艸句会報:若草(令和元年11月9日)
若草句会(俳句文学館)
兼題「立冬、冬に入る」、席題「豆」
高点3句
伝言を預かるやうに冬に入る 羽生 隣安
石榴裂けて明日への不安なくはなし 加藤 弥子
冬浅し耳朶に口笛ほどの風 坪井 信子
身の丈の幸を諾ひ納豆汁 安住 正子
千姫の眠る御廟や初紅葉 石田 政江
短日の地下街点す赤提灯 岡戸 良一
薄紅葉歩く速さの豆電車 新井 洋子
パンに塗るバターの固き今朝の冬 市原 久義
公園の寂しきところ石蕗の花 羽生 隣安
冬に入るアンモナイトと鮫の骨 山本 潔
この町の人にも慣れて烏瓜 坪井 信子
闇鍋に我が身の相も煮ゆるかな 飯田 誠子
落ちてより増す大きさの一葉かな 針谷 栄子
蓑虫や捨てきし夢の二つ三つ 加藤 弥子
仲直りすることもなく冬に入る 沢渡 梢
団栗や天文学者のポケットに 松本ゆうき
(清記順)
一口鑑賞「伝言を預かるやうに冬に入る」〜隣安さんの句。暦の上では1年の中で最も厳しい季節の入口に当たるのが立冬だ。「冬に入る」「今朝の冬」などとも言う。東京は朝晩冷え込むようになったが、日中はさほどでもない。とはいえ、立冬と言われれば、そろそろ寒さへの準備をしなければと思う。「伝言を預かるやうに」とはまさにこんな感覚だろうか。寒さへ向かう人間心理を巧みに捉えた一句。「パンに塗るバターの固き今朝の冬」〜久義さんの句も立冬を迎えた感覚を上手く詠んでいる。パンにバターを塗るのは立冬の朝に限ったことではない。しかし立春、立夏、立秋とは異なり、冬の到来には緊張感が伴う。それが「パンに塗るバターの固き」なのである。(潔)
兼題「立冬、冬に入る」、席題「豆」
高点3句
伝言を預かるやうに冬に入る 羽生 隣安
石榴裂けて明日への不安なくはなし 加藤 弥子
冬浅し耳朶に口笛ほどの風 坪井 信子
身の丈の幸を諾ひ納豆汁 安住 正子
千姫の眠る御廟や初紅葉 石田 政江
短日の地下街点す赤提灯 岡戸 良一
薄紅葉歩く速さの豆電車 新井 洋子
パンに塗るバターの固き今朝の冬 市原 久義
公園の寂しきところ石蕗の花 羽生 隣安
冬に入るアンモナイトと鮫の骨 山本 潔
この町の人にも慣れて烏瓜 坪井 信子
闇鍋に我が身の相も煮ゆるかな 飯田 誠子
落ちてより増す大きさの一葉かな 針谷 栄子
蓑虫や捨てきし夢の二つ三つ 加藤 弥子
仲直りすることもなく冬に入る 沢渡 梢
団栗や天文学者のポケットに 松本ゆうき
(清記順)
一口鑑賞「伝言を預かるやうに冬に入る」〜隣安さんの句。暦の上では1年の中で最も厳しい季節の入口に当たるのが立冬だ。「冬に入る」「今朝の冬」などとも言う。東京は朝晩冷え込むようになったが、日中はさほどでもない。とはいえ、立冬と言われれば、そろそろ寒さへの準備をしなければと思う。「伝言を預かるやうに」とはまさにこんな感覚だろうか。寒さへ向かう人間心理を巧みに捉えた一句。「パンに塗るバターの固き今朝の冬」〜久義さんの句も立冬を迎えた感覚を上手く詠んでいる。パンにバターを塗るのは立冬の朝に限ったことではない。しかし立春、立夏、立秋とは異なり、冬の到来には緊張感が伴う。それが「パンに塗るバターの固き」なのである。(潔)
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