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艸句会報:東陽(令和4年5月28日)

東陽句会(江東区産業会館)
兼題 折句/や・ひ・ひ 例句/山国やひとりに余る冷し酒 舘岡沙緻

印象句
山の水引き入れトマト冷やしをり   堤 やすこ
【一口鑑賞】この日の兼題は折句。上五、中七、下五のそれぞれ先頭に例句と同じ音を詠み込んだ。12人で23の折句が投じられ、力作が多かった。折句と言えば、想像力に頼りがちだが、掲句はまるで今見ている場面を詠んだようなみずみずしさが感じられる。山里の清水で冷やしている真っ赤なトマトが美味しそうだ。例句の「ひとり」や「酒」に引きずられることなく、作者の記憶のなかにある光景を詠んだからだろう。(潔)

焼茄子の一つもあらばひとり酒    山本  潔
山奥の氷雨となりし避難小屋     斎田 文子
翡翠の嘴の銀鱗より雫        新井 洋子
老いといふ未知の世界や蟻地獄    飯田 誠子
夏落葉かさこそと鳩あらはるゝ    中島 節子
やれやれとひとつ坂越す日の盛    松本ゆうき
簗番の一人ぽつんと日暮れどき    中川 照子
擂子木に紫蘇の香りや冷し汁     岡戸 林風
山繭のひとつ垂れゐて日の翳り    安住 正子
葛西橋真ん中卯の花腐しかな     貝塚 充子
失せ物を探す日と決め梅雨籠る    向田 紀子

(清記順)

艸句会報:すみだ(令和4年5月25日)

すみだ句会(すみだ産業会館)
兼題「五」

印象句
杖にぎる夫の五百歩夏来る      貝塚 光子
【一口鑑賞】句意は明快だ。杖を手に歩行のリハビリ訓練をしているご主人。付き添いながら一歩一歩、声に出して数える作者。兼題「五」を詠み込んでの五百歩だから、実際はもっと多いのかもしれない。しかし、俳句ではそこまで正確さにこだわることはない。「夏来る(なつきたる)」は「立夏」の言い換え季語。夏の到来を感じながら、前向きにリハビリに取り組むご主人と、それを支える作者の心持ちが感じられる。(潔)

開け閉めの襖の重み五月雨るゝ    内藤和香子
走り梅雨そこはかとなき此の憂鬱   矢島 捷幸
五能線発車卯の花腐しかな      山本  潔
五線譜をはねる音符や夏は来ぬ    長澤 充子
風五月旗なびかせて甲斐の寺     大浦 弘子
子に頼ることのみ殖ゆる五月かな   松本ゆうき
甚平着て縁側欲しき夕まぐれ     岡戸 林風
露地といふ親しき幅や青簾      山本 吉徳
まくなぎを連れ来し人とすれ違ふ   工藤 綾子
青嵐外で四股踏む相撲部屋      福岡 弘子

(清記順)

艸句会報:かつしか(令和4年5月22日)

かつしか句会(亀有地区センター)
兼題「夏の月」

印象句
版画にてもてなす寺や月涼し     笛木千恵子
【一口鑑賞】「版画にてもてなす」とはどういうことだろう。そう思いながらも、寺の上に夏の月が出ている景を思い浮かべると、何だか旅心が誘われる。作者によれば、ここは岡山県真庭市の毎来寺(まいらいじ)。かつて廃寺同然だったこの寺に入った現住職が趣味の版画を襖に貼ったところ評判となり、今では天井絵や掛軸など300点以上が展示されているという。実際にここを訪れた作者。版画に癒された気持ちが「月涼し」に素直に表れている。(潔)

ジャズバンド震はす窓に夏の月    霜田美智子
隠れ家のやうな茶房や夏の月     千葉 静江
サリー纏ひたたずむ人や藤の下    五十嵐愛子
里若葉参道脇の六地蔵        佐治 彰子
小刻みに揺れて蕗の葉日をこぼす   片岡このみ
外来種固有種混り草茂る       小野寺 翠
手づくりのフレアスカート若葉風   西川 芳子
うすものの噺家余技の「奴さん」   新井 紀夫
曇天の降りみ降らずみ五月憂し    伊藤 けい
囀の響く中庭シーツ干す       高橋美智子
白シャツや背中に透ける湿布かな   山本  潔
夏の月玄関灯の塵払ふ        近藤 文子
冷麦や色付き麺を奪ひ合ひ      西村 文華
銀ブラや連れ帰りたき夏の月     新井 洋子

(清記順)

艸句会報:若草(令和4年5月14日)

若草句会(俳句文学館)
兼題「政」

印象句
古団扇この政党も今は消え      市原 久義
【一口鑑賞】兼題「政」に苦しむ人が多かったが、作者は「古団扇」との取り合わせでユーモラスな一句に仕立てた。夏の季語「団扇」の傍題で、前の年に使われたものを指す。この句の場合はもっと古いものかもしれない。どこかで手にした団扇にもはや解散した政党名が入っていたのだ。いかにもありそうで軽い諷刺にもなっている。そう言えば、個人名や政策を印刷した団扇を有権者に配り、辞職した法務大臣もいた。そんなことまで思い出す。(潔)

師の句碑に能登新緑の惜しみなく   安住 正子
若葉風鍵盤奔るカンパネラ      石田 政江
風入れやわが青春に卒論に      新井 紀夫
五月雨百人町へ「艸」帰る      松本ゆうき
大欠伸して全身に薫風を       坪井 信子
晴々と石田政江の夏羽織       山本  潔
筍飯炊くと一行記しをく       飯田 誠子
江戸前の煮切りの艶も立夏かな    針谷 栄子
日が風が潮騒が好き罌粟坊主     新井 洋子
市政バス運行開始五月晴       吉﨑 陽子
猫の眼の一つは翠五月闇       岡戸 林風
夢見るも生くるも一人桐の花     沢渡  梢
臣虚子は政にも通じ五月闇      隣   安

(清記順)

艸句会報:連雀(令和4年5月11日)

連雀句会(三鷹駅前コミュニティセンター)
兼題「薫、香」

印象句
横町にカラメル香る立夏かな     渕野 宏子
【一口鑑賞】「立夏」は二十四節気の7番目。今年は5月5〜20日の間。この頃は、新緑の木々が眩しく、気温が上昇しても湿度が低いので過ごしやすい。掲句は、そんな心地良い日の散歩だろうか。あるいはゴールデンウィーク中に訪れたどこかの街での一場面かもしれない。横町に入ると、どこからともなくカラメルの匂いがしてきたのだ。それだけのことなのだが、独特の甘い焦げた香りが郷愁を誘う。下五の「立夏かな」が利いているからだろう。(潔)

短冊の沙緻師の筆や風かをる     束田 央枝
少子化の新聞記事や粽解く      中島 節子
山男往生のごと大昼寝        松本ゆうき
鳥翔ちしあたり地獄の釜の蓋     山本  潔
雨催ひ低くすばやく夏燕       松成 英子
葉桜や校門に入る給食車       向田 紀子
発想を盗む五月の夜の辞書      矢野くにこ
葉桜のベンチに遊ぶ日のひかり    横山 靖子
実桜やわが身のための運動を     春川 園子
師よ聴いてゐますか花のひらく音   坪井 信子
行く春やいつかは捨つる物ばかり   飯田 誠子

(清記順)

艸句会報:船橋(令和4年5月3日)

船橋句会(船橋市勤労市民センター)
兼題「結」

印象句
アカシアの咲く岡晴夫眠る空     隣   安
【一口鑑賞】この日は句会前に有志で市川市の葛飾八幡宮で吟行。二つの鳥居を経て進むと、境内前の駐車場に初夏の花「アカシア」が咲いていた。近くにあったのが戦前戦後にかけて活躍した流行歌手、岡晴夫の顕彰碑。掲句はそれを見ての挨拶句。アカシアの語感と大胆に詠み込んだ人名が詩的に響き合い、郷愁にかられる。岡晴夫は1916年、千葉県木更津市生まれ。市川市に長年暮らした。1970年5月の空の下、54歳で亡くなった。(潔)

朝若葉わが身に注ぐ香りかな     三宅のり子
穀雨浸む大樹切り株まで青く     並木 幸子
静かなる八幡宮の立夏かな      小杉 邦男
なに着やうかしら憲法記念の日    山本  潔
入学の朝空つぽのランドセル     市原 久義
桜蕊降る石の狐の眠たげに      針谷 栄子
風薫る宮清掃のボランティア     新井 紀夫
綴り紐結ぶリハビリ新茶の香     川原 美春
葉桜の真下に立てば吾も緑      飯塚 とよ
結束の力を公孫樹若葉かな      岡戸 林風
雨あとの緑眩しき神の庭       安住 正子
憲法記念日不知森の竹直し      松本ゆうき
修司忌や八幡の森の神隠       沢渡  梢

(清記順)

艸句会報:すみだ(令和4年4月27日)

すみだ句会(すみだ産業会館)
兼題「比喩の句」

印象句
子猫はや吾輩と言ふ面構       山本 吉徳
【一口鑑賞】子猫が成長していく姿は何とも愛くるしい。人間の赤ん坊の個性が豊かなように、子猫もさまざま。飼い猫の子か、野良猫の子かによっても顔つきは変わってくるという。この句の子猫は、当然のことながら漱石の名作を読者が思い浮かべるように仕組まれている。「吾輩と言ふ面構」とは一体どんな顔だろう。人間や物事を注意深く観察し、哲学家のような猫に成長していく様子を想像するとなんだか楽しくなってくる。(潔)

はるかより人呼んでゐる桐の花    工藤 綾子
暮れなづむ空を灯して栃の花     岡戸 林風
ロックゲートは鳩の団地や土手青む  貝塚 光子
ペンギンめく園児の列や春の風    福岡 弘子
学舎に三代続く一年生        内藤和香子
疫病世を寄居虫のごと慎ましく    山本  潔
羽搏きて水音高し残る鴨       松本ゆうき
砂浜の消えぬ轍や春の波       矢島 捷幸
お茶好きに比べやうなき古茶新茶   長澤 充子
比喩といふ題に苦しむ日永かな    大浦 弘子
人の世の別れいくたび花吹雪     髙橋 郁子

(清記順)
プロフィール

艸俳句会

Author:艸俳句会
艸俳句会のWeb版句会報。『艸』(季刊誌)は2020年1月創刊。
「艸」は「草」の本字で、草冠の原形です。二本の草が並んで生えている様を示しており、草本植物の総称でもあります。俳句を愛する人には親しみやすい響きを持った言葉です。

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