花暦句会報:若草(平成30年10月13日)
若草句会(俳句文学館)
兼題「秋燈・秋灯」、席題「街」「音」
高点3句
人はみな灯に戻りゆく暮の秋 加藤 弥子
秋灯シフォンケーキの月の色 坪井 信子
美濃紙の墨を吸ひあぐ秋灯下 針谷 栄子
木々を打つ私雨も秋の音 山本 潔
「草花を詠むといいよね」庭は秋 石田 政江
秋の蜘蛛築山うらに通せん坊 森永 則子
ハロウィンの魔女東京の街を行く 岡戸 良一
底紅の紅にとどかぬ街の音 坪井 信子
瓢箪や娘は母に物申す 廣田 健二
秋霖やアズナブールの黒いシャツ 沢渡 梢
横文字の読めぬ墓碑銘こぼれ萩 飯田 誠子
立飲みのネクタイ緩め秋ともし 新井 洋子
パソコンの値百円いわし雲 松本ゆうき
赤とんぼ肩に手に君は何者 針谷 栄子
(清記順)
一口鑑賞「美濃紙の墨を吸ひあぐ秋灯下」〜栄子さんの句。兼題「秋灯」に対し、美濃紙という素材を持ってきたところが素晴らしい。美濃紙は岐阜県で奈良時代の頃から製造されている。伝統工芸品として知られ、その技法は重要無形文化財にも指定されている。澄みきった秋の灯に照らされた和紙に、たっぷりと墨を含んだ筆を置いた瞬間に墨が吸い込まれていく。和紙の質感とともに、墨の匂いもしてくるようだ。趣のある一句。「底紅の紅にとどかぬ街の音」〜信子さんの句。「底紅」は木槿のこと。赤紫や白などの花を咲かせる。中でも真っ白な花の底の部分が赤いものを底紅と呼ぶ。街から離れたお寺の境内や小さな公園、あるいは路地裏に咲く底紅だろうか。作者は赤い部分に視線を合わせながら、静寂の中にいる。席題「街」「音」の両方の文字を巧みに詠み込んだ。(潔)
兼題「秋燈・秋灯」、席題「街」「音」
高点3句
人はみな灯に戻りゆく暮の秋 加藤 弥子
秋灯シフォンケーキの月の色 坪井 信子
美濃紙の墨を吸ひあぐ秋灯下 針谷 栄子
木々を打つ私雨も秋の音 山本 潔
「草花を詠むといいよね」庭は秋 石田 政江
秋の蜘蛛築山うらに通せん坊 森永 則子
ハロウィンの魔女東京の街を行く 岡戸 良一
底紅の紅にとどかぬ街の音 坪井 信子
瓢箪や娘は母に物申す 廣田 健二
秋霖やアズナブールの黒いシャツ 沢渡 梢
横文字の読めぬ墓碑銘こぼれ萩 飯田 誠子
立飲みのネクタイ緩め秋ともし 新井 洋子
パソコンの値百円いわし雲 松本ゆうき
赤とんぼ肩に手に君は何者 針谷 栄子
(清記順)
一口鑑賞「美濃紙の墨を吸ひあぐ秋灯下」〜栄子さんの句。兼題「秋灯」に対し、美濃紙という素材を持ってきたところが素晴らしい。美濃紙は岐阜県で奈良時代の頃から製造されている。伝統工芸品として知られ、その技法は重要無形文化財にも指定されている。澄みきった秋の灯に照らされた和紙に、たっぷりと墨を含んだ筆を置いた瞬間に墨が吸い込まれていく。和紙の質感とともに、墨の匂いもしてくるようだ。趣のある一句。「底紅の紅にとどかぬ街の音」〜信子さんの句。「底紅」は木槿のこと。赤紫や白などの花を咲かせる。中でも真っ白な花の底の部分が赤いものを底紅と呼ぶ。街から離れたお寺の境内や小さな公園、あるいは路地裏に咲く底紅だろうか。作者は赤い部分に視線を合わせながら、静寂の中にいる。席題「街」「音」の両方の文字を巧みに詠み込んだ。(潔)
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