艸句会報:連雀(令和2年10月7日)
連雀句会(三鷹駅前コミュニティセンター)
兼題「桐一葉」
高点2句
靖国の兄へ秋思の砂利を踏む 安住 正子
二人ゐて程よき黙や月の夜 岡崎由美子
晩歳や俳句を友に夜長人 横山 靖子
名月の歪み諾ふ裸眼かな 向田 紀子
桐一葉落ちて学舎古りにけり 進藤 龍子
薄もみぢ朝の光の佃島 飯田 誠子
おてんばは八十路の今も残る秋 束田 央枝
珍獣の寝息聴こゆる夜半の秋 山本 潔
桐一葉午後の窓辺の針仕事 岡崎由美子
蚯蚓鳴く木の改札を出てゆけば 松成 英子
ひとり碁の石音低く桐一葉 岡戸 林風
胸張つて咲けばいいのに金木犀 松本ゆうき
リビングの指定席より秋の雲 春川 園子
蒲の絮半分残し日暮れけり 中島 節子
待たされて秋日傾くリウマチ科 坪井 信子
ありなしの風に委ねてコスモス野 安住 正子
(清記順)
【一口鑑賞】「晩歳や俳句を友に夜長人」靖子さんの句。「夜長人」は作者自身。上五の「晩歳や」には、ただ老いを感じているというだけではなく、パンデミックの世を過ごしていることへの驚きや怖れなど、さまざまな思いが込められているのだろう。秋の夜長を過ごしながら、困難な時代にあっても俳句が心の支えになっていることをしみじみと感じているのである。
「おてんばは八十路の今も残る秋」央枝さんの句。ご本人の弁によれば、子どもの頃は相当なおてんばだったらしい。達筆でいつもしとやかな作者の姿からはなかなか想像できないが、それも“おてんば精神”によって培われたものなのだろう。自らを元気づけながら、「残る秋」によって老いへの感慨を詠んでいる。
「リビングの指定席より秋の雲」園子さんの句。怪我をしてリハビリ生活の作者。今もなかなか思うようには動けないのだろう。まるで指定席のようになったリビングの椅子に座り、窓の外を眺めている。「秋の雲」は他の季節と比べて多彩で見ていて飽きない。とりわけ高い空に広がる鱗雲は郷愁を呼ぶ。(潔)
兼題「桐一葉」
高点2句
靖国の兄へ秋思の砂利を踏む 安住 正子
二人ゐて程よき黙や月の夜 岡崎由美子
晩歳や俳句を友に夜長人 横山 靖子
名月の歪み諾ふ裸眼かな 向田 紀子
桐一葉落ちて学舎古りにけり 進藤 龍子
薄もみぢ朝の光の佃島 飯田 誠子
おてんばは八十路の今も残る秋 束田 央枝
珍獣の寝息聴こゆる夜半の秋 山本 潔
桐一葉午後の窓辺の針仕事 岡崎由美子
蚯蚓鳴く木の改札を出てゆけば 松成 英子
ひとり碁の石音低く桐一葉 岡戸 林風
胸張つて咲けばいいのに金木犀 松本ゆうき
リビングの指定席より秋の雲 春川 園子
蒲の絮半分残し日暮れけり 中島 節子
待たされて秋日傾くリウマチ科 坪井 信子
ありなしの風に委ねてコスモス野 安住 正子
(清記順)
【一口鑑賞】「晩歳や俳句を友に夜長人」靖子さんの句。「夜長人」は作者自身。上五の「晩歳や」には、ただ老いを感じているというだけではなく、パンデミックの世を過ごしていることへの驚きや怖れなど、さまざまな思いが込められているのだろう。秋の夜長を過ごしながら、困難な時代にあっても俳句が心の支えになっていることをしみじみと感じているのである。
「おてんばは八十路の今も残る秋」央枝さんの句。ご本人の弁によれば、子どもの頃は相当なおてんばだったらしい。達筆でいつもしとやかな作者の姿からはなかなか想像できないが、それも“おてんば精神”によって培われたものなのだろう。自らを元気づけながら、「残る秋」によって老いへの感慨を詠んでいる。
「リビングの指定席より秋の雲」園子さんの句。怪我をしてリハビリ生活の作者。今もなかなか思うようには動けないのだろう。まるで指定席のようになったリビングの椅子に座り、窓の外を眺めている。「秋の雲」は他の季節と比べて多彩で見ていて飽きない。とりわけ高い空に広がる鱗雲は郷愁を呼ぶ。(潔)
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