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艸句会報:東陽(令和元年12月28日)

東陽句会(江東区産業会館)
席題「牡蠣」「日」

高点2句
地球儀を回し世界の煤払ふ       野村えつ子
旅二日終へて師走の割烹着       安住 正子

雪吊りの日がなハープを奏でをり    中川 照子
創刊の一誌机上に年逝かす       岡戸 林風
煤逃げのやうな句会でありにけり    新井 洋子
忙しさを笑顔で愚痴る牡蠣割女     安住 正子
冬の雨蛍光色の作業服         堤 やすこ
落葉してなほ大木でありにけり     野村えつ子
この水は奥秩父から冬泉        山本  潔
被災地の入江を灯す牡蠣の小屋     貝塚 光子
瀬戸内の牡蠣筏縫ふ観光船       斎田 文子
拡張の駅は迷路や大晦日        長澤 充子
土佐つぽとつつく牡蠣鍋黒き鍋     松本ゆうき
鶴折りて指のリハビリ冬の夜      飯田 誠子

(清記順)

一口鑑賞地球儀を回し世界の煤払ふ」えつ子さんの句。「煤払」は新年を迎えるために、家屋や調度の煤を払って清める風習。昔は正月の準備に取り掛かる12月13日に年中行事の一つとして行われた。今日では年末の大掃除ぐらいにしか思われていないかもしれない。この句は、地球儀の埃を払ったことを詠んだだけなのだが、「世界の煤払ふ」という措辞によって鑑賞者の間では最近の世界情勢にまで話は及んだ。言葉の喚起力は時として作者の意図を大きく超える。「煤逃げのやうな句会でありにけり」洋子さんの句。こちらは地球儀の煤を払うこともなく、ご主人に床のワックスがけを任せ、自分は句会に逃れてきたのである。「煤逃げのやうな」という比喩にちょっと後ろめたい気持ちも込められているのではないか。(潔)
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艸俳句会

Author:艸俳句会
艸俳句会のWeb版句会報。『艸』(季刊誌)は2020年1月創刊。
「艸」は「草」の本字で、草冠の原形です。二本の草が並んで生えている様を示しており、草本植物の総称でもあります。俳句を愛する人には親しみやすい響きを持った言葉です。

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