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艸句会報:かつしか(令和5年8月27日)

かつしか句会(亀有地区センター)
兼題「朝顔」or折句「あなや」
       例句 あさがほや奈落のふちのやはらかく 正木ゆう子

印象句
まきひげの力尽きたる日の盛     霜田美智子
秋の声地震の備へも休みなし     伊藤 けい

【一口鑑賞】霜田さんの句。上五で怪しい髭男を想像した人もいたようだが、「まきひげ」は植物の茎や葉の一部が変形して細長い蔓になり、他のものに巻きつくようになったもの。葡萄や糸瓜、朝顔などに見られる。記録的な猛暑で植物が元気をなくしている様子を巧みに描写した。「日の盛」が晩夏の季語。けいさんの句。9月1日の関東大震災100年を前に、地震(なゐ)への備えを欠かさない作者。「秋の声」に震災の被害者への思いも込められているのだろう。折句ながら時宜にかなう一句に仕上がった。(潔)

おーい雲よ秋空ほはり何処へ行く   五十嵐愛子
娘の描くシャッターアート大暑の日  霜田美智子
朝顔や戦なき世の種が欲し      山本  潔
蟬落ちて大往生や天へ四肢      笛木千恵子
あさがほや叔父の形見の蓄音機    近藤 文子
ピーマンの肉詰め旨し夕御膳     三尾 宣子
着もしない服にアイロン終戦日    片岡このみ
放牧の羊遥かに鰯雲         新井 洋子
抗ひて蔓の行方や牽牛花       新井 紀夫
エアコンに預けしいのち処暑の朝   伊藤 けい
腰痛の漸く癒えて涼新た       西川 芳子
鳳仙花母の小言の懐かしき      高橋美智子
傍らに藤沢周平蟬しぐれ       小野寺 翠
秋の野に鳴らす熊よけ山日和     佐治 彰子
力闘の球児に見入り秋暑し      西村 文華

(清記順)
※次回(9月24日)の兼題「月」一切

艸句会報:東陽(令和5年8月26日)

東陽句会(江東区産業会館)
兼題 折句「はあし」
   例句 はからずも雨の蘇州の新豆腐 加藤楸邨

印象句
初秋や浅間山の煙白々と       新井 紀夫
不安げに口浸す孫山清水       関山 雄一

【一口鑑賞】紀夫さんの句。浅間山は長野、群馬両県の境にまたがる活火山。標高2568㍍。小諸馬子唄に「小諸出て見りゃ 浅間の山に 今朝も三筋の 煙立つ」とうたわれる通り、噴煙のたなびく美しい姿が人々を魅了してきた。作者にとっては故郷の山。折句ながら、無理なく17音に収まっている。雄一さんの句は、山登りでの一場面。現代においては生水を口にする機会は滅多にないから、お孫さんにとっては貴重な体験だろう。清らかに澄んだ山の水であっても不安そうに口にする様子が目に浮かぶ。作者はこの日が句会初体験。(潔)

葬送の列に一声時鳥         関山 雄一
芝居小屋へそつと抜け出す秋遍路   中川 照子
一雨がほしいと残暑見舞ひかな    飯田 誠子
さざ波の襞きららかに処暑の朝    中島 節子
霊園に空地をちこち飛蝗とぶ     向田 紀子
八月の雨に濡れつゝ思案橋      山本  潔
北岳に厚き雲あり柿の秋       新井 紀夫
はつかなる雨粒宿し秋海棠      岡崎由美子
葉の先へ蟻のぼりゆく静けさよ    堤 やすこ
カステラの底のざらめや秋日濃し   新井 洋子
背徳の愛は甘いか死人花       松本ゆうき
晩学の歩みは遅し新松子       岡戸 林風
敗戦日兄の遺骨てふ白き石      安住 正子
青芝に白きボールや遠榛名山     斎田 文子

(清記順)
※次回(9月23日)の兼題は折句「さけつ」
 例句 秋刀魚焼く煙の中の妻を見に 山口誓子

艸句会報:すみだ(令和5年8月23日)

すみだ句会(すみだ産業会館)
兼題「数」

印象句
ありなしの風を肌身に処暑の句座   岡戸 林風
色鳥や皿数多き宿の膳        岡崎由美子

【一口鑑賞】林風さんの句。この日はまさに「処暑」。二十四節気の一つで、厳しい暑さの峠を越した頃となるが、今年のように記録的な暑さが続くなかにあっては実感しづらい。それでも作者は「ありなしの風」のなかに「処暑」を見出して句座に臨んだのである。「俳句は季題の詩」と思わせてくれる一句。由美子さんの句は兼題「数」を巧みに詠み込んだ。「色鳥」は主に秋に渡ってくる色の美しい小鳥たち。色々な鳥がやって来る宿での豊かな食事のひと時を楽しんでいる様子が目に浮かぶ。(潔)

数ならぬ身とは思へど草の花     岡戸 林風
数珠玉の囁くやうな夕堤       大浦 弘子
もう限界ありつたけの扇風機     根本恵美子
薬草湯心ゆくまで夜の秋       髙橋 郁子
数日はお酒断ちます秋彼岸      松本ゆうき
ぷつくらと蕾の桔梗夢ひらけ     江澤 晶子
揺り椅子にしばし微睡む秋の昼    長澤 充子
背伸びして甕覗く猫夕涼し      岡崎由美子
風船葛けさも数へる小さき指     内藤和香子
朝の渚素足に若さ戻る波       貝塚 光子
数式に埋まる黒板秋暑し       山本  潔
名月や数へ九十で逝きし母      福岡 弘子

(清記順)
※次回(9月27日)の兼題は「恵」

艸句会報:船橋(令和5年8月5日)

船橋句会(船橋市中央公民館)
兼題「深」

印象句
深海の塩の浴剤夜の秋        沢渡  梢
深海魚見たくはないか夏の空     川原 美春

【一口感想】梢さんの句。「深海の塩」は水深200メートルより深いところにある海洋深層水から採れた塩。ミネラルが豊富で美容や健康にも良いとされ、さまざまな商品が開発されている。入浴剤を使えば、猛暑で疲れた体を休めてくれそうだ。「夜の秋」という晩夏の季語が巧みで、秋を探る気分が伝わってくる。美春さんの句。「深海魚」にとっては余計なお世話かもしれないが、「夏の空」を「見たくはないか」という問い掛けに作者のやさしさが感じられる。ユーモラスな一句。(潔)

夕端居空気の読める猫とゐて     岡戸 林風
赤のまま夕陽の中に病む姉と     並木 幸子
教会の椅子の硬さや秋隣       沢渡  梢
青柿の青い音して落ちにけり     飯塚 とよ
行合の空の深さよ百日紅       新井 洋子
咲ききつて駅北口の百日紅      小杉 邦男
寝不足の目深にかぶる夏帽子     川原 美春
朝顔に夜の名残りの湿りかな     岡崎由美子
万緑や三国峠の闇深く        石田 政江
「キンカン」の残る数滴夏終る    新井 紀夫
秋立つや胃の腑に深く澄まし汁    山本  潔
部活終へ皆で焼きそば大夕焼     三宅のり子

(清記順)
※次回(9月2日)の兼題は「残」
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艸俳句会

Author:艸俳句会
艸俳句会のWeb版句会報。『艸』(季刊誌)は2020年1月創刊。
「艸」は「草」の本字で、草冠の原形です。二本の草が並んで生えている様を示しており、草本植物の総称でもあります。俳句を愛する人には親しみやすい響きを持った言葉です。

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