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艸句会報:かつしか(令和2年10月25日)

かつしか句会(亀有地区センター)

高点1句
静もりてひとり明日の栗を剥く   中山 光代

病床の窓ふるさとへ鳥渡る     近藤 文子
長き夜の長き小説「罪と罰」    平川 武子
十五夜の癒し賜る地球かな     小野寺 翠
廃線に寝転ぶ猫や鱗雲       笛木千恵子
街路樹を横切る速さ野分雲     山田 有子
新句座に米寿の膝を突き合はす   伊藤 けい
あら大変土手が火事です彼岸花   片岡 好子
柿熟るる卯建の上がる父祖の家   新井 紀夫
嵩上げの続く被災地秋の暮     五十嵐愛子
縁石へ重ぬる献花秋時雨      霜田美智子
楽の音もいつかか弱き鉦叩     佐治 彰子
十六夜のゆつくり雲に隠れたり   三尾 宣子
柴又に人のぬくもり鶴来る     山本  潔
嫁ぐ子の幼き寝顔稲の花      高橋美智子
花野ゆくコロナ忘るる一日なり   千葉 静江
対岸を渡舟離るる野菊晴      新井 洋子
戻り来よ妹二人実むらさき     中山 光代

(清記順)

一口鑑賞】葛飾区で40年続いてきた句会を引き継ぐ形で、艸俳句会としては六つ目となる「かつしか句会」が発足した。全員マスク着用。消毒液で机を拭いたり、座る間隔を広めにしたり、感染症対策に気を使いながらも、活発で楽しい句会となった。
 「静もりてひとり明日の栗を剥く」光代さんは欠席投句だったが、選んだ4人中、3人が特選。「静もりて」は気持ちを落ち着かせてということなのだろう。「明日の栗を剥く」という前向きな気持ちを詠んだところに共感した人が多かった。「新句座に米寿の膝を突き合はせ」けいさんの句。今年、米寿を迎えた作者。形を新たにした句会への挨拶句。無季の句だが、「3密」は避けながらも、皆と一緒に俳句と向き合おうという意気込みが伝わってくる。
 「嵩上げの続く被災地秋の暮」愛子さんの句。東日本大震災から来年3月で10年。津波の押し寄せた東北の沿岸部では街全体の嵩上げ工事が今も行われている。被災地で見た景をシンプルに描写した。「楽の音もいつかか弱き鉦叩」彰子さんの句。秋も深まり、虫の大合唱もピークを過ぎた。鉦叩のチンチンチンと鳴く音に、か弱さを感じ取った作者。感性で捉えた一句。「対岸を渡舟離るる野菊晴」洋子さんの句。葛飾といえば柴又の矢切の渡し。対岸(千葉県松戸市)から舟が離れる様子を「野菊晴」で見事に映像化した。(潔)
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艸俳句会

Author:艸俳句会
艸俳句会のWeb版句会報。『艸』(季刊誌)は2020年1月創刊。
「艸」は「草」の本字で、草冠の原形です。二本の草が並んで生えている様を示しており、草本植物の総称でもあります。俳句を愛する人には親しみやすい響きを持った言葉です。

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