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艸句会報:若草(令和2年8月8日)

若草句会(亀有 ギャラリー・バルコ)
兼題「片蔭」

高点1句
行合ひの句座に清しき浴衣かな    新井 洋子

片かげり死ぬの生きるのなかつたね  松本ゆうき
秋近し住宅街の葬斎場        沢渡  梢
海の愛まとふ天草干されをり     吉﨑 陽子
すつぽんと読めても書けぬ夏暖簾   新井 紀夫
黄菅まだ色をほどかず尾瀬の原    安住 正子
片蔭を行けば古書肆の匂ふ街     岡戸 林風
蚯蚓いい奴土の手入れに明け暮れて  坪井 信子
「この先に蛇がゐます」と言はれても 市原 久義
ゆるく着て「艸」を寿ぐ単物     石田 政江
少年の指すり抜けて青蜥蜴      山本  潔
秋立つや鮮魚市場の新メニュー    飯田 誠子
月見草目より笑ひし母とゐて     新井 洋子
サバ缶のちゃちゃっとレシピ終戦日  針谷 栄子
石鹸をひとつ下ろして今朝の秋    隣安

(清記順)

【一口鑑賞】行合ひの句座に清しき浴衣かな」洋子さんの句。東京は8月1日に梅雨明けしてから、ずっと暑い日が続いている。この日の句会に涼しそうな浴衣姿で現れた人がいた。作者は早速、それを一句に詠んだ。俳句は即興、挨拶、滑稽が大事な要素。コロナ禍の今、句会が開かれること自体が貴重であり、そんな状況の中にあっても即吟を忘れない作者の精神に敬意を表したい。「ゆるく着て『艸』を寿ぐ単物」政江さんの句。7月の艸創刊祝いに、沙緻師の形見の単を着て登場した作者。やや大きめの着物をゆったりと着こなし、艸創刊へのお祝いの気持ちを示した。あの日の自分自身をスケッチした一句。今日の句会に涼しげな浴衣姿でやってきたのも政江さん。
 「蚯蚓いい奴土の手入れに明け暮れて」信子さんの句。「蚯蚓」が夏の季語。土を食べ、有機物や微生物などを消化吸収し排泄することで、土壌を改良してくれる。そんな蚯蚓を作者は「いい奴」と呼ぶ。生き物への慈愛に満ちた一句。「『この先に蛇がゐます』と言はれても」久義さんの一句。こちらは蛇を詠んだ句。目の前にあるのは蛇への注意を呼びかける看板だけだが、周囲の草むらに蛇がいそうな雰囲気が漂ってくる。この句は目に見えなくても、すぐ近くに潜んでいる蛇を見定めている。ゾクっとさせられる一句。
 「石鹸をひとつ下ろして今朝の秋」隣安さんの一句。久々にゲスト参加した作者。「今朝の秋」は「立秋」の副季語。どことなく秋の気配を感じる朝に新しく下ろす石鹸から何とも爽やかな気分が伝わってくる。(潔)
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艸俳句会

Author:艸俳句会
艸俳句会のWeb版句会報。『艸』(季刊誌)は2020年1月創刊。
「艸」は「草」の本字で、草冠の原形です。二本の草が並んで生えている様を示しており、草本植物の総称でもあります。俳句を愛する人には親しみやすい響きを持った言葉です。

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