艸句会報:すみだ(令和2年6月)
すみだ通信句会
高点2句
人を恋ひ旅恋ふままに梅雨入りかな 岡崎由美子
梅花藻のゆらめきをぬふ魚の影 岡戸 林風
青梅雨や河童ゐさうな川の色 貝塚 光子
ジョギングの折り返し点雲の峰 福岡 弘子
鮎見えて焦るばかりや竿重し 工藤 綾子
父の日の豆をポリポリ齧る父 山本 潔
不器用な父と息子に父の日来 岡崎由美子
桑の実を食みし古里遠き空 桑原さかえ
コロナ禍や老いてなほかつアロハシャツ 松本ゆうき
ままならぬ憂き世に暮し心太 髙橋 郁子
晩年の一喜一憂花いばら 岡戸 林風
人生の余白にエール濃紫陽花 長澤 充子
武蔵野の影を纏ひて桜桃忌 大浦 弘子
(清記順)
【一口鑑賞】「梅花藻のゆらめきをぬふ魚の影」林風さんの句。「梅花藻(ばいかも)」は6月から9月ごろにかけて山地や河原、池沼に自生する。水藻類の花を総称して「藻の花」と呼び、仲夏の季語。梅花藻は白い可憐な花をつける。作者は、繁茂する藻の微かな揺れに魚の影を追っているのである。写生句でありながら、中七の「ゆらめきをぬふ」という措辞から詩情が湧いてくる。「桑の実を食みし古里遠き空」さかえさんの句。子どもの頃の懐かしい思い出。養蚕が盛んだった時代、ふるさとの家の周りには桑畑がたくさんあった。赤い実が成り、熟すと紫色になる。北関東ではこれを「どどめ」と呼んだ。食べると唇が「どどめ色」に染まるので、すぐ親にばれた。「ままならぬ憂き世に暮し心太」郁子さんの句。今だからコロナ禍を意識して詠まれた句だろう。そうでなくても、災害の多かった平成や、原爆を経験した昭和を思い返しても、「ままならぬ憂き世」と言われれば誰でも納得する。そんな重い気持ちを「心太」によって軽く言い止めたところが上手い。(潔)
高点2句
人を恋ひ旅恋ふままに梅雨入りかな 岡崎由美子
梅花藻のゆらめきをぬふ魚の影 岡戸 林風
青梅雨や河童ゐさうな川の色 貝塚 光子
ジョギングの折り返し点雲の峰 福岡 弘子
鮎見えて焦るばかりや竿重し 工藤 綾子
父の日の豆をポリポリ齧る父 山本 潔
不器用な父と息子に父の日来 岡崎由美子
桑の実を食みし古里遠き空 桑原さかえ
コロナ禍や老いてなほかつアロハシャツ 松本ゆうき
ままならぬ憂き世に暮し心太 髙橋 郁子
晩年の一喜一憂花いばら 岡戸 林風
人生の余白にエール濃紫陽花 長澤 充子
武蔵野の影を纏ひて桜桃忌 大浦 弘子
(清記順)
【一口鑑賞】「梅花藻のゆらめきをぬふ魚の影」林風さんの句。「梅花藻(ばいかも)」は6月から9月ごろにかけて山地や河原、池沼に自生する。水藻類の花を総称して「藻の花」と呼び、仲夏の季語。梅花藻は白い可憐な花をつける。作者は、繁茂する藻の微かな揺れに魚の影を追っているのである。写生句でありながら、中七の「ゆらめきをぬふ」という措辞から詩情が湧いてくる。「桑の実を食みし古里遠き空」さかえさんの句。子どもの頃の懐かしい思い出。養蚕が盛んだった時代、ふるさとの家の周りには桑畑がたくさんあった。赤い実が成り、熟すと紫色になる。北関東ではこれを「どどめ」と呼んだ。食べると唇が「どどめ色」に染まるので、すぐ親にばれた。「ままならぬ憂き世に暮し心太」郁子さんの句。今だからコロナ禍を意識して詠まれた句だろう。そうでなくても、災害の多かった平成や、原爆を経験した昭和を思い返しても、「ままならぬ憂き世」と言われれば誰でも納得する。そんな重い気持ちを「心太」によって軽く言い止めたところが上手い。(潔)