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艸句会報:かつしか(令和4年2月27日)

かつしか句会(亀有地区センター)
兼題「本」

印象句
恐竜の跳び出す絵本春炬燵      新井 洋子
【一口鑑賞】春が来てもまだ寒さがぶり返すかもしれないと思うと、なかなかしまえずに使っているのが「春炬燵」。掲句は兼題「本」から発想して「跳び出す絵本」と取り合わせた。作者自身の思い出のなかにある絵本なのかもしれない。いきなり「恐竜の」と書かれると、読み手としては興味をそそられる。寒さが同居している時期の微笑ましい一場面を「春炬燵」がうまく演出してくれた。(潔)

棟上げの手締め一本春立てり     霜田美智子
紅梅を店の看板娘とも        西村 文華
家事机に母を労ふチューリップ    高橋美智子
膏薬をペタペタ貼つて冬逝かす    三尾 宣子
陽炎や河豚供養碑のふくふくと    五十嵐愛子
星掬ひ小雪纏うて露天の湯      近藤 文子
海見ゆる丘にぽつぺん吹いてをり   笛木千恵子
花豆のふつくら煮ゆる寒の内     千葉 静江
甥の名は「大」一文字や松の芯    伊藤 けい
文庫本の進まぬページ目借時     平川 武子
脊柱に捻子三本や古希の春      西川 芳子
囀を鳥の本音と思ふべし       山本  潔
瞼ぬらす文七元結春の宵       佐治 彰子
紅椿遠き記憶に灯をともす      新井 洋子
春の夢一本道に迷ひけり       松本ゆうき
春遅き塩田平の鯉づくし       新井 紀夫

(清記順)

艸句会報:船橋(令和4年2月23日)

船橋句会(船橋市勤労市民センター)
兼題「天」

印象句
蒼天に翼のごとく春ショール     並木 幸子
【一口鑑賞】「天」の一文字を詠み込んでの一句。まず「蒼天に」で青空がパッと広がる。さらに「翼のごとく」で一体何が出てくるのだろうと期待が膨らんだところに、今まさに「春ショール」を広げて肩に掛けようとしている女性の姿が現れる。俳句は短いから多くのことは書けないが、一瞬の動きを映像のように描写することができる。季語の斡旋により、春の明るく開放的な気分も伝わってくる。(潔)

春浅き始発ホームに同じ顔      小杉 邦男
ねなし草さへ逃さじと野火走る    山本  潔
雛飾り話し相手は官女さま      川原 美春
梅の香や人影のなき無縁坂      矢島 捷幸
梢揺れてワルツのやうに春の鳥    三宅のり子
この家を終の住処と雛飾る      市原 久義
海辺から一の鳥居や実朝忌      沢渡  梢
老木の芽吹きたしかや風生忌     岡戸 林風
目刺焼く女友達かたはらに      松本ゆうき
蒲公英に雲を抱かせるカメラアイ   山本 吉徳
この路のここにいつまで残る雪    飯塚 とよ
回転ドア盲導犬に春の風       並木 幸子
カニカマを裂きて散らす朱多喜二の忌 針谷 栄子

(清記順)

艸句会報:すみだ(令和4年2月16日)

すみだ句会(すみだ産業会館)
兼題「高」

印象句
春潮の運河せましと浚渫船      貝塚 光子
【一口鑑賞】「春潮」は春のあたたかい海の水。それが大潮のときなどは河口近くの運河に差してくるのだろう。澄んだ藍色の水が満ちた運河を眺めている作者。目の前を過ぎゆく浚渫船の様子を「運河せましと」と感じたままに書きとめた。東京の下町では災害時の河川氾濫対策や水路活用などに向けた工事が進められているという。(潔)

春めくや竹が風よぶ山の寺      福岡 弘子
桃色の稚の耳朶雛祭         長澤 充子
みちのくの野火の煙や高曇り     山本  潔
朝まだき縄張り越へて孕猫      貝塚 光子
橋普請進む町川葦の角        髙橋 郁子
名刹の高館堂や落椿         大浦 弘子
胡麻ほどに芽吹き初めたる雪柳    工藤 綾子

(清記順)

艸句会報:若草(令和4年2月11日)

若草句会(亀有 ギャラリー・バルコ)
兼題「感」

印象句
閃きは名句の予感風生忌       沢渡  梢
【一口鑑賞】俳句は不意に言葉が降りてくる瞬間がある。この句は兼題「感」で詠まれた。富安風生(1885~1979年)はホトトギス派の代表的俳人の一人。軽妙洒脱な句風で知られた風生の忌日(2月22日)を前に、まさに一瞬の閃きから生まれたのだろう。「艸」の師系をたどれば風生にたどり着く。この日の句会では最高点に輝いた。(潔)

燗酒や楊枝でつつく豆腐餻      新井 紀夫
枯菊の一輪になほ誇りあり      石田 政江
句会後の酒に折句や春の宵      新井 洋子
はうれん草亡き母を詠む友のこと   松本ゆうき
感冒かオミクロンかと鼻を擤む    安住 正子
掌をあてる幹の感触春動く      岡戸 林風
春の雪クリームシチューことことと  沢渡  梢
風花や明日はよきことある予感    吉﨑 陽子
青空も大地も丸き巣箱かな      市原 久義
涅槃図に悲しみの影なかりけり    坪井 信子
バーチャルの旅の自在や鳥帰る    針谷 栄子
クレープにひかりを包む二月かな   山本  潔
アスリートの頬の輝き木の芽晴    飯田 誠子

(清記順/欠席投句以外は自選句)

艸句会報:連雀(令和4年2月2日)

連雀句会(三鷹駅前コミュニティセンター)
兼題「野」

印象句
狂ひなく地球は廻る福寿草      横山 靖子
【一口鑑賞】「福寿草」は新年を祝う盆栽として根強い人気がある。玄関や客間に飾れば、めでたさが増すからだろう。もともとは野生で、花の少ない時期に咲くことから珍重された。掲句は、大胆な発想で福寿草と地球を取り合わせた。地球の自転、公転によってもたらされる自然の摂理への畏敬の念が感じられる。(潔)

太陽族の言葉遺して冬の星      中島 節子
春光の卓に遺影を移しけり      坪井 信子
繊月の山の端にあり冴返る      松成 英子
保育士に朝の寒月出勤す       春川 園子
梅一輪父の齢を越しにけり      向田 紀子
探梅行独りの刻の昏さかな      飯田 誠子
煙突に富士は真二つ蒲団干す     松本ゆうき
廃校の裏の鉄門寒椿         渕野 宏子
大寒や関東平野晴れ続く       矢野くにこ
武蔵野の節分ちかき光かな      山本  潔
行く末のこの道吾の恵方とす     横山 靖子
懐かしき夫の講釈鮟鱇鍋       束田 央枝
寒夕焼鴉わき立つ平林寺       安住 正子

(清記順/欠席投句以外は自選句)

艸句会報:船橋(令和4年1月29日)

船橋句会(船橋市勤労市民センター)
兼題「窓」

高点1句
地図になき道こそよけれ探梅行    山本  潔

出口どこ地下の改札冬ざるる     三宅のり子
北窓開く吾が心ひらくごと      針谷 栄子
同窓生つづく縁や枇杷の花      川原 美春
尻尾まで脱力したる干し大根     市原 久義
三椏の花の香ポンと風にのり     並木 幸子
寒紅梅木もれ日ほどの花の数     山本 吉徳
占ひの館列なす春隣         沢渡  梢
平穏と書けば平穏初日記       山本  潔
窓際の長椅子ひとり日向ぼこ     小杉 邦男
読初や心の窓を開け放ち       岡戸 林風
しらじらと明くる窓辺や霜の花    矢島 捷幸
言葉にはならぬやさしさ犬ふぐり   飯塚 とよ

(清記順)

【一口鑑賞】「三椏の花の香ポンと風にのり」幸子さんの句。三椏はジンチョウゲ科の落葉低木。中国から渡来し、和紙の原料として利用されてきた。早春の頃、枝先に黄色の筒状の花が咲いた後、新枝が3本ずつ分かれて出てくることが名前の由来。花は、沈丁花より控えめだが、ほんのりと甘酸っぱい香りがする。掲句の「ポンと風にのり」は花の可愛らしさと相まって匂いが漂ってくるようだ。春の到来を先取りした一句。「占ひの館列なす春隣」梢さんの句。いつの世も占いにすがる人は絶えない。ましてやコロナ禍で先行きが見通せない今、評判の占師となれば並ぶ人もいるだろう。街歩きが好きで、ちょっとしたことにも関心を寄せる作者。春を探しに出た街で遭遇した行列をすかさず一句に仕立てた。「春隣」にコロナ禍の収束を願う気持ちも込められている。(潔)
プロフィール

艸俳句会

Author:艸俳句会
艸俳句会のWeb版句会報。『艸』(季刊誌)は2020年1月創刊。
「艸」は「草」の本字で、草冠の原形です。二本の草が並んで生えている様を示しており、草本植物の総称でもあります。俳句を愛する人には親しみやすい響きを持った言葉です。

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