艸句会報:すみだ(令和2年7月22日)
すみだ句会(すみだ産業会館)
高点2句
念入りに今日をたたみて木槿散る 髙橋 郁子
梅雨の蝶一部始終を見て去りぬ 工藤 綾子
マスクして経文唱ふ盆の僧 髙橋 郁子
歩き来て造酒屋の清水かな 桑原さかえ
共白髪の夫と味はふさくらんぼ 貝塚 光子
どこまでもからつぽになる夏野かな 松本ゆうき
亀甲の柄の単衣や師の形見 長澤 充子
盆東風やベランダ越しに番鳥 大浦 弘子
白焼の鰻と白きぐい呑みと 山本 潔
いつしかに主治医も老いて晩夏光 福岡 弘子
まだ動く獲物持ち上げ蟻の列 工藤 綾子
川べりの工場跡地月見草 岡戸 林風
(清記順)
【一口鑑賞】「念入りに今日をたたみて木槿散る」郁子さんの句。今年は梅雨が長引いているが、そろそろ秋の花も咲き始めた。「木槿」もその一つ。残暑の厳しい頃に白や淡紅、淡紫などの花をいっぱいつける。朝に開き、夕べにはしぼむことから「槿花(きんか)一日之栄」という言葉がある。この句は、そんな木槿に自身の生活ぶりを重ね合わせたのだろう。コロナ禍にあって一日一日の暮しを丁寧に振り返る作者。俳句をその糧にして。「梅雨の蝶一部始終を見て去りぬ」綾子さんの句。夏の蝶は大きくて悠然と飛ぶ。代表格は揚羽蝶。また、梅雨の晴れ間に飛ぶ蝶を「梅雨の蝶」と呼ぶ。この句は、ゆったりと飛んできた蝶に生活の一部始終を見られたような気がした、という気持ちを素直に詠んだ。
「どこまでもからつぽになる夏野かな」ゆうきさんの句。見渡す限りの緑の野が広がっている。描かれているのはただそれだけ。広大な夏野を眺めながら「どこまでもからつぽになる」のは作者自身の心の中だろう。対象を凝視しているうちに、ふと浮かんだ言葉をつかまえたような一句。「夏野かな」が揺るがない。(潔)
高点2句
念入りに今日をたたみて木槿散る 髙橋 郁子
梅雨の蝶一部始終を見て去りぬ 工藤 綾子
マスクして経文唱ふ盆の僧 髙橋 郁子
歩き来て造酒屋の清水かな 桑原さかえ
共白髪の夫と味はふさくらんぼ 貝塚 光子
どこまでもからつぽになる夏野かな 松本ゆうき
亀甲の柄の単衣や師の形見 長澤 充子
盆東風やベランダ越しに番鳥 大浦 弘子
白焼の鰻と白きぐい呑みと 山本 潔
いつしかに主治医も老いて晩夏光 福岡 弘子
まだ動く獲物持ち上げ蟻の列 工藤 綾子
川べりの工場跡地月見草 岡戸 林風
(清記順)
【一口鑑賞】「念入りに今日をたたみて木槿散る」郁子さんの句。今年は梅雨が長引いているが、そろそろ秋の花も咲き始めた。「木槿」もその一つ。残暑の厳しい頃に白や淡紅、淡紫などの花をいっぱいつける。朝に開き、夕べにはしぼむことから「槿花(きんか)一日之栄」という言葉がある。この句は、そんな木槿に自身の生活ぶりを重ね合わせたのだろう。コロナ禍にあって一日一日の暮しを丁寧に振り返る作者。俳句をその糧にして。「梅雨の蝶一部始終を見て去りぬ」綾子さんの句。夏の蝶は大きくて悠然と飛ぶ。代表格は揚羽蝶。また、梅雨の晴れ間に飛ぶ蝶を「梅雨の蝶」と呼ぶ。この句は、ゆったりと飛んできた蝶に生活の一部始終を見られたような気がした、という気持ちを素直に詠んだ。
「どこまでもからつぽになる夏野かな」ゆうきさんの句。見渡す限りの緑の野が広がっている。描かれているのはただそれだけ。広大な夏野を眺めながら「どこまでもからつぽになる」のは作者自身の心の中だろう。対象を凝視しているうちに、ふと浮かんだ言葉をつかまえたような一句。「夏野かな」が揺るがない。(潔)
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