花暦句会報:若草(令和元年6月8日)
若草句会(中目黒会議室)
兼題「鰻」、席題「設」
高点3句
鰻重や苦手な祖母の親子丼 山本 潔
俎板に土用鰻のひとくねり 安住 正子
鰻裂く親爺の頬の刃物傷 新井 洋子
夏草に埋もるる人や畑仕事 廣田 健二
設計のミスか君んち黴の宿 松本ゆうき
街騒の抜け所なき梅雨の天 針谷 栄子
一雨すぎ房伸ばしをり青葡萄 石田 政江
色褪せし文学全集走り梅雨 岡戸 良一
空に書く艸(そうかう)の文字緑さす 新井 洋子
どくだみの花や日暮の切通し 飯田 誠子
設色す病院前の額の花 沢渡 梢
割箸は木曽の桧や冷さうめん 安住 正子
省エネの設定温度梅雨湿り 山本 潔
(清記順)
一口鑑賞「俎板に土用鰻のひとくねり」〜正子さんの句。俎板の鰻がひとくねりしたところを詠んだ。ただの鰻ではない。「土用鰻」である。江戸中期、本草学者の平賀源内が鰻屋に頼まれて「土用の丑の日、鰻の日。食すれば夏負けすることなし」と書いたことが評判を呼んだという話は今に伝わる。この句の鰻もひとくねりの後、見事にさばかれて「土用鰻」になる。「設計のミスか君んち黴の宿」〜ゆうきさんの句。句意は「設計ミスでしょうか、君の家を黴の宿にしてしまったね」ということのようだ。なかなか諧謔が利いているが、作者自身が黴に向かって親しく語りかけていると読んだらどうだろう。「設計ミスかなぁ、ここが君の宿りになったね」。梅雨時に繁殖する黴はうっとおしいが、友達だと思えば少しは気分も落ち着くのではないか。おおらかに鑑賞することで、俳句の楽しさが増す。(潔)
兼題「鰻」、席題「設」
高点3句
鰻重や苦手な祖母の親子丼 山本 潔
俎板に土用鰻のひとくねり 安住 正子
鰻裂く親爺の頬の刃物傷 新井 洋子
夏草に埋もるる人や畑仕事 廣田 健二
設計のミスか君んち黴の宿 松本ゆうき
街騒の抜け所なき梅雨の天 針谷 栄子
一雨すぎ房伸ばしをり青葡萄 石田 政江
色褪せし文学全集走り梅雨 岡戸 良一
空に書く艸(そうかう)の文字緑さす 新井 洋子
どくだみの花や日暮の切通し 飯田 誠子
設色す病院前の額の花 沢渡 梢
割箸は木曽の桧や冷さうめん 安住 正子
省エネの設定温度梅雨湿り 山本 潔
(清記順)
一口鑑賞「俎板に土用鰻のひとくねり」〜正子さんの句。俎板の鰻がひとくねりしたところを詠んだ。ただの鰻ではない。「土用鰻」である。江戸中期、本草学者の平賀源内が鰻屋に頼まれて「土用の丑の日、鰻の日。食すれば夏負けすることなし」と書いたことが評判を呼んだという話は今に伝わる。この句の鰻もひとくねりの後、見事にさばかれて「土用鰻」になる。「設計のミスか君んち黴の宿」〜ゆうきさんの句。句意は「設計ミスでしょうか、君の家を黴の宿にしてしまったね」ということのようだ。なかなか諧謔が利いているが、作者自身が黴に向かって親しく語りかけていると読んだらどうだろう。「設計ミスかなぁ、ここが君の宿りになったね」。梅雨時に繁殖する黴はうっとおしいが、友達だと思えば少しは気分も落ち着くのではないか。おおらかに鑑賞することで、俳句の楽しさが増す。(潔)
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