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艸句会報:連雀(令和2年4月)

連雀通信句会

高点2句
蝌蚪の尾にはじまる沼の動きかな   安住 正子
句集「艸」読み返しをり花の昼    中島 節子

窈窕のしだれ桜に酔ひにけり     安住 正子
蜃気楼見てきし夜の貝の汁      松成 英子
魚よりも魚影確と春の池       坪井 信子
引き籠もる部屋の隅まで朧かな    山本  潔
囀のひとかたまりや楠大樹      中島 節子
今日も無事紅の鎮もる春夕焼     束田 央枝
花に逢ひ花に別るる一会かな     矢野くにこ
我が庭を選び山鳩巣籠れり      横山 靖子
消息をたしかめ合ふや草の餅     吉﨑 陽子
花こぼし鳥の尾羽の見え隠れ     向田 紀子
ほどほどに暮らして今日の桜かな   松本ゆうき
夕朧骨董市に江戸切子        飯田 誠子

(清記順)

【一口鑑賞】新型コロナウイルスはパンデミック(世界的大流行)を引き起こした。国内でも非常事態宣言が発令され、外出もままならなくなっている。句会が開けず、俳句は一体どうなってしまうのか?あれこれ考えているうちに、連雀句会では早々に手紙による通信句会が立ち上がった。取りまとめ役を買って出てくれた幹事さんには頭が下がる。
蝌蚪の尾にはじまる沼の動きかな」正子さんの句。俳句を作りたい一心で近所の沼を見に行ったのだろう。コロナ禍にあっても、季節は確実に移ろう。水の中では卵から孵ったお玉杓子が泳いでいる。人が近づいた振動を察知してお玉杓子が一斉に泳いだ瞬間、沼の水が濁った。これを作者は「沼の動き」と感じ取ったのである。こんな時だからこそ写生を大切にしたい。そんな思いが伝わってきた一句。「魚よりも魚影確と春の池」信子さんの句も同様に写生に徹した秀句。
句集『艸』読み返しをり花の昼」節子さんの句。私が3月下旬に刊行した句集への挨拶句である。ウイルス感染拡大で人々が家に引き籠もりがちになるタイミングを狙ったわけではないが、ありがたいことに多くの方々から反響があり、手ごたえを感じている。この句も「読み返しをり」だから、何度もページをめくってくれていることがうかがえる。季語「花の昼」も効いている。今年の桜は早く咲いた割には長持ちした。(潔)
プロフィール

艸俳句会

Author:艸俳句会
艸俳句会のWeb版句会報。『艸』(季刊誌)は2020年1月創刊。
「艸」は「草」の本字で、草冠の原形です。二本の草が並んで生えている様を示しており、草本植物の総称でもあります。俳句を愛する人には親しみやすい響きを持った言葉です。

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