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艸句会報:若草(令和2年7月11日)

若草句会(亀有 ギャラリー・バルコ)
兼題「水中花」

高点3句
密談に耳欹(そばだ)つる水中花   市原 久義
口中に夏の広がる山の水       坪井 信子
屋久杉のテーブル一つ夏座敷     飯田 誠子

夏の雲沙緻師を偲ぶ句集「艸」    石田 政江
水中花柩の友の赤き紅        沢渡  梢
遠雷や畳の縁を踏まぬ所作      針谷 栄子
朝顔市「團十郎」を宅配に      山本  潔
山門を額縁として濃紫陽花      新井 紀夫
言ひたいこと言はずに太郎半ズボン  松本ゆうき
復旧を四葩の花の待つ線路      市原 久義
青春の蹉跌越え来し書を曝す     安住 正子
止り木は隅の高椅子水中花      岡戸 林風
糸増やす鉢の納豆朝曇り       新井 洋子
水替へて泡のささやく水中花     飯田 誠子
山羊の名はヒミコ青野に日のわたり  坪井 信子

(清記順)

【一口鑑賞】「密談に耳欹(そばだ)つる水中花」久義さんの句。上五の「密談」が一気に読み手を引き込む。どんな話なのかは明かしようがないが、水中花がこの場面を引き立てる。耳を欹てているのは作者自身、水中花のどちらとも解釈できる。いろいろな読み方をされるのが俳句の面白味でもある。余談になるが、「密談」は時として政治を変える。「密談の戦後史」(塩田潮・角川選書)では、「戦後政治とは密談の歴史でもある」と言っている。「復旧を四葩の花の待つ線路」これも久義さんの句。紫陽花の名所といえば、箱根登山鉄道もその一つ。昨年の台風19号の影響で、現在も箱根湯本〜強羅間は運休している。そこに咲く四葩を思いながら、鉄道復旧へ祈りを捧げている。
山門を額縁として濃紫陽花」紀夫さんの句。千葉県の松戸にある本土寺は「あじさい寺」とも呼ばれる名所。10種類以上の紫陽花5万本が訪れる人の目を楽しませてくれる。この句は、山門を額縁に見立てて捉えた紫陽花を活写した。上五の「山門を」から下五の「濃紫陽花」までピタリと決まっている。まさに絵画のような情景が目に浮かぶ。
屋久杉のテーブル一つ夏座敷」誠子さんの句も上五から下五まで揺るぎがない。「夏座敷」は高温多湿の夏を涼しく過ごすために、襖を外したり、簾を吊るしたり、日本建築ならではの工夫が凝らされている。そこに置かれた「屋久杉のテーブル一つ」がいかにも涼しそうだ。さぞかし高いだろうなと思ってネット検索してみると、一枚板のリビングテーブルで中には200万円近いものもある。(潔)
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艸俳句会

Author:艸俳句会
艸俳句会のWeb版句会報。『艸』(季刊誌)は2020年1月創刊。
「艸」は「草」の本字で、草冠の原形です。二本の草が並んで生えている様を示しており、草本植物の総称でもあります。俳句を愛する人には親しみやすい響きを持った言葉です。

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