花暦句会報:東陽(平成31年2月17日)
東陽句会(江東区産業会館)
席題「木の芽」「水」
高点3句
水は照り風は弾みて猫柳 野村えつ子
老といふ艶を矜持に風生忌 岡戸 良一
木の芽風日差しほつこり古書の市 飯田 誠子
ものの芽のそれぞれにある深空かな 岡戸 良一
茹でたての花菜の香る辛子和 貝塚 光子
春霙ラー油を弾く水餃子 山本 潔
路地裏の窓に紅濃く桜草 飯田 誠子
遠浅間淡き吐息の冬桜 斎田 文子
老眼のすすむ速さよ水温む 堤 靖子
研修の紺の制服木の芽時 新井 洋子
春眠や酒呑童子かプラトンか 松本ゆうき
一山の芽吹きうながす護摩太鼓 野村えつ子
水音のやさしさにゐる梅の園 安住 正子
湧水の滲む崖路(がけじ)や下萌ゆる 長澤 充子
“亡母そつくり”と包まれし掌や春愁 浅野 照子
(清記順)
一口鑑賞「水音のやさしさにゐる梅の園」〜正子さんの句。梅の花は春の代表格。早くから咲き、香りも高い。そんな梅園の中にいるだけでも楽しいのだが、作者は「水音」を聴きながら、優しく幸せな気持ちに満たされている。どこから水音が聴こえてくるかは一切言っていないのに、読み手を納得させるのは中七の「やさしさにゐる」という措辞だろう。水音と梅園が溶け合って詩的空間を生み出している。「遠浅間淡き吐息の冬桜」〜文子さんの句。作者の居場所からは遥か遠くに浅間山が望める。この句は上五でいったん切れる。中七と下五では「淡き吐息」が感じられるくらい近くに冬桜が咲いている情景を描写したのである。こうした遠近法も俳句ではよく使われる。(潔)
席題「木の芽」「水」
高点3句
水は照り風は弾みて猫柳 野村えつ子
老といふ艶を矜持に風生忌 岡戸 良一
木の芽風日差しほつこり古書の市 飯田 誠子
ものの芽のそれぞれにある深空かな 岡戸 良一
茹でたての花菜の香る辛子和 貝塚 光子
春霙ラー油を弾く水餃子 山本 潔
路地裏の窓に紅濃く桜草 飯田 誠子
遠浅間淡き吐息の冬桜 斎田 文子
老眼のすすむ速さよ水温む 堤 靖子
研修の紺の制服木の芽時 新井 洋子
春眠や酒呑童子かプラトンか 松本ゆうき
一山の芽吹きうながす護摩太鼓 野村えつ子
水音のやさしさにゐる梅の園 安住 正子
湧水の滲む崖路(がけじ)や下萌ゆる 長澤 充子
“亡母そつくり”と包まれし掌や春愁 浅野 照子
(清記順)
一口鑑賞「水音のやさしさにゐる梅の園」〜正子さんの句。梅の花は春の代表格。早くから咲き、香りも高い。そんな梅園の中にいるだけでも楽しいのだが、作者は「水音」を聴きながら、優しく幸せな気持ちに満たされている。どこから水音が聴こえてくるかは一切言っていないのに、読み手を納得させるのは中七の「やさしさにゐる」という措辞だろう。水音と梅園が溶け合って詩的空間を生み出している。「遠浅間淡き吐息の冬桜」〜文子さんの句。作者の居場所からは遥か遠くに浅間山が望める。この句は上五でいったん切れる。中七と下五では「淡き吐息」が感じられるくらい近くに冬桜が咲いている情景を描写したのである。こうした遠近法も俳句ではよく使われる。(潔)