「艸句会報:東陽(令和3年11月)
東陽通信句会
高点1句
石蕗咲くや海の端まで平らかに 新井 洋子
一片の落葉を肩に測量士 岡崎由美子
秋麗の山のリフトや深呼吸 貝塚 光子
航跡は海の綻び鳥渡る 安住 正子
冬隣終の住処に移りけり 長澤 充子
過ぎし日よ吊るされてゐる唐辛子 堤 やすこ
車座の繕ふ網や花八つ手 飯田 誠子
切株の座卓や杣のきのこ汁 新井 洋子
肩凝りも腰痛もなき案山子かな 山本 潔
見返しに銀杏落葉のしをりかな 松本ゆうき
湯豆腐の老舗消えゆく令和かな 向田 紀子
佃島に冬日を湛ふ船溜まり 斎田 文子
ビル群の影絵となりぬ冬茜 中島 節子
文化の日お子様ランチ旗立てて 中川 照子
(清記順)
【一口鑑賞】「石蕗咲くや海の端まで平らかに」洋子さんの句。初冬のまだ暖かな日に咲いた黄色い石蕗の花はいかにものどかな感じがする。海を一望する公園に立つ作者。真っ直ぐな水平線を見て「石蕗日和」との言葉が口を突いて出たのだろう。原句は「石蕗日和海の端まで平らかに」だった。これでも気持ちは伝わるが、前半の字面が漢字でごちゃついている。さらに「『石蕗』だけでは花のことにならない」(角川『俳句歳時記』第4版)との問題もあり、推敲案とした。「見返しに銀杏落葉のしをりかな」ゆうきさんの句。「見返し」は本の表紙と本文とをつなぎ合わせている丈夫な紙。作者は出版社に勤めていたから、そのへんは詳しい。この句は、散歩の途中で拾った「銀杏落葉」を、読みかけの本の栞にしようと、「見返し」に挟んだのだろう。あるいは古本を開いたら挟まっていたのかもしれない。(潔)
高点1句
石蕗咲くや海の端まで平らかに 新井 洋子
一片の落葉を肩に測量士 岡崎由美子
秋麗の山のリフトや深呼吸 貝塚 光子
航跡は海の綻び鳥渡る 安住 正子
冬隣終の住処に移りけり 長澤 充子
過ぎし日よ吊るされてゐる唐辛子 堤 やすこ
車座の繕ふ網や花八つ手 飯田 誠子
切株の座卓や杣のきのこ汁 新井 洋子
肩凝りも腰痛もなき案山子かな 山本 潔
見返しに銀杏落葉のしをりかな 松本ゆうき
湯豆腐の老舗消えゆく令和かな 向田 紀子
佃島に冬日を湛ふ船溜まり 斎田 文子
ビル群の影絵となりぬ冬茜 中島 節子
文化の日お子様ランチ旗立てて 中川 照子
(清記順)
【一口鑑賞】「石蕗咲くや海の端まで平らかに」洋子さんの句。初冬のまだ暖かな日に咲いた黄色い石蕗の花はいかにものどかな感じがする。海を一望する公園に立つ作者。真っ直ぐな水平線を見て「石蕗日和」との言葉が口を突いて出たのだろう。原句は「石蕗日和海の端まで平らかに」だった。これでも気持ちは伝わるが、前半の字面が漢字でごちゃついている。さらに「『石蕗』だけでは花のことにならない」(角川『俳句歳時記』第4版)との問題もあり、推敲案とした。「見返しに銀杏落葉のしをりかな」ゆうきさんの句。「見返し」は本の表紙と本文とをつなぎ合わせている丈夫な紙。作者は出版社に勤めていたから、そのへんは詳しい。この句は、散歩の途中で拾った「銀杏落葉」を、読みかけの本の栞にしようと、「見返し」に挟んだのだろう。あるいは古本を開いたら挟まっていたのかもしれない。(潔)