艸句会報:すみだ(令和2年8月26日)
すみだ句会(すみだ産業会館)
高点2句
年寄の夢たわいなし星の恋 松本ゆうき
便箋とペンのみ処暑の文机 岡崎由美子
藍ふかき朝顔咲かせ逝かれけり 岡崎由美子
窓口の透明シート秋暑し 岡戸 林風
引いた字をまた引き直す鳳仙花 松本ゆうき
燻りて何度も点す魂送り 福岡 弘子
銅山を清め渡良瀬河鹿笛 大浦 弘子
新涼やメールで届く旅プラン 長澤 充子
新しき包丁試す今朝の秋 髙橋 郁子
朝蟬を捕らむと猫の駆けのぼる 貝塚 光子
老眼鏡外し夜長の眼を仕舞ふ 工藤 綾子
(清記順)
【一口鑑賞】「年寄の夢たわいなし星の恋」ゆうきさんの句。陰暦7月7日の夜、牽牛星(鷲座のアルタイル)と織女星(琴座のヴェガ)が天の川を渡って年に一度の逢瀬を楽しむというのが「七夕」。「星の恋」はその副季語。何とロマンチックな言葉だろう。それを好んで使うところがこの人らしい。もはや老年の域に入ったことを意識しながらも夢だけは持ち続けていたい。たとえそれがたわいない願望であっても…。そう自分に言い聞かせているような一句。
「便箋とペンのみ処暑の文机」由美子さんの句。「処暑」は二十四節気の一つで、暑さが一段落する節目となる。立秋から15日目。今年は8月23日だった。この句は、そんな日の文机を描写することで、「処暑」を迎える作者の気持ちが巧みに言い表されている。「便箋とペンのみ」というシンプルな映像だが、読み手の目にその家の佇まいまで見えてきそうだ。
「老眼鏡外し夜長の眼を仕舞ふ」綾子さんの句。秋の夜は長い。本を読んだり、手紙を書いたりして過ごすことが多くなる。そんなときに、作者はふと眼の疲れを感じたのだろう。「今夜はここまで」と眼鏡を外した瞬間に「眼を仕舞ふ」という言葉が降りてきたのかもしれない。(潔)
高点2句
年寄の夢たわいなし星の恋 松本ゆうき
便箋とペンのみ処暑の文机 岡崎由美子
藍ふかき朝顔咲かせ逝かれけり 岡崎由美子
窓口の透明シート秋暑し 岡戸 林風
引いた字をまた引き直す鳳仙花 松本ゆうき
燻りて何度も点す魂送り 福岡 弘子
銅山を清め渡良瀬河鹿笛 大浦 弘子
新涼やメールで届く旅プラン 長澤 充子
新しき包丁試す今朝の秋 髙橋 郁子
朝蟬を捕らむと猫の駆けのぼる 貝塚 光子
老眼鏡外し夜長の眼を仕舞ふ 工藤 綾子
(清記順)
【一口鑑賞】「年寄の夢たわいなし星の恋」ゆうきさんの句。陰暦7月7日の夜、牽牛星(鷲座のアルタイル)と織女星(琴座のヴェガ)が天の川を渡って年に一度の逢瀬を楽しむというのが「七夕」。「星の恋」はその副季語。何とロマンチックな言葉だろう。それを好んで使うところがこの人らしい。もはや老年の域に入ったことを意識しながらも夢だけは持ち続けていたい。たとえそれがたわいない願望であっても…。そう自分に言い聞かせているような一句。
「便箋とペンのみ処暑の文机」由美子さんの句。「処暑」は二十四節気の一つで、暑さが一段落する節目となる。立秋から15日目。今年は8月23日だった。この句は、そんな日の文机を描写することで、「処暑」を迎える作者の気持ちが巧みに言い表されている。「便箋とペンのみ」というシンプルな映像だが、読み手の目にその家の佇まいまで見えてきそうだ。
「老眼鏡外し夜長の眼を仕舞ふ」綾子さんの句。秋の夜は長い。本を読んだり、手紙を書いたりして過ごすことが多くなる。そんなときに、作者はふと眼の疲れを感じたのだろう。「今夜はここまで」と眼鏡を外した瞬間に「眼を仕舞ふ」という言葉が降りてきたのかもしれない。(潔)
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