花暦句会報:20周年・沙緻忌の集い(平成30年5月6日)
花暦20周年・沙緻忌の集い句会(主婦会館プラザエフ「スイセンの間」)
【天】
はつ夏の波追ふ砂の光りけり 岡崎由美子
一口鑑賞 初夏の砂浜。打ち寄せた波が引いていく。寄せては返す波を作者はただじっと見つめている。光っているのは波だけではない、砂も光っている。砂は波にさらわれるのではなく、波を追っている。この句は「波追ふ砂」という把握が見事だ。単純写生にとどまらず、季語と響き合って軽い躍動感が生まれている。
【地】
薔薇ひらく刻のしづけさ地の祈り 加藤 弥子
一口鑑賞 早朝だろうか、作者は物音一つしない静けさの中にいる。今まさに薔薇が開くときだと感じながら、あることに気づく。それは薔薇が得体の知れない力によって咲こうとしているということ。それを「地の祈り」と言い止めたときに一句が成った。静けさは地の祈りであり、地の祈りによって薔薇は咲くのである。
【人】
幸せは手の鳴る方へチューリップ 坪井 信子
一口鑑賞 この句は「目隠し鬼」という子どもの遊びが下敷きになっている。同時に「幸せなら手をたたこう」という歌があるように、手をたたく行為に何か特別な意味を見いだしている。「幸せは手の鳴る方へやってくる」。そんなふうに思えた頃の象徴として「チューリップ」は作者の心にいつも咲いているのではないか。
【高点4句】
入院の幹事に届け花菜風 森永 則子
墨東に帰雁の空の残りけり 野村えつ子
読み返す師からの朱筆聖五月 吉崎 陽子
ジャム煮込む甘夏好きの師の忌来る 長澤 充子
【注目10句】
千年の時空を超えて百千鳥 市原 久義
大川の遠き橋見え風五月 岡戸 良一
竜天に鏝絵の竜は軒下に 松成 英子
丁寧に生くるは難く弥生尽 相澤 秋生
終章なく暦重ねてあたたかし 安住 正子
老桜の洞に木霊の闇のあり 新井 洋子
師の句碑に希望の灯り凍てつく手 石田 政江
奥能登の岬に仰ぐ遅桜 貝塚 光子
永代橋も勝どき橋も鳥ぐもり 堤 靖子
ひらがなに混じるカタカナ春の詩 廣田 健二
【天】
はつ夏の波追ふ砂の光りけり 岡崎由美子
一口鑑賞 初夏の砂浜。打ち寄せた波が引いていく。寄せては返す波を作者はただじっと見つめている。光っているのは波だけではない、砂も光っている。砂は波にさらわれるのではなく、波を追っている。この句は「波追ふ砂」という把握が見事だ。単純写生にとどまらず、季語と響き合って軽い躍動感が生まれている。
【地】
薔薇ひらく刻のしづけさ地の祈り 加藤 弥子
一口鑑賞 早朝だろうか、作者は物音一つしない静けさの中にいる。今まさに薔薇が開くときだと感じながら、あることに気づく。それは薔薇が得体の知れない力によって咲こうとしているということ。それを「地の祈り」と言い止めたときに一句が成った。静けさは地の祈りであり、地の祈りによって薔薇は咲くのである。
【人】
幸せは手の鳴る方へチューリップ 坪井 信子
一口鑑賞 この句は「目隠し鬼」という子どもの遊びが下敷きになっている。同時に「幸せなら手をたたこう」という歌があるように、手をたたく行為に何か特別な意味を見いだしている。「幸せは手の鳴る方へやってくる」。そんなふうに思えた頃の象徴として「チューリップ」は作者の心にいつも咲いているのではないか。
【高点4句】
入院の幹事に届け花菜風 森永 則子
墨東に帰雁の空の残りけり 野村えつ子
読み返す師からの朱筆聖五月 吉崎 陽子
ジャム煮込む甘夏好きの師の忌来る 長澤 充子
【注目10句】
千年の時空を超えて百千鳥 市原 久義
大川の遠き橋見え風五月 岡戸 良一
竜天に鏝絵の竜は軒下に 松成 英子
丁寧に生くるは難く弥生尽 相澤 秋生
終章なく暦重ねてあたたかし 安住 正子
老桜の洞に木霊の闇のあり 新井 洋子
師の句碑に希望の灯り凍てつく手 石田 政江
奥能登の岬に仰ぐ遅桜 貝塚 光子
永代橋も勝どき橋も鳥ぐもり 堤 靖子
ひらがなに混じるカタカナ春の詩 廣田 健二
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