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花暦句会報:東陽(平成29年8月26日)

東陽句会(江東区産業会館)
席題「霧」「踊り」
 
高点1句
廃校の分厚き闇やちちろ虫     斎田 文子
 
師の句碑の映す万緑ゆるぎなし   山本  潔
なだらかな畠の幾重や大根蒔く   斎田 文子
潤筆の重たき雨の終戦日      市原 久義
高張に連の誇りを阿波踊り     岡戸 良一
朝霧や杣小屋の鍵開ける音     安住 正子
夕霧やビル街の灯を低くして    堤  靖子
気怠さに身を持て余す月に暈    長澤 充子
初秋や梢ふれあふことふえし    野村えつ子
蜩や盛塩つまむ白き指       浅野 照子
図書館の子等の賑はひ夏の果    飯田 誠子
盆支度父母を迎ふる青畳      新井 洋子

                      (清記順)

一口鑑賞初秋や梢ふれあふことふえし」…えつ子さんの句。立秋をすぎ、まだ暑さは続いているものの、空の様子や雲の形、朝夕の風などに秋の始まりを感じる。それが「初秋」。見慣れた木々も、よく見れば幹や枝先は伸びたり、重なり合ったりしている。人間社会も何だか似ている。毎年のことに限らず、人生も秋を迎える頃には多くのふれあいがあり、やがて実を結んでいく。作者は写生の名手。木々の梢を見つめ、抑制を利かせて詠んだ奥に人間観察の目が入り込んでいる。(潔)

花暦句会報:すみだ(平成29年8月23日)

すみだ句会(すみだ産業会館)

高点3句
ジャングルジムの影の迷路や終戦日   岡田須賀子
灯籠の岸を離れてよりは黄泉      山本  潔
橋の灯を映して赤き処暑の川      山本  潔

頼もしき前歯玉蜀黍を食む       市原 久義
川暗し舟影暗し流燈会         長澤 充子
耳鳴りをはつきり消して蝉時雨     山本  潔
午後二時のレッスン始まる百日紅    工藤 綾子
子等の声なき路地となり地蔵盆     岡田須賀子
口数の少なき少女日に焼けて      大野ひろし
柏手の絶えぬ靖国秋の蝉        福岡 弘子
ひと叢の桔梗母恋ふ夕べかな      貝塚 光子
蝉時雨造酒屋の絵画展         桑原さかえ
塩飴を舌にころがし夏終る       岡戸 良一

                        (清記順)

一口鑑賞塩飴を舌にころがし夏終る」…良一さんの句。夏場は汗をかくから、塩分補給が必要だ。塩飴を舐めるようになったのはいつからだろう。もっとも、この夏は不順な天候で涼しい日も多かった。熱中症対策もさほど気にならなかったのではないか。それでも作者は塩飴を舐めている。何だか舌の上に転がる飴のざらついた感じまで伝わってくるようだ。しょっぱくて甘い塩飴に感じた夏の終わり。無事にひと夏をやり過ごすことへの安堵感もあるのだろう。余計なことは言わず、舌という一つの器官を浮き立たせたところが上手い。(潔)
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艸俳句会

Author:艸俳句会
艸俳句会のWeb版句会報。『艸』(季刊誌)は2020年1月創刊。
「艸」は「草」の本字で、草冠の原形です。二本の草が並んで生えている様を示しており、草本植物の総称でもあります。俳句を愛する人には親しみやすい響きを持った言葉です。

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