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艸句会報:すみだ(令和元年8月28日)

すみだ句会(すみだ産業会館)

高点3句
海の色移ろふ瀬戸の秋夕焼     長澤 充子
蚯蚓鳴く心の隅の真のやみ     岡戸 良一
師なきあとこれよりの日を艸茂る  石田 政江

亡き人の育てし夏の万花かな    桑原さか枝
喪帰りのことば少き星月夜     岡戸 良一
「爽やか」と書いて爽やか墨の香も 山音(やまね) 
渓谷に流水の糸冷さうめん     大浦 弘子
電柱の影をも拾ふ残暑かな     高橋 郁子
手信号で曲がる自転車赤とんぼ   福岡 弘子
赤紫蘇や笊にはつきり梅の跡    石田 政江
木槿咲く霊園前のなんでも屋    岡崎由美子
声痩せて病む弟へマスカット    長澤 充子
下町や祭まつりと八十路来る    貝塚 光子
新米にぶつかけ卵言ふことなし   工藤 綾子

(清記順)

一口鑑賞師なきあとこれよりの日を艸茂る」〜政江さんの句。「花暦」は7月に発行した夏季号で終刊となったが、今後は後継誌「艸(そう)」として再出発する。作者は故舘岡沙緻師との縁が深く、「花暦」の行く末を案じてきた一人。名称は「艸」に変わるものの、師の俳句精神が引き継がれることを願っている。「艸(草)茂る」は夏草の繁茂した様子を示す季語。「艸」への挨拶句。「手信号で曲がる自転車赤とんぼ」〜弘子さんの句。いまや自転車の手信号は珍しいが、ママチャリのおじいさんが曲がるときに不意に片手を上げたり、ロードバイクの人が進路変更をする際に手を伸ばしたりするのを見かけることがある。この句はそんな一瞬を巧みに言いとめた。「赤とんぼ」との取り合わせが効いている。(潔)

艸句会報:東陽(令和元年8月24日)

東陽句会(江東区産業会館)
席題「蜻蛉」「一」

高点1句
新盆やノートに残る母の短歌(うた)  松本ゆうき

一日の終りは祈りいぼむしり      堤 やすこ
震度三ぐらいじや止まぬ盆踊      浅野 照子
出店の灯消ゆる「そらまち」虫集く   長澤 充子
自販機のどんと缶吐く残暑かな     野村えつ子
読み難き碑に蜻蛉の臀呫(となめ)かな 安住 正子
安住正子にとんぼのとまる七尾線    山本  潔
桃を描く桃の香りを色にして      新井 洋子
流燈会五山の一字消えてより      岡戸 良一
ビー玉を透かして八月の宇宙      隣 安
いづこより童湧きしか盆踊       松本ゆうき
吊りてすぐおけさ風鈴おどり出す    飯田 誠子
言へさうで言へぬ一言いなびかり    岡崎由美子
一行の追伸うれし夏見舞        斎田 文子

(清記順)

一口鑑賞新盆やノートに残る母の短歌(うた)」〜ゆうきさんの句。昨年、お母さまを亡くした作者。このお盆は故郷の宇和島で過ごし、改めて在りし日の母を偲ぶ機会になったようだ。お母さまは地元の文化賞も受賞された歌人。<寂しさは独りの食事整えて「いただきます」と箸を取る刻(とき)><ゆく夏を惜しむごと鳴く蜩がひとりのわれを急かす夕暮れ>。この2首はお母さまの生前、ゆうきさんが編纂した「うちうみ 松本榮歌集」から引いた。「震度三ぐらいじや止まぬ盆踊」〜照子さんの句。句意は明瞭だ。東日本大震災からもうすぐ8年半。大地震はいつ起こってもおかしくないが、恐れているばかりでは何もできない。この夏、東京でも盆踊の最中に震度3の揺れがあったが、中断されるようなことはなかった。この句は地震と盆踊りという組み合わせに現代性が感じられる。(潔)

艸俳句会:句会開催予定(8、9月)

艸俳句会:句会開催予定(8、9月)

8月24日(土) 東陽句会:江東区産業会館
8月28日(水) すみだ句会:すみだ産業会館
9月 4日(水) 連雀句会:三鷹駅前コミュニティセンター
9月14日(土) 若草句会:俳句文学館
9月25日(水) すみだ句会:すみだ産業会館
9月28日(土) 東陽句会:江東区産業会館

【句会に関する問い合わせ先】艸俳句会 090-3545-6890 山本まで

プロフィール

艸俳句会

Author:艸俳句会
艸俳句会のWeb版句会報。『艸』(季刊誌)は2020年1月創刊。
「艸」は「草」の本字で、草冠の原形です。二本の草が並んで生えている様を示しており、草本植物の総称でもあります。俳句を愛する人には親しみやすい響きを持った言葉です。

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