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艸句会報:すみだ(令和2年10月28日)

すみだ句会(すみだ産業会館)
兼題「鹿」

高点2句
眼つむりて神鹿角を伐られをり    工藤 綾子
廃線の鉄路消え行く薄原       福岡 弘子

霜降や更地となりし父母の家     岡戸 林風
「鹿狩りに行っています」とジビエ店 貝塚 光子
現世の風ほろ苦く菊膾        内藤和香子
留袖は母の仕立てや菊日和      福岡 弘子
木の実落ついつもの家のいつもの木  岡崎由美子
薄紅葉ほのかに甘き京和菓子     長澤 充子
秋草や堤防渡る牛の列        並木 幸子
久に逢ふ子にも白髪の秋思かな    工藤 綾子
虫の音や脳トレ本をまた開き     川原 美春
鄙歌の聞こえてきさう稲穂波     大浦 弘子
南瓜切る手の緊張をほぐしつつ    桑原さかえ
竹林の風和ぐ夜や鹿の声       山本  潔
身に沁むや足より弱る老の相(さが) 髙橋 郁子
秋寂ぶやテレビの音を消してより   三宅のり子

(清記順)

【一口鑑賞】「眼つむりて神鹿角を伐られをり」綾子さんの句。鹿の角切は奈良の風物詩の一つ。春日大社の神事で寛文年間から行われてきた。発情期の牡鹿の角を切り落としてやることで、鹿同士で争ったり、観光客に危害が加えられたりするのを防ぐ。この句は、まさに「眼つむりて」に眼目がある。共存のためとはいえ、角を切られる鹿への作者の慈しみが感じられる。今年はコロナ禍の影響で行事は中止になった。「留袖は母の仕立てや菊日和」福岡さんの句。「菊日和」は菊の花が盛りを迎えている頃の澄み渡った秋の日。母親が仕立ててくれた留袖を着て、一緒に菊花展を見に行ったことを思い出しているのかもしれない。
鄙歌の聞こえてきさう稲穂波」大浦さんの句。さりげない句だが、鄙歌がいい。田舎で歌い継がれている素朴な歌。黄金色に輝く稲穂が風に揺れる景は郷愁を誘う。読み手にも昔、口ずさんだ歌が聞こえてきそう。「南瓜切る手の緊張をほぐしつつ」さかえさんの句。南瓜は硬くて切るのが苦手な人もいるだろう。特にヘタのところは硬く、包丁を握る手に緊張が走る。いろいろとコツはあるらしいが、まずは手の緊張をほぐす作者。上手に切れたかな。(潔)
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艸俳句会

Author:艸俳句会
艸俳句会のWeb版句会報。『艸』(季刊誌)は2020年1月創刊。
「艸」は「草」の本字で、草冠の原形です。二本の草が並んで生えている様を示しており、草本植物の総称でもあります。俳句を愛する人には親しみやすい響きを持った言葉です。

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