艸句会報:東陽(令和2年11月)
東陽通信句会
高点2句
マスクして人みな遠しきのうふけふ 岡崎由美子
大学がバスの終点銀杏散る 野村えつ子
旅先の宿の番傘初しぐれ 長澤 充子
民宿の裏も民宿干大根 野村えつ子
息災を確かめ合うて落葉掻 貝塚 光子
篁の風のからびや冬に入る 安住 正子
日溜りの砂場の落葉だまりかな 向田 紀子
深海の大王烏賊へおよぶ冬 山本 潔
冬薔薇人工知能に囲まれて 堤 やすこ
流行は過客の如く翁の忌 岡戸 林風
カラカラと吾を超えゆく枯葉かな 斎田 文子
鳥渡る眼下に千の交差点 飯田 誠子
地になほも桜落葉の華やかに 中島 節子
冬芽萌ゆ伐採せまる老幹に 中川 照子
何もかも間が悪き日のおでん酒 岡崎由美子
新海苔のむすびと地図と老眼鏡 新井 洋子
アンネともエリザベスとも冬薔薇 松本ゆうき
(清記順)
【一口鑑賞】「息災を確かめ合うて落葉掻」光子さんの句。コロナ禍にあって、この冬は落葉掻も例年とは様子が異なるようだ。近所の顔見知りが集まっているのは一緒なのだが、みんなマスクをしている。適度に距離を保ち、無駄口を叩く人もいない。それでもお互いの無事だけは確かめ合っている。上五〜中七の措辞に実感が籠もる。いつもの冬なら見過ごされそうな光景を的確に捉えた一句。
「冬薔薇人工知能に囲まれて」やすこさんの句。過去にA Iブームは2回ほどあったが、今回はコンピューター技術の進歩に加え、インターネットの普及などにより期待は大きく膨らんでいる。コロナ禍でテレワークが広がっていることも拍車をかけているようだ。この句は、冬薔薇を人工知能が取り囲んでいるという見立てにユーモアがある。取り合わせの妙とでも言うべきか…。
「鳥渡る眼下に千の交差点」誠子さんの句。「鳥渡る」は中秋から晩秋にかけて日本にやってくる渡り鳥のこと。この句は、鳥の視点で地上を見下ろしているのだが、「千の交差点」がある光景はいったい何を意味しているのだろう。鳥の目には現代社会は複雑な回路図のように見えるかもしれない。上田五千石の〈渡り鳥みるみるわれの小さくなり〉が思い浮かんだ。(潔)
高点2句
マスクして人みな遠しきのうふけふ 岡崎由美子
大学がバスの終点銀杏散る 野村えつ子
旅先の宿の番傘初しぐれ 長澤 充子
民宿の裏も民宿干大根 野村えつ子
息災を確かめ合うて落葉掻 貝塚 光子
篁の風のからびや冬に入る 安住 正子
日溜りの砂場の落葉だまりかな 向田 紀子
深海の大王烏賊へおよぶ冬 山本 潔
冬薔薇人工知能に囲まれて 堤 やすこ
流行は過客の如く翁の忌 岡戸 林風
カラカラと吾を超えゆく枯葉かな 斎田 文子
鳥渡る眼下に千の交差点 飯田 誠子
地になほも桜落葉の華やかに 中島 節子
冬芽萌ゆ伐採せまる老幹に 中川 照子
何もかも間が悪き日のおでん酒 岡崎由美子
新海苔のむすびと地図と老眼鏡 新井 洋子
アンネともエリザベスとも冬薔薇 松本ゆうき
(清記順)
【一口鑑賞】「息災を確かめ合うて落葉掻」光子さんの句。コロナ禍にあって、この冬は落葉掻も例年とは様子が異なるようだ。近所の顔見知りが集まっているのは一緒なのだが、みんなマスクをしている。適度に距離を保ち、無駄口を叩く人もいない。それでもお互いの無事だけは確かめ合っている。上五〜中七の措辞に実感が籠もる。いつもの冬なら見過ごされそうな光景を的確に捉えた一句。
「冬薔薇人工知能に囲まれて」やすこさんの句。過去にA Iブームは2回ほどあったが、今回はコンピューター技術の進歩に加え、インターネットの普及などにより期待は大きく膨らんでいる。コロナ禍でテレワークが広がっていることも拍車をかけているようだ。この句は、冬薔薇を人工知能が取り囲んでいるという見立てにユーモアがある。取り合わせの妙とでも言うべきか…。
「鳥渡る眼下に千の交差点」誠子さんの句。「鳥渡る」は中秋から晩秋にかけて日本にやってくる渡り鳥のこと。この句は、鳥の視点で地上を見下ろしているのだが、「千の交差点」がある光景はいったい何を意味しているのだろう。鳥の目には現代社会は複雑な回路図のように見えるかもしれない。上田五千石の〈渡り鳥みるみるわれの小さくなり〉が思い浮かんだ。(潔)
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