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艸句会報:かつしか(令和4年3月27日)

かつしか句会(亀有地区センター)
兼題「花」

印象句
綺麗ねと鸚鵡返しや花の道      小野寺 翠
【一口鑑賞】言うまでもないことだが、俳句は短い。5W1Hなどは入れようがないし、長々と説明する余裕はない。季題を一つに絞り、一瞬の感動を書き留めたときに一句は完成する。この句の舞台は満開の桜並木。誰かと一緒に歩いている。相手が思わず「綺麗ね」と呟き、作者もそっくりそのまま「綺麗ね」と応じたのだ。それだけのやりとりを「鸚鵡返し」が端的に言い表している。桜に陶酔している様子が伝わってくる。(潔)

つくしんぼ緩き流れのビオトープ   新井 紀夫
花時の花の切手を買ひ求む      三尾 宣子
猫の子の何をされても熟寝中     新井 洋子
 熟寝(うまい)
花束を抱へてバスに入彼岸      片岡このみ
春寒や節電の夜の真暗闇       西村 文華
雪洞の潤む地球の花月夜       佐治 彰子
桜餅夫の忌遠くなりにけり      伊藤 けい
花の寺引きも切らずに縁結び     高橋美智子
みちのくの花街道や三味の音     五十嵐愛子
水の上に一枝のばす初桜       千葉 静江
花の昼粋も無頼も知らず生く     松本ゆうき
テレビより砲弾響き春寒し      平川 武子
重き荷も軽き荷もあり春遍路     近藤 文子
春うららなかなか止まぬ立話     西川 芳子
一村に同姓数多亀鳴けり       霜田美智子
うららかや鞄に小さき花図鑑     山本  潔

(清記順)

艸句会報:すみだ(令和4年3月23日)

すみだ句会(すみだ産業会館)
兼題「光」

印象句
光陰を支柱にゆだね老桜       岡戸 林風
【一口鑑賞】富安風生が<まさをなる空よりしだれざくらかな>と詠んだ真間山弘法寺(千葉県市川市)の伏姫桜は樹齢400年。何本もの支柱にのしかかるようにして立っている。風生を敬愛する作者のことだから、この桜を念頭に置いての一句だろう。兼題「光」を詠み込むと同時に、対象となる伏姫桜を擬人化した点が技巧的だ。何度も見て目に焼き付いている「老桜」。写生の目とはこういうものかと思わせてくれる。(潔)

蒼天や残雪光る白川郷        大浦 弘子
水温む舌出す貝の気の弛み      内藤和香子
目借時使ひ古しの蛍光ペン      山本  潔
細やかに主役光らす霞草       山本 吉徳
花待たず召されし君よとこしへに   矢島 捷幸
ふくよかな母の面影春の月      福岡 弘子
濠の波光りひかりて花筏       髙橋 郁子
春光の透ける川底魚の影       貝塚 光子
舗装路の継ぎ目に菫ふるへをり    工藤 綾子
せせらぎの堰のしぶきやつくづくし  長澤 充子

(清記順)

艸句会報:若草(令和4年3月12日)

若草句会(亀有 ギャラリー・バルコ)
兼題「放」

印象句
  浪江町
街音は立ち直る音木々芽吹く     安住 正子
【一口鑑賞】この3月で東日本大震災から11年。前書の「浪江町」は地震や津波に加え、福島第1原発事故による甚大な被害を受けた自治体の一つ。今、この町に帰ってきた人は震災当時の人口(2万1500人)の10分の1にも満たないが、復興は徐々に進められている。それが「街音」であり、そこに暮らす人々の表情が見えてくるようだ。「木々芽吹く」には、被災地の再生を応援する作者の気持ちが込められている。(潔)

刀身のひかり一閃細魚散る      岡戸 林風
沙緻忌のこと考へをれば暮の春    石田 政江
哀しきは放浪の民なごり雪      松本ゆうき
フェイクニュース放つ現世や亀鳴けり 針谷 栄子
春風や乗り放題の一日券       新井 紀夫
落椿水辺に紅を正しけり       坪井 信子
啓蟄や一歩一会の地蔵尊       吉﨑 陽子
開け放つ窓いつぱいの花ミモザ    新井 洋子
下校告ぐ校内放送鳥曇        沢渡  梢
テーラーの黒き電話や里燕      山本  潔
手遊に放つビー玉春の色       飯田 誠子
青と黄の蝶銃口に怯まざる      市原 久義

(清記順)

艸句会報:連雀(令和4年3月2日)

連雀句会(三鷹駅前コミュニティセンター)
兼題「雛」

印象句
息災の二人で居たし雛あられ     中島 節子
【一口鑑賞】日ごと春めくころにやってくるのが雛祭。掲句は心が明るくなるなか、夫婦の健康を願う気持ちを素直に詠んでいる。「息災の二人で居たし」までは誰でも言えそうで平凡な印象だが、座五の「雛あられ」が絶妙だ。いり豆、あられ餅を混ぜて砂糖をまぶし、ピンクや緑の色をつけた可憐な菓子。老後の重要テーマを明るく前向きに受け止める作者の心情が伝わってくる。(潔)

囀やいつもの店のいつもの茶     渕野 宏子
家族減りても昔のままに雛の膳    春川 園子
独裁も戦争もなく雛の間       松本ゆうき
立子忌のひとつ足りない雛道具    山本  潔
白梅や茅葺き厚き長屋門       矢野くに子
艸魚忌の「艸」は青春夢大き     束田 央枝
こもり居の梅一輪に背筋伸ぶ     横山 靖子
白玉椿挿して竹筒甦る        飯田 誠子
春の雷心は老いを諾はず       安住 正子
菜の花を散らす酢飯や喜寿の膳    向田 紀子
道狭き天領の町古雛         松成 英子
雛の窓閉ぢてホームの夜の窓     坪井 信子

(清記順)

艸句会報:東陽(令和4年2月)

東陽通信句会

印象句
鉛筆でぐいぐい描く臥竜梅      飯田 誠子
【一口鑑賞】「臥竜」は空に昇らず寝ている竜。「まだ志をのばす機会を得ないで、民間にひそみ隠れている英雄」にたとえた中国の故事による。そんな竜の姿を思わせる「臥竜梅」をスケッチする人を間近でじっと観察した作者。掲句は上五〜中七の「鉛筆でぐいぐい描く」という措辞が端的で力強い。読者の目にも幹の形や枝振りが見えてくるようだ。寝ている竜が起きて天に昇るかもしれない。(潔)

ユトリロの町かと思ふ春の雪     向田 紀子
淡雪にうるむやビルの灯の柱     中島 節子
初午や白狐の面の肩車        中川 照子
うなじ過ぐ風の尖りや春寒し     安住 正子
ぶかぶかの地蔵の帽子春立てり    岡崎由美子
生かされて生きるかがやき梅真白   堤 やすこ
里山のひかり集めて芹の水      岡戸 林風
三寒や身近に迫るオミクロン     貝塚 光子
もこもこの熊と眠る子霜降る夜    新井 洋子
手に触るる佃小橋の柳の芽      斎田 文子
ポジティブに歩く目のさき猫柳    山本  潔
はだれ雪ひとり住まひの灯をともす  長澤 充子
また一軒閉づる書店や春寒し     松本ゆうき

(清記順)
プロフィール

艸俳句会

Author:艸俳句会
艸俳句会のWeb版句会報。『艸』(季刊誌)は2020年1月創刊。
「艸」は「草」の本字で、草冠の原形です。二本の草が並んで生えている様を示しており、草本植物の総称でもあります。俳句を愛する人には親しみやすい響きを持った言葉です。

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