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艸句会報:かつしか(令和2年11月22日)

かつしか句会(亀有地区センター)
兼題「冬紅葉」

高点1句
背凭れに亡父の窪み秋深し      霜田美智子

コロナ禍の大地の渇き冬の蜂     山本  潔
越後路やダム湖染めゆく冬夕焼    佐治 彰子
鐘の音に旅の余韻や柿紅葉      笛木千恵子
衣食住不自由なくて冬ぬくし     三尾 宣子
分け入りて釣鐘堂の冬紅葉      伊藤 けい
届きさうで届かぬ柿のたわわなる   近藤 文子
冬紅葉巡礼寺に一揆の碑       千葉 静江
小鳥来る町のはずれの算盤塾     小野寺 翠
黄昏や焚るる前の菊匂ふ       中山 光代
山小屋の南京錠や冬もみじ      高橋美智子
迷走の果ての木枯湯畑に       新井 洋子
大店の閉ざす勤労感謝の日      新井 紀夫
嫁ぐ娘に我が家の秘伝菊日和     片岡このみ
雪化粧の蝦夷富士前に朝の膳     五十嵐愛子
靴底に弾ける木の実山下る      霜田美智子

(清記順)

【一口鑑賞】10月に発足したかつしか句会。新型コロナウイルスの第3波で感染が拡大するなか、欠席投句もあったが、12人が出席して有意義な句会となった。「背凭れに亡父の窪み秋深し」霜田美智子さんの句。7人が採り、うち2人は特選。この句は、父が愛用していた椅子の背もたれにある窪みがすべてを物語っている。ちょうど晩秋の頃に亡くなったのだろうか。父への思いと秋の深まりによる寂寥感が漂う。「越後路やダム湖染めゆく冬夕焼」彰子さんの句。一読して夕日に染まるダム湖の景がしっかり立ち上がる。冬の夕焼は束の間だが美しい。旅で見た景色は時間が経ってからでも心の中で熟成し、やがて一句になる。
 「冬紅葉巡礼寺に一揆の碑」静江さんは秩父を旅したときの一句。「一揆の碑」は1884年(明治17)に起きた秩父事件の記録が刻まれている。札所23番「音楽寺」に集結した農民たちは梵鐘を打ち鳴らしながら市内へ乱入。季節はちょうど初冬の頃。そんな史実も踏まえて兼題の「冬紅葉」を上手く詠んだ。「山小屋の南京錠や冬もみじ」高橋美智子さんの句も日常を離れ、旅先で見た景をしっかり詠んでいる。山小屋にかかる南京錠はがっちりしていて、長い間使われているのだろう。「冬紅葉」との取り合わせがうまくいった。(潔)
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艸俳句会

Author:艸俳句会
艸俳句会のWeb版句会報。『艸』(季刊誌)は2020年1月創刊。
「艸」は「草」の本字で、草冠の原形です。二本の草が並んで生えている様を示しており、草本植物の総称でもあります。俳句を愛する人には親しみやすい響きを持った言葉です。

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