      森永 則子
薄氷や朝日に光る猫の髭     岡崎由美子
一刻を春三日月と夕星と     市原 久義
目が笑ふこけしの素顔春の雪   新井 洋子
薄氷の和毛一片捕へをり     針谷 栄子
春燈に透けるセロテープの指紋  坪井 信子

                     (清記順)

花暦句会報:風の会(平成29年2月4日)

風の会(三鷹コミュニティセンター)

高点2句
巣立鳥石に無言のこころあり   坪井 信子
たんぽぽや忘じて遠き昭和の日  坪井 信子

春風に吹かれ路傍の石と人    新井 洋子
マティス長官の笑顔や犬ふぐり  大野ひろし
上水に斜めの日差し春立てり   貝塚 光子
春装の胸に琥珀といふ化石    坪井 信子
昇降機の鏡に正す春衣      森永 則子
福豆にまた煩悩の手が伸びる   市原 久義
豆打や面をはみだす祖父の髭   岡崎由美子
洋館の窓に春光惜しみなく    長澤 充子
満天星の芽のつんつんと風の道  岡戸 良一
老幹を叩き芽吹きをうながせり  加藤 弥子

花暦句会報:連雀(平成29年2月1日)

連雀句会(三鷹コミュニティセンター)
席題「春ショール」

高点7句
玉子酒すする二十歳の喉ぼとけ     坪井 信子
白梅や回(めぐ)り来し忌の数を生き  向田 紀子
真夜に覚め歩けぬ不安春愁ひ      進藤 龍子
寒晴や振り向けば鳴る耳飾り      中島 節子
寒満月日々を紡ぎて八十路なる     横山 靖子
プライドも時には重くちやんちやんこ  飯田 誠子
万葉仮名の筆のかすれも春めけり    束田 央枝

教会の軋む木椅子や花八つ手      飯田 誠子
春ショール亡母の一語を温めをり    矢野くにこ
「立つ・座る」を百回こなし寒明くる  進藤 龍子
春ショール抽斗に彩あふれさす     中島 節子
涸るる河細き流れの音絶えず      田村 君枝
ひとり居の椅子ずらす音寒戻り     春川 園子
はだら雪瀬川に映る宿灯        田崎 悦子
盆梅の紅(こう)の開きていよよ喜寿  向田 紀子
一人居に日向ぼつこの玉座あり     横山 靖子
山茶花や若大将も八十路とて      根本 莫生
能楽師の声朗々と寒明くる       束田 央枝
梅が香やほどよく重き志野茶碗     加藤 弥子
身のうちの何か失せゆく湯ざめかな   坪井 信子

                        (清記順)

花暦作家近詠

  枯木山    相澤 秋生

ひとところ杉青々と枯木山
良寛さ瞽女さも往きし雁木道
石蕗の花会はずなりたるひとをふと
恋も知らず逝きし子の忌や冬銀河
月光を纏ひて蒼し雪女郎

(2017年2月1日投句)
プロフィール

艸俳句会

Author:艸俳句会
艸俳句会のWeb版句会報。『艸』(季刊誌)は2020年1月創刊。
「艸」は「草」の本字で、草冠の原形です。二本の草が並んで生えている様を示しており、草本植物の総称でもあります。俳句を愛する人には親しみやすい響きを持った言葉です。

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