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艸句会報:若草(令和2年6月13日)

若草句会(亀有 ギャラリー・バルコ)
兼題「植田」

高点3句
火の国の水をゆたかに植田かな    岡戸 林風
水槽の海月のワルツ無伴奏      飯田 誠子
月を狩る射程の位置に蜘蛛の網    針谷 栄子

梅雨に入る神社の中の洋菓子店    沢渡  梢
成田線窓一杯の植田かな       新井 紀夫
竹林の腐草螢となる闇夜       山本  潔
大南風妻の言葉に逆らはず      岡戸 林風
大西日太宰の墓地に及びけり     坪井 信子
ほうたるの骸は闇の色となる     針谷 栄子
世の中を知るか知らぬか梅実る    石田 政江
青梅雨や会釈を交はすビニール傘   市原 久義
明易や起きて原稿直す日々      松本ゆうき
筑波嶺を映し植田のしじら波     安住 正子
藍の濃き老舗の家紋麻暖簾      飯田 誠子
有線のつなぐ一村植田澄む      新井 洋子

(清記順)

一口鑑賞】コロナ禍で中止していた句会が復活した。いつもの会議室はまだ使用できないものの、同人の御好意を得て会場を確保することができた。欠席投句(5人)も多かったが、出席者はお互いの無事を喜びながら、和やかな句会となった。
月を狩る射程の位置に蜘蛛の網」栄子さんの句。いつの間にか庭に張った蜘蛛の巣。ふと見れば、その先の空に月があり、まるで「射程の位置」に入ったように見えたのだ。咄嗟にそれを「月を狩る」と叙したのだろう。ユーモラスな一句。「梅雨に入る神社の中の洋菓子店」梢さんの句。句会場は漫画「こち亀」で有名になったJ R常磐線の亀有駅から徒歩3分の画廊。そばに鎮守の亀有香取神社がある。句会前に吟行した作者は、境内にあるケーキ屋さんに気付き、挨拶句として詠んだ。神社と洋菓子店のミスマッチが面白い。若い神主さんのアイデアで、同じ葛飾区内の人気店を誘致したところ話題を呼び、神社の参拝者も増えているという。
 「成田線窓一杯の植田かな」紀夫さんの句。成田線は千葉県内を走行する路線。亀有の10駅先の我孫子から成田線支線となる。この句は、田植え直後の田園地帯を走る車両で詠んだ景。見渡す限りの植田がまさに窓一杯に広がっていたのである。「有線のつなぐ一村植田澄む」洋子さんの句。農村は有線放送電話で結ばれており、地域に密着した情報がスピーカーから流れる仕組みになっている。近年はきめ細かい災害情報へのニーズも高まっているという。この句は、農村地帯の実情に視点を置いて詠んだ。(潔)
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艸俳句会

Author:艸俳句会
艸俳句会のWeb版句会報。『艸』(季刊誌)は2020年1月創刊。
「艸」は「草」の本字で、草冠の原形です。二本の草が並んで生えている様を示しており、草本植物の総称でもあります。俳句を愛する人には親しみやすい響きを持った言葉です。

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