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艸句会報:東陽(令和5年12月23日)

東陽句会(江東区産業会館)
兼題 折句「かてか」
例句 寒昴天のいちばん上の座に 山口誓子

印象句
風に鳴るテントを灯し飾売      岡崎由美子
牡蠣割女手は絶え間なく殻投げて   中川 照子

【一口鑑賞】「艸」にとってはこの日が2023年の納め句座。由美子さんの句は「飾売」が歳末の季語。社寺の境内で正月用の注連飾りなどを売るテントが目に浮かぶ。読み手は「風に鳴る」で聴覚を、「灯し」で視覚を刺激される。17音のなかに二つ以上の感覚を盛り込むと散漫になりがちだが、この句はバランスがよく、巧みな折句に仕上がった。照子さんの句は「牡蠣割女」を詠んで臨場感のある折句になっている。手の動きにピタリと焦点が合っており、牡蠣を剥く女性の様子が浮かんでくる。(潔)

行く年を乗せて最終電車行く     山本  潔
数へ日や転勤の子の帰る頃      新井 紀夫
いくさなき世は来ぬものか兎飼ふ   松本ゆうき
寒風やお台場に立つ女神像      斎田 文子
悴みし手をさすりつつ粥すする    岡戸 林風
篝火を手に手に集ふ神迎え      中川 照子
からすみや鉄瓶鳴りて燗の酒     関山 雄一
ぽつねんと父の勲章開戦日      岡崎由美子
母さんの手袋今も傍らに       沢渡  梢
年の瀬の鍵の束鳴る警備員      新井 洋子
蔦枯れて鳥歩み入る歩み出る     堤 やすこ
張り裂けんばかりの鰤の糶られをり  安住 正子
寒晴やティールームより滑走路    中島 節子
地下鉄のあまたの出口日の短か    飯田 誠子
見るだけのオランダ坂や初時雨    向田 紀子

(清記順)
※次回(2024年1月27日)の兼題は折句「はおと」
 例句 春を待つおなじこころに鳥けもの 桂 信子

艸句会報:すみだ(令和5年12月20日)

すみだ句会(すみだ産業会館)
兼題「風」

印象句
路地の風真つすぐに来る寒さかな   内藤和香子
迷ひなくオレンジ色の日記買ふ    長澤 充子

【一口鑑賞】和香子さんの句。暖冬とはいえ、師走も半ばを過ぎると急に寒さが厳しくなってきた。この日の兼題「風」では先輩風、風船ガムなどの“変化球”も出てきたが、この句は風とストレートに向き合った。路地を吹き抜ける風を「真つすぐに来る寒さ」と捉えたところがお見事。充子さんの句。日記を買うことも大事な年用意の一つ。暗い出来事の多い世の中だから、せめて日記帳ぐらいは気持ちが明るくなるものを選ぼうと思ったのだろう。大好きな「オレンジ色」のそれを見つけた時の気分が伝わってくる。(潔)

石蕗咲くや下駄をつつかけ宿の庭   江澤 晶子
冬波や一鳶高く風岬         髙橋 郁子
先輩風吹かす友から風邪薬      大浦 弘子
小春風サップ過ぎゆく小名木川    貝塚 光子
家路急く頬に冷たき夜の風      長澤 充子
風船ガム膨らます頬冬うらら     岡崎由美子
好きなこと続ける余生石蕗の花    福岡 弘子
風水の猫の置物冬座敷        山本  潔
駅裏の飲み屋横丁花八手       内藤和香子
海鼠とて天界仰ぎたきこころ     岡戸 林風
別荘の暖炉に話尽きぬ夜       根本恵美子
人の世はいつまで続く冬銀河     松本ゆうき

(清記順)
※次回(2024年1月24日)の兼題「光」

艸句会報:かつしか(令和5年12月17日)

かつしか句会(亀有地区センター)
兼題「日記」

印象句
無念さの滲む日のあり古日記     新井 紀夫
書き出しは決意の楷書初日記     笛木千恵子

【一口鑑賞】紀夫さんの句。年末が近づき、残りのページが少なくなった日記帳が「古日記」。パラパラ読み返しているうちに、1年という時の流れが貴重な日々の積み重ねであったことに気づく。地元・亀有の地域振興活動にも熱心に取り組んでいる作者。日々の出来事をこまめに記しているのだろう。「無念さの滲む日」に詩情がこもる。千恵子さんの句は新年を先取りしての「初日記」。今から何やら胸に秘める思いがあるのだろう。「決意の楷書」に気合が感じられる。(潔)

へそくりの大方ばれて懐手      山本  潔
カシミアの父のマフラー薄くなり   西村 文華
旅のこと振り返りつつ日記果つ    五十嵐愛子
大掃除あしたに伸ばし暮れにけり   小野寺 翠
ただ狂へ一期は夢よ返り花      千葉 静江
水洟の若き庭師の語る夢       新井 紀夫
ふぐ刺しをざくりと攫ひ諭さるる   新井 洋子
喜びも悲しみもあり日記果つ     西川 芳子
イヤリング揺れて聖夜の待ち合はせ  笛木千恵子
出兵の亡父を知る人開戦日      霜田美智子
添へられし手の温もりもクリスマス  伊藤 けい
書くことは四方山話日記買ふ     高橋美智子
庭の木の枝を落とすも冬支度     三尾 宣子
無造作に髪を束ねて煤払       片岡このみ
売られゆく牛と目の合ふ十二月    佐治 彰子
埋火や煮豆ほどよき香り立ち     近藤 文子

(清記順)
※次回(2024年1月28日)の兼題「飾」

艸句会報:若草(令和5年12月9日)

若草句会(俳句文学館)
兼題「石」 席題「白菜」

印象句
鐘冴ゆる修道院の石の門       沢渡  梢
休戦は今夜限りか寒昴        市原 久義

【一口鑑賞】梢さんの句。「鐘冴ゆる」は真冬の寒さを感覚的に示す季語「鐘氷る」の副題。兼題「石」から発想された修道院は、国内ではなく海外の歴史的にも由緒ある建築物を思わせる。万物が凍りつくような寒気のなか、不意に鳴り始めた鐘の音に耳を澄ませている作者。その時の感動をシンプルに書き留めた。下五に置いた「石の門」が揺るがない。久義さんの句。パレスチナ自治区ガザにおけるイスラエルとハマスの紛争を憂慮している作者。休戦継続の願いも虚しく、12月に入ると戦闘が再開された。その前夜の気持ちを「寒昴」に託した一句。(潔)

寒柝の音の淋しき石鼎忌       岡戸 林風
荒海の崖を明るく石蕗の花      霜田美智子
手回しの鉛筆削り虎落笛       吉﨑 陽子
石床を舐むる如くに冬の川      市原 久義
大雪や石窯で焼くハンバーグ     山本  潔
水を堰き石に堰かるる枯落葉     安住 正子
読む意欲だけを支へに漱石忌     松本ゆうき
石畳残る路地裏冬ざるる       沢渡  梢
白菜に塩振る手つき母に似て     片岡このみ
どこまでも空澄みわたる冬桜     飯田 誠子
朝日差す銀杏並木や漱石忌      石田 政江
銀杏散る上人塚の小暗がり      新井 紀夫
泣き竜の声のかするる寒さかな    新井 洋子

(清記順)
※次回(2024年1月13日)の兼題「餅」

艸句会報:連雀(令和5年12月6日)

連雀句会(三鷹駅前コミュニティセンター)
兼題「使われなくなった物」

印象句
座りよき父の胡座や長火鉢       束田 央枝
何事もおきぬ幸せ小春かな       横山 靖子

【一口鑑賞】央枝さんの句。「火鉢」が一般的に暖房器具として使われていたのは、昭和30年代頃までだろうか。現代では使われなくなった物の代表格の一つと言っていいが、骨董品としては人気があるらしい。「長火鉢」から子供の頃を回想している作者。「座りよき父の胡座」から優しい父親像が浮かんでくる。靖子さんの句。「何事もおきぬ」とは身辺の限られた範囲を見てのことだろう。日常生活のなかのささやかな平穏こそが幸せと思えるのは、さまざまな苦労や心配事を重ねてきた裏返しかもしれない。「小春かな」に詩情が感じられる。(潔)

健やかに老いてホームの三十日蕎麦   坪井 信子
冬はじめ池田澄子が夢の中       松本ゆうき
落葉焚むかし使ひし火吹竹       飯田 誠子
湯豆腐や娘に支へられ日々過ぎて    春川 園子
重ね着やぶらさがり器はハンガーに   中島 節子
家中のカーテン洗ふ年の暮       横山 靖子
分度器の目盛うすれし寒オリオン    山本  潔
刃当りの小気味よろしき深谷葱     向田 紀子
水かげろふの閃きほのと冬紅葉     束田 央枝

(清記順)
※次回(2024年1月10日)の兼題「漢数字」の詠み込み

艸句会報:船橋(令和5年12月2日)

船橋句会(船橋市中央公民館)
兼題「歌」

印象句
薄紅のリップクリーム霜の朝      岡崎由美子
あかときの素振り百回息白し      三宅のり子

【一口鑑賞】12月に入り、朝晩の冷え込みが厳しくなってきた。由美子さんの句は、霜が降りた朝の寒さが体感的に伝わってくる上、冬晴れの青い空が目に浮かぶ。そんな情景のなかに作者が提示した物は「薄紅のリップクリーム」。ほんのりとしたピンク色の清潔感が「霜の朝」の身の引き締まる感じとイメージ的に響き合い、詩情を生んでいる。のり子さんの句。夜明け前に「素振り」をしているのは誰だろう。顔見知りの野球少年か、あるいは若き日にテニスか何かをしていた作者自身か…。季語「息白し」が寒さのなかで躍動している人の姿を浮かび上がらせる。(潔)

シャンソンを歌ふマダムの革ジャンパー 並木 幸子
冬すみれ少女小さく歌ひ過ぐ      岡崎由美子
病院はどこも盛況十二月        川原 美春
取り寄せのおせちに迷ふ十二月     新井 洋子
三味線の撥に力や石蕗の花       小杉 邦男
我が部屋に世界のリゾート新暦     平野 廸彦
母の忌の近き出窓の室の花       山本  潔
コーラスの洩れくる寺院銀杏散る    新井 紀夫
やすかれといわさきちひろの初暦    飯塚 とよ
百年の漆喰師走の長屋門        三宅のり子
かな文字の連綿体や初しぐれ      岡戸 林風
丁度いい寂しさ丁度いい時雨      沢渡  梢

(清記順)
※次回(2024年1月6日)の兼題「開」
プロフィール

艸俳句会

Author:艸俳句会
艸俳句会のWeb版句会報。『艸』(季刊誌)は2020年1月創刊。
「艸」は「草」の本字で、草冠の原形です。二本の草が並んで生えている様を示しており、草本植物の総称でもあります。俳句を愛する人には親しみやすい響きを持った言葉です。

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