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艸句会報:すみだ(令和5年2月22日)

すみだ句会(すみだ産業会館)
兼題:テーマ「音」

印象句
暖かや終着駅に鳴るピアノ      岡戸 林風
【一口鑑賞】テーマ「音」で詠まれた一句。街中の公共の場所に設置された、誰でも自由に弾けるピアノがストリートピアノ。置かれている場所によって「駅ピアノ」「空港ピアノ」などと称される。英国が発祥の地とされ、日本では2011年に鹿児島駅近くの商店街に置かれたのが最初という。今では全国各地に広がっている。この句は、春の暖かさが感じられる日にぶらっと出かけた先で聴いたピアノの音だろうか。「終着駅」の一言が旅情をかきたてる。(潔)

五手詰の将棋指す音冴返る      大浦 弘子
谿音に片栗の花ほどけ初む      貝塚 光子
熊よりも恋猫に似しパンダ往く    松本ゆうき
春なぎさ貝殻に聴く風の音      岡戸 林風
みづうみの映す蒼天風生忌      山本  潔
ふらここやスカートひらり空を蹴る  江澤 晶子
初雷の去るや天地の深き黙      岡崎由美子
枕辺に白湯と喉飴春寒し       福岡 弘子
弱音吐く我に叱咤や青き踏む     髙橋 郁子
愛猫の鈴の音いまも春の宵      長澤 充子
白梅や絵馬に願ひの幼な文字     内藤和香子

(清記順)

艸句会報:若草(令和5年2月11日)

若草句会(俳句文学館)
兼題「宴」

印象句
蜜蜂や花々百句詠みたしよ     石田 政江
【一口鑑賞】春になると、花々の蜜を求めて蜂が飛んでくる。蜂の仲間は極めて多く、「蜜蜂」にはニホンミツバチとセイヨウミツバチがいて、いずれも飼育されて蜜の採取が行われる。1万年前には採蜜が行われていたという。そんな蜜蜂をじっと見ている作者。「自分も花から花へ飛びながら俳句を詠んでみたい」と思ったのだろう。俳句で「花」と言えば桜のことになるが、この句は「花々」で「いろいろな花」と解釈したい。俳句への意欲が表れている一句。(潔)

コンビニの豪華弁当花の宴      片岡このみ
とつくりにホットカルピス雛の宴   市原 久義
抜け出でし宴の外の朧月       飯田 誠子
蕗味噌や夫はぼそつと本音言ふ    安住 正子
梅の香を乱す鬢付け神の杜      新井 紀夫
龍宮の宴の泡か春の海        新井 洋子
浦町や宴待つ日の吊し雛       岡戸 林風
大寒の明るき朝の目玉焼       吉﨑 陽子
饗宴の昭和は遠し春の雪       松本ゆうき
大樟の傷の塞がる春日かな      霜田美智子
凍解くる大きな靴の専門店      沢渡  梢
疫病世の宴うたげよ梅の花      山本  潔

(清記順)

艸句会報:船橋(令和5年2月4日)

船橋句会(ギャラリー バルコ
ミニ吟行:柴又帝釈天、山本亭(近代和風建築の家と庭園)
兼題 折句こせま 例句/恋猫の世界を敵に回しても 大木あまり

印象句
冴返る玄関の間の薄明かり      沢渡  梢
【一口鑑賞】立春のこの日、船橋市のいつもの会場が使えないことから、東京・葛飾区の柴又帝釈天や山本亭へミニ吟行に出かけた。まだ寒さは厳しいものの、空の色や日の光、池の水などに春の気配を感じながら句作に取り組んだ。この句の「冴返る」は立春すぎの寒の戻り。季感をやや先取りしながら、玄関の間の寒気を感覚的にうまく捉えている。吟行大好きの作者によれば、薄明かりの下でじっと動かずにいて賜った一句。(潔)

黒鳥の背中の雛のまだ白く      並木 幸子
立春の光あつめてご神水       岡崎由美子
飴切りの音軽やかに春立ちぬ     新井 紀夫

 針谷栄子さんを悼み
侘助や名前をさがす投句欄      川原 美春
彫深き像や余寒の渡り廊       岡戸 林風
寅さんの笑顔の先は春うらら     小杉 邦男
此の世界詮無し戦松の芯       飯塚 とよ
春水の魚に遅れて動きけり      隣   安
光るもの皆光りたる春立つ日     新井 洋子
廻廊の水かげろふを抜けて春     山本  潔

(清記順)

艸句会報:連雀(令和5年2月1日)

連雀句会(三鷹駅前コミュニティセンター)
兼題「早・速」

印象句
早二月何もせぬまま出来ぬまま    中島 節子
【一口鑑賞】「二月」の最初の日に句会が重なった。寒さはまだまだ厳しくても「節分」「立春」が間近に迫っていることを思うと、まさに「早〜」が実感だろう。掲句は、具体的なことを何も言っていないが、「何もせぬまま出来ぬまま」との措辞の語呂の良さに共感した人が多かった。しかも「二月」は日数が短いから、うかうかしているとあっという間に終わってしまう。春が始まる最初の1カ月の感じをあくまで心象的に書きとめた一句。(潔)

速達の朱きゴム印梅二月       山本  潔
春光や壁にレシピの早見表      向田 紀子
すかんぽや近衛の祖父と寡婦の祖母  坪井 信子
余生いま前向きとなり春立ちぬ    春川 園子
居眠りと読書のあひだ日向ぼこ    松本ゆうき
菜畑に残る寒さや鍬を打つ      松成 英子
美しくジャムを煮てをり春隣     横山 靖子
日脚伸ぶ広告裏の走り書き      中島 節子
石段を下りて下りきり寒の寺     束田 央枝

(清記順)
プロフィール

艸俳句会

Author:艸俳句会
艸俳句会のWeb版句会報。『艸』(季刊誌)は2020年1月創刊。
「艸」は「草」の本字で、草冠の原形です。二本の草が並んで生えている様を示しており、草本植物の総称でもあります。俳句を愛する人には親しみやすい響きを持った言葉です。

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