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艸句会報:東陽(令和2年9月)

東陽通信句会

高点2句
他人ごとのやうで我がこと敬老日  中島 節子
新涼や何刻みてもよきひびき    安住 正子

一と跳ねの鯉の潜きし無月かな   安住 正子
流星や胸ポケットにカードキー   堤 やすこ
登校の列のみじかし蕎麦の花    野村えつ子
秋澄む魚影一瞬日を返す      飯田 誠子
菰解きの菊の香の立つ花舗の朝   長澤 充子
土星の輪思ひ水蜜桃すする     山本  潔
蔵壁のこて絵の屋号秋薊      斎田 文子
半分に分けて幸せ初秋刀魚     新井 洋子
武蔵野に志士の像立つ露しぐれ   岡戸 林風
口ずさむ「桃色吐息」秋暑し    貝塚 光子
下駄箱の古き靴墨ちちろ鳴く    岡崎由美子
月清し菩薩も夜叉もこんばんは   松本ゆうき
雨晴れて雫を萩の花に葉に     中島 節子
紫蘇の実を並んで摘みし広き肩   中川 照子
わらべ唄流るる駅や猫じやらし   向田 紀子

(清記順)

【一口鑑賞】紫蘇の実を並んで摘みし広き肩」照子さんの句。「紫蘇の実」が仲秋の季語。紫蘇は夏に穂状の小さな花が咲く。これが終わると、次々に実がなる。香りが良く、カルシウムやビタミンA、鉄分などが含まれており、塩漬けや佃煮にすればご飯がすすむ。花が残っている穂は「穂紫蘇」と呼ばれ、刺身のつまにする。この句は、紫蘇の実を一緒に摘んだ人を忍んでいる。「広き肩」はご主人か、お父様か。今は亡き人への思いがにじみでている。
 「わらべ唄流るる駅や猫じやらし」紀子さんの句。近年、鉄道の駅ではさまざまな発車メロディーが流れている。例えば、山手線の高田馬場駅は「鉄腕アトム」、恵比寿駅は「第三の男」、駒込駅は「さくらさくら」。地下鉄の銀座駅では「銀座カンカン娘」(銀座線)、「銀座の恋の物語」(日比谷線)など馴染みの深い曲が採用されている。掲句は、どこかの駅で童謡を聴いてとっさに詠んだのだろう。秋の季語「猫じやらし(狗尾草)」との取り合わせが効いている。ネット検索してみると、「夕焼け小焼け」(八王子駅)、「たきび」(豊田駅)、「チューリップ」(前橋駅)、「浜辺の歌」(辻堂駅)、「金太郎」(大雄山駅)など懐かしい童謡がいろいろ出てくる。(潔)
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艸俳句会

Author:艸俳句会
艸俳句会のWeb版句会報。『艸』(季刊誌)は2020年1月創刊。
「艸」は「草」の本字で、草冠の原形です。二本の草が並んで生えている様を示しており、草本植物の総称でもあります。俳句を愛する人には親しみやすい響きを持った言葉です。

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