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艸句会報:かつしか(令和6年1月28日)

かつしか句会(亀有地区センター)
兼題「飾」

印象句
去年今年朱肉浸みたる黄楊の印    霜田美智子
離れ住む子ら来て過ごす三が日    千葉 静江

【一口鑑賞】美智子さんの句。大晦日の夜半が過ぎると、新年を迎えて元旦になる。去年を回顧し、今年への思いを抱くのが「去年今年」。掲句は、黄楊の印の朱肉の浸みを眺めながら、高浜虚子の「貫く棒」の句に思いを寄せているのかもしれない。それとは対照的な判子という“短い棒”を提示したところにユーモアのセンスが感じられる。静江さんの句。淡々と詠んでいるが、「三が日」という季語の使い方が効果的だ。ふだんは独り暮らしでも、正月ならではの家族との交流のひとときに元気づけられたのだろう。(潔)

大寒や芳書の文字黒々と       近藤 文子
冬座敷父の選びし床飾り       佐治 彰子
昨日まで賑やかなりし炬燵部屋    伊藤 けい
水洟や味噌汁熱き朝ごはん      五十嵐愛子
寒桜日課五千歩続きをり       笛木千恵子
辻店の鳶職けふは飾売り       小野寺 翠
梅の香の余韻ありけり闇の中     小森 貞子
葛飾の魅力の一句初句会       西川 芳子
ともかくも家族みんなの初写真    西村 文華
雲水にかうべを垂れて風邪封じ    千葉 静江
三寒を籠もり四温の旅支度      片岡このみ
乳匂ふ子も出す両手お年玉      霜田美智子
電飾の色を路面に冬の雨       山本  潔
冬旱空井戸に声落しけり       新井 洋子
裸木の続く並木のバス通り      三尾 宣子
葛飾の都市化の路地の花大根     新井 紀夫

(清記順)
※次回(2月25日)の兼題「森」

艸句会報:東陽(令和6年1月27日)

東陽句会(江東区産業会館)
兼題 折句「はおと」
例句 春を待つおなじところに鳥けもの 桂信子

印象句
人参に馬の頷く二度三度       新井 洋子
寒日和東京タワーの赤親し      堤 やすこ

【一口鑑賞】洋子さんの句。「人参」には江戸末期に中国を経て渡来した東洋系と明治以降に入ってきた西洋系がある。冬場に旬を迎えるのは東洋系で、歳時記でも冬の季語になっている。この句は、牧場で餌をやるシーンだろうか。馬も旬の味わいを知っているかのような仕草が目に浮かぶ。やすこさんの句。東京タワーは、高さこそスカイツリーに抜かれたものの、東京のランドマークとしての存在感は今も変わらない。冬の抜けるような青空に向かって聳え立つ赤と白に塗られた東京タワーへの親しみが込められている。(潔)

机上のみ照らす寒燈鬼房忌      岡崎由美子
白鳥の音なく翔つを遠くして     岡戸 林風
寒の川一枚板の水鏡         斎田 文子
機織の音とだえたる年行く夜     中川 照子
バス停に足踏みの人冬深し      向田 紀子
濁り湯のいよいよ白し母亡き冬    伊藤  径
はらからと女正月遠き富士      中島 節子
日脚伸ぶ結構当たる腹時計      新井 紀夫
耳付の壺に届くや霜の声       新井 洋子
箱根駅伝応援の人十重二十重     堤 やすこ
底抜けの空や鳶の初飛翔       安住 正子
寒鯉の寄り来る橋の荒筵       飯田 誠子
箸を置く音つつましく年の酒     山本  潔

(清記順)
※次回(2月24日)の兼題は折句「あいう」
 例句 青空のいつみえそめし梅見かな 久保田万太郎

艸句会報:すみだ(令和6年1月24日)

すみだ句会(すみだ産業会館)
兼題「光」

印象句
鷽替や嘘のやうなる鷽のこゑ     松本ゆうき
神宮の杜の狸とにらめつこ      貝塚 光子

【一口鑑賞】ゆうきさんの句。「鷽替」は福岡県の太宰府天満宮で1月7日夜に催される神事で、新年の季語。東京では亀戸天神で24、25日に行われる。木彫りの小さな「鷽」を交換することで、前年の悪い出来事を「嘘」に変えてしまおうというもの。句会前に亀戸天神へお詣りしてきた作者。鷽の鳴き声が「ウソ」と聞こえることを踏まえて軽快に詠んだ。光子さんの句。「狸」が冬の季語。作者は、明治神宮の森で実際に狸に遭遇したことがあるそうだ。じっと見つめ合っている狸と人間の姿と軽い緊張感が伝わってくる。(潔)

音たてて汲めば若水光りけり     内藤和香子
大寒や沙緻師の句碑に想い馳せ    長澤 充子
七草粥湯気の向かうの母の唄     大浦 弘子
久女忌のツンと匂へる除光液     山本  潔
濠の水光れば春も遠からじ      岡戸 林風
春の海漕ぎ出す勇気私にも      根本恵美子
聞き上手のロボット欲しき老の春   福岡 弘子
平積みの古書に日差しや年新た    江澤 晶子
蛍光灯ひとつの駅舎雪催ひ      岡崎由美子
御神籤で覗く余生や初詣       髙橋 郁子

(清記順)
※次回(2月28日)の兼題「二月」

艸句会報:若草(令和6年1月13日)

若草句会(俳句文学館)
兼題「餅」 席題「師」

印象句
凍空や吾が足すくみ背負はるる    吉﨑 陽子
雪催涙まじりの粥啜る        石田 政江

【一口鑑賞】陽子さんは富山県滑川市在住の90歳。元日の能登地震で避難を余儀なくされた。ビル4階にある避難所への階段を登れず呆然としていると、10代の男性が背負って連れて行ってくれたそうだ。掲句は、実体験に裏付けられたリアリティーがある。政江さんの句。震災のことを思いながら、七日粥を啜っているのだろう。石川県羽咋市には今は亡き舘岡沙緻先生の句碑もあり、作者は何度も足を運んでいる。馴染みのある能登の惨状を見ると、涙が止まらない。「雪催」には2次被害を心配する気持ちも込められている。(潔)

あすがある明日があるさ初句会    松本ゆうき
 能登半島地震
師の句碑は無事との知らせ寒の月   安住 正子
落雁に四季の彩り女正月       新井 洋子
硝子越し仕草で交はす御慶かな    市原 久義
餅花や銀座老舗の小間物屋      飯田 誠子
頬かぶり焼跡に立つ朝市女      新井 紀夫
地震の夜の凛と生きよと寒椿     吉﨑 陽子
松飾り取れて何でもない一日     沢渡  梢
焼葱や風音を聴く夕まぐれ      山本  潔
降る雪や震へる能登の黒瓦      霜田美智子
包丁を研がず俎始かな        片岡このみ
飼猫が部屋を覗きに冬籠り      岡戸 林風
元日の地震に傾く恩師の碑      石田 政江

(清記順)
※次回(2月10日)の兼題はテーマ「天気」

艸句会報:連雀(令和6年1月10日)

連雀句会(三鷹駅前コミュニティセンター)
兼題「漢数字」

印象句
初鶏や阿蘇の大地に鳴き交はす    矢野くにこ
 悼 弥子さん
水仙のやうな笑顔を偲びをり     坪井 信子
【一口鑑賞】くにこさんの句。年末年始に故郷の熊本でゆっくり過ごしてこられた作者。卒寿を過ぎているが作句意欲は旺盛で、お孫さんたちからは「絶対に俳句をやめないで!」と言われているそうだ。掲句の「初鶏」は元日の明け方に鳴く鶏。阿蘇の雄大な景色のなかに響く鶏の声にめでたさが感じられる。信子さんの句。艸創刊同人でもあった加藤弥子さんは昨年9月17日に93歳でお亡くなりになった。弥子さんとはいつも一緒に句会に通い、席も隣り合っていた作者。「水仙のやうな笑顔」に哀悼の気持ちがよく表れている。(潔)

風と来る正月の夜の電車音      坪井 信子
明日あるを励みに富士の寒茜     向田 紀子
縫初の針目調ふ手の動き       横山 靖子
鳥のこゑ明るく枯れを深めけり    矢野くにこ
人日やラーメン鉢の赤き龍      山本  潔
初詣祈るは一つ唯ひとつ       春川 園子
能登地震「おっとろっしゃ」の三が日 松本ゆうき
寒梅や園に遺りし薬医門       中島 節子
野火止の流れ鎮もる寒の内      束田 央枝
賀状来る癖ある文字の変りなく    飯田 誠子

(清記順)
※次回(2月7日)の兼題「上・下」

艸句会報:船橋(令和6年1月6日)

船橋句会(船橋市勤労市民センター)
兼題「開」、ミニ吟行「船橋大神宮」

印象句
真つ新な句帳を開き初句会      岡戸 林風
海老川の流れの暗き寒の入      隣   安

【一口鑑賞】2024年も「艸」は船橋句会でスタート。林風さんの句は「真つ新な句帳」に意気込みが表れている。昨年、米寿を機に句集『彼我』を上梓した作者にとって、今年は新たな出発点と言っていい。敬愛する富安風生が<生くることやうやく楽し老の春>と詠んだのは80歳。その後は「美しい俳句」の完成を目指した。隣安さんの句。この日はまさに「寒の入」。船橋駅から大神宮へ向かう途中の海老川にはオオバンが数羽泳いでいたが、その辺りは日陰でひっそりとしていた。この句は、時候と結びつけて川の様子を的確に捉えている。吟行の句材は目的地へ行くまでにいろいろあることを教えてくれる一句。(潔)

初句座へ長寿の橋を渡りけり     山本  潔
初詣なまりし体伸ばしけり      平野 廸彦
初みくじ読み合ふ夫婦大神宮     飯塚 とよ
寒柝の町会ごとの音色かな      新井 紀夫
去年今年時をこぼせる砂時計     新井 洋子
初空や海辺の街の開業医       沢渡  梢
一山に雅楽響きて淑気満つ      並木 幸子
鉢植の半額となる六日かな      隣   安
蔵を開け三十余年の飾臼       三宅のり子
初鳩や宮の高きに灯明台       岡戸 林風
野水仙そこから先は崖の径      川原 美春
初春の小鳥舞ひ飛ぶ灯明台      小杉 邦男

(清記順)
※次回(2月3日)の兼題「明」
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艸俳句会

Author:艸俳句会
艸俳句会のWeb版句会報。『艸』(季刊誌)は2020年1月創刊。
「艸」は「草」の本字で、草冠の原形です。二本の草が並んで生えている様を示しており、草本植物の総称でもあります。俳句を愛する人には親しみやすい響きを持った言葉です。

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