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花暦句会報:若草(平成30年11月10日)

若草句会(俳句文学館)
兼題「花八手」、席題「温」

高点5句
いい人の顔していつも温め酒    山本  潔
鮟鱇のすべてを愛でて吊るし切る  神戸 康夫
いく重にも竿ふやしつつ柿つるす  石田 政江
蹲踞の水音和らぐ石蕗日和     新井 洋子
丸刈りの男の子集まれ花八手    坪井 信子

とろろ汁山ひとつづつ暮れてゆき  加藤 弥子
ビル壁は冬夕焼のスクリーン    坪井 信子
出で立ちのいつもスマート焼秋刀魚 神戸 康夫
白薔薇に仄かな紅や冬温し     岡戸 良一
みちのくの空は今年も柿たわわ   廣田 健二
温泉に猿の親子や雪催       新井 洋子
母恋し古里恋しおけさ柿      石田 政江
霜月の小便小僧に朝が来る     森永 則子
居酒屋の暖簾めくれて神無月    山本  潔
通りまで屋台賑ふ三の酉      沢渡  梢
柵固き魚市場跡花八ツ手      飯田 誠子
裏庭に井戸ある記憶花八手     針谷 栄子

(清記順)

一口鑑賞鮟鱇のすべてを愛でて吊るし切る」〜康夫さんの句。ご存じ、鮟鱇は深海魚。頭が大きく押しつぶされたような形をしており、口が広い。身が柔らかく、俎板でさばくのは難しい。調理の際は鉤に口を掛けて吊るし切りにする。尾鰭、肝、胃、卵巣、皮、えら、身のどれも鍋にすると美味しい。作者は「鮟鱇のすべてを愛でて」と言うことにより、この独特の生き物への敬意を表している。吊るし切りを詠んだ句といえば加藤楸邨の「鮟鱇の骨まで凍ててぶちきらる」がすぐ頭に浮かぶ。「いく重にも竿ふやしつつ柿つるす」〜政江さんの句。自ら吊し柿を作っている。渋柿の蔕を残して皮をむき、縄に吊して干していく。なかなか根気のいる作業だ。それでも「いく重にも竿ふやしつつ」という措辞に作り手の喜びが感じられる。柿もたくさん獲れたのだろう。軒下に干柿が連なる景は風情がある。むいた皮も干して糠床に混ぜれば、漬物がほのかに甘くなるという。(潔)
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艸俳句会

Author:艸俳句会
艸俳句会のWeb版句会報。『艸』(季刊誌)は2020年1月創刊。
「艸」は「草」の本字で、草冠の原形です。二本の草が並んで生えている様を示しており、草本植物の総称でもあります。俳句を愛する人には親しみやすい響きを持った言葉です。

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