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艸句会報:東陽(令和4年11月26日)

東陽句会(江東区産業会館)
兼題「乗り物」一切

印象句
終点の小さき漁港や冬の凪      岡崎由美子
【一口鑑賞】この日の兼題は「乗り物」一切。バスや電車、船、ロープウェーなどを詠んだ予想通りの句が多いなかで、掲句は乗り物を直接登場させずに、その存在を思わせる詠みぶりが光った。「終点の小さき漁港」と言っただけで1時間に1本あるかないかのローカル路線バスと釣舟の景が立ち上がる。「冬の凪」という季語の斡旋も見事で読み手を郷愁に誘う。「乗り物」をテーマとしてさりげないが詩情のある句に仕上がった。(潔)

砂浜は潮騒ばかり懸大根       斎田 文子
冬嶺に歌を撒きつつロープウェー   中川 照子
むささび飛ぶ森の眠りを妨げず    新井 洋子
鳥つどふ家の不思議や冬はじめ    松本ゆうき
着ぶくれて監視カメラに捉へらる   安住 正子
磨ぎ水に残る糠の香冬に入る     向田 紀子
冬落暉水上バスの水脈長し      堤 やすこ
無住寺の樋の傷みや冬の蜂      岡崎由美子
水涸るる宿根草のビオトープ     新井 紀夫
畳屋の肘も小道具冬日和       飯田 誠子
久方に都電の旅を一の酉       岡戸 林風
波郷忌のバスに冬日の反射して    山本  潔
冬萌や幼ナ日に日に口達者       中島 節子

(清記順)

艸句会報:若草(令和4年11月12日)

若草句会(亀有 ギャラリー・バルコ)
兼題「無」

印象句
義経に菊師寄りては離れては      新井 紀夫
【一口鑑賞】「菊師」は晩秋の季語「菊人形」の傍題。菊人形展が始まる直前だろうか。菊師が一つの作品に近寄ったり離れたりしながら、手直しを加えている様子が目に浮かぶ。この句は最初、「総仕上げ菊師寄りては離れては」として投句された。選句後の合評で「上五が菊師の動きの答えを最初から言ってしまっている」との意見が出て、作者自ら「義経に」と推敲した。これにより菊人形の姿が明確になり、句が引き締まった。だから句会は面白い。(潔)

冬ぬくしコントラバスのアヴェ・マリア 石田 政江
無蓋車の風騒がせて枯野原       安住 正子
両の手でつつむ湯呑みや冬に入る    飯田 誠子
風の夜のふくふくと煮る新小豆     霜田美智子
妻はいま出雲の空か神無月       岡戸 林風
風生に無季の句一つ炬燵猫       山本  潔
神社裏の猫の会議や小六月       吉﨑 陽子
しつけ糸手繰る指先冬はじめ      沢渡  梢
トンネルを抜ければ会津花すすき    松本ゆうき
踏み入れば大地の香る落葉道      市原 久義
下戸にして常連の客海鼠噛む      新井 洋子

(清記順)

艸句会報:連雀(令和4年11月2日)

連雀句会(三鷹駅前コミュニティセンター)
兼題「耳」

印象句
遠くより路地を掃く音今朝の冬    束田 央枝
【一口鑑賞】今年の立冬は11月7日。この句は、先取りして投句されたが、「今朝の冬」という副季語によって実感がよく出ている。ふだんはあまり気にしない路地を掃く音も、秋から冬への澄んだ冷んやりした空気を伝わってくると、はっきり聴こえたのだろう。近年は温暖化で紅葉のピークが徐々に後ろにずれているが、太陽の動きは決して季節を変えてしまうことはない。作者は、冬の到来をささいな音から感じ取ったのである。繊細な一句。(潔)

リハビリを兼ぬる散歩や鰯雲     春川 園子
パン生地は耳たぶくらい冬ぬくし   松成 英子
朝からの雨となりけり白芙蓉     中島 節子
艶ばなし耳立てて聞く冬帽子     松本ゆうき
この道や詩を心耳に白秋忌      山本  潔
身にしむや老に空耳地獄耳      飯田 誠子
石蕗の花や暮色を寄せつけず     矢野くにこ
数珠玉やのんののんのと拝みし日   坪井 信子
素踊りの運ぶ足先火恋し       向田 紀子
佳句に会ふ心静もる良夜かな     横山 靖子

(清記順)
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艸俳句会

Author:艸俳句会
艸俳句会のWeb版句会報。『艸』(季刊誌)は2020年1月創刊。
「艸」は「草」の本字で、草冠の原形です。二本の草が並んで生えている様を示しており、草本植物の総称でもあります。俳句を愛する人には親しみやすい響きを持った言葉です。

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