fc2ブログ

花暦句会報:すみだ(平成29年7月26日)

すみだ句会(すみだ産業会館)

高点1句 
目礼の距離を涼しと思ひけり      工藤 綾子

夕菅や稜線はるか暮れなづむ      岡田須賀子
木下闇鐘打つ僧のひざまづく      工藤 綾子
橋裏に残る戦禍や涼み船        福岡 弘子
雨激し焔立ちたる土用芽に       岡戸 良一
青葉谷見え隠れせる新幹線       桑原さかえ
蓮池の蕾あしたへ立ちあがる      長澤 充子
梅雨明けのそれがどうした風呂掃除   大野ひろし
豪雨来猛暑の大地さましけり      高橋 郁子
葉の波に飛天の如き合歓の花      市原 久義
眼前に雷神風神参上す         貝塚 光子

                        (清記順)

一口鑑賞梅雨明けのそれがどうした風呂掃除」…ひろしさんの句。気合を入れて風呂場の掃除をしているところ。居間のテレビから梅雨明けのニュースが聞こえてきたのだろう。思わず「それがどうした」とつぶやいた。かつては「梅雨明け」と聞けば、訳もなく喜びを感じたものだが、最近は違う。地球温暖化の影響のせいか、梅雨明け発表後に日本列島は不順な天候になることが多い。実際、今年も各地で大雨による被害が出ている。「それがどうした」は現代を生きる男の実感?それとも、えも言われぬ事情で風呂を洗うことになった作者の開き直り?一種の問題句ではあるが、個性的でユーモラスな一句。(潔)

花暦句会報:東陽(平成29年7月22日)

東陽句会(江東区産業会館)
席題「風鈴」「夏草」

高点3句
いつまでも夕日はなさぬ立葵  野村えつ子
暮れてより江戸風鈴の本調子  斎田 文子
氾濫の痕を繕ひ夏の草     市原 久義

風鈴の明珍火箸骨董店     飯田 誠子
革命といふ語の浪漫パリー祭  市原 久義
刈伏せし土手草匂ふ半夏生   斎田 文子
風鈴やとり残されてゐるごとし 堤  靖子
風にのり星となりたる遠花火  浅野 照子
浜茶屋の貝風鈴の鳴り止まず  岡戸 良一
踏ん張りの利かぬ齢や水馬   野村えつ子
糠床へ一本刺して初胡瓜    安住 正子
小さき掌を翳す夕焼竹とんぼ  長澤 充子
網棚の風梨熟睡の一家族    新井 洋子
蛍火や修羅の残り火腹の底   貝塚 光子

                    (清記順)

一口鑑賞暮れてより江戸風鈴の本調子」…文子さんの句。「江戸風鈴」が懐かしい。職人が長い竿を均等に回しながら吹き、空中でガラスを膨らませて造られる。いまもその技術は一部で受け継がれている。日中の暑さが収まり、夜風に揺れる江戸風鈴が「本調子」で鳴っているという。下町の風情が思い浮かぶ。さりげない詠みっぷりの中に、一日一日を大切に生きる作者の生活観が表れている。作者自身も元気だからこそ、風鈴は「本調子」なのである。(潔)

花暦句会報:若草(平成29年7月8日)

若草句会(俳句文学館)
兼題「土用」、席題「蛍」

高点3句
桐箱に眠る臍の緒はたた神     針谷 栄子
砂時計の天を地となす半夏かな   加藤 弥子
草深く点りて翔たず初蛍      加藤 弥子
         
万緑や山また山の山の奥      石田 政江
土用入熱き畳にひとり座す     廣田 健二
中空に螺旋描くや夏落葉      飯田 誠子
終活の空の茶箱や夕端居      岡戸 良一
浮いてこい浦島太郎桃太郎     加藤 弥子
水鶏鳴き地酒は甘き香を放つ    矢野くにこ
お隣は熊のプーさん水中花     坪井 信子
人気無き茶室水屋の白団扇     市原 久義
嵌め殺しの硝子の曇り羽蟻の夜   針谷 栄子
浜木綿やレースのやうな海の縁   新井 洋子
                      (清記順)

花暦句会報:連雀(平成29年7月5日)

連雀句会(三鷹駅前コミュニティセンター)
兼題「晩夏」

高点5句
晩夏かな塀越す風の遊び蔓     加藤 弥子
装ひの銀座晩夏の交差点      中島 節子
釣る力釣らるる力鮎の川      坪井 信子
 池田まさを氏を悼み二句
六月や野太き名告もう聞けぬ    中島 節子
夏潮やこよなく佐渡を愛し逝く   中島 節子

お朝事へ向かふ尼宮香涼し     向田 紀子
真夜に覚め水を一杯秋近し     根本 莫生
晩夏光色深めゆくダム湖かな    飯田 誠子
「転ぶなよ」と言はれ続けて夏深し 進藤 龍子
生涯をひとすぢ道や釣忍      田崎 悦子
さくらんぼ残業の娘に残し置く   春川 園子
樹々の青うち重なりて邸涼し    束田 央枝
陶枕の呉須で描かれし山河かな   松成 英子
青萩や雨雲風にほぐれそむ     加藤 弥子
一人てふ華やぎを得て合歓の花   横山 靖子
ホスピスの玻璃一面の梅雨夕焼   坪井 信子
はなやいだ心はいづこ薔薇の棘   矢野くにこ
睡蓮の明日へ蕾の立ちあがる    中島 節子

                      (清記順)

花暦句会報:風の会(平成29年7月1日)

風の会(荻窪吟行句会:太田黒公園、角川庭園・幻戯山房)
袋回し:「夏館」「黒」「香水」「草」

高点1句
刻止める昭和の灯夏館     坪井 信子
 
星祭多羅葉に浮く黒き文字   市原 久義
梅雨暗し楽譜を綴づる黒表紙  岡戸 良一
香水はシャネルか太田黒夫人  坪井 信子
角川邸香水の香にふり向けり  束田 央枝
路座仏の裾の湿りや草茂る   飯田 誠子
歩まねば草になるぞよ朝郭公  加藤 弥子
                    (清記順)

 小雨が降ったりやんだりの天気の中、6人が参加。両園とも狭いながらも風情ある庭園。
吟行を楽しんだ後、角川源義氏邸宅跡の幻戯山房で句会。(久義)
プロフィール

艸俳句会

Author:艸俳句会
艸俳句会のWeb版句会報。『艸』(季刊誌)は2020年1月創刊。
「艸」は「草」の本字で、草冠の原形です。二本の草が並んで生えている様を示しており、草本植物の総称でもあります。俳句を愛する人には親しみやすい響きを持った言葉です。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
艸俳句会カウンター
アクセスランキング
[ジャンルランキング]
学問・文化・芸術
81位
アクセスランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
小説・詩
3位
アクセスランキングを見る>>
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
QRコード
QR