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艸句会報:若草(令和2年12月12日)

若草句会(亀有 ギャラリー・バルコ)
兼題「安」

高点1句
夢で行く月面歩行羽根蒲団      針谷 栄子

老いもまた夫婦の絆冬林檎      針谷 栄子
十二月八日電車の窓開けて      山本  潔
収束の見へぬコロナ禍鰤起し     吉﨑 陽子
しぐるるや黒姫山の影移り      石田 政江
湯豆腐や掬う木の香のちりれんげ   安住 正子
一年の安堵に浸かる冬至風呂     市原 久義
ギャラリーに集ふ句友や十二月    沢渡  梢
おでん酒安全靴の泥乾び       新井 洋子
漬樽の箍締め直す十二月       飯田 誠子
安らぎや冬芽の眠りゐる大地     坪井 信子
風呂吹や心安らぐ日を恃み      岡戸 林風
走り根にハンドル取られ冬の暮    新井 紀夫
冬夕焼十年先は何処で見む      松本ゆうき

(清記順)

【一口鑑賞】夢で行く月面歩行羽根蒲団」栄子さんの句。羽根蒲団がなんとも気持ち良さそう。軽く、ふわふわした感じはまさに月を歩いているイメージ。人類が初めて月に降り立ったのは1969年。あれから既に半世紀。最近は惑星探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウのかけらを採取して地球に運んできた。そんなニュースが作者に月へ行く夢を見させてくれたのかもしれない。
 「おでん酒安全靴の泥乾び」洋子さんの句。兼題の「安」から発想した「安全靴」。仕事を終えた職人たちがおでんをつつきながらお酒を飲んでいる。立呑み屋か屋台だろう。この句は靴の乾いた泥に着目したところがお手柄。危険と隣り合わせの工事現場や、仕事を終えた職人の安堵の表情が思い起こされる。
 「安らぎや冬芽の眠りゐる大地」信子さんの句。すっかり葉を落とした冬の木々。その造形は美しい。秋のうちに作られた芽を抱きながら木々が越冬する大地はまさに安らぎのなかにある。上五の「安らぎや」に詩情が感じられる。
 「風呂吹や心安らぐ日を恃み」林風さんの句。「風呂吹き」は大根や蕪の皮をむいて厚めに切り、昆布を敷いた鍋でゆっくりと煮る。みりん、砂糖などを入れて練った味噌を塗り、柚子を散らして熱いうちに食べれば体も心も温まる。この句はコロナ禍収束への願いが込められている。(潔)
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艸俳句会

Author:艸俳句会
艸俳句会のWeb版句会報。『艸』(季刊誌)は2020年1月創刊。
「艸」は「草」の本字で、草冠の原形です。二本の草が並んで生えている様を示しており、草本植物の総称でもあります。俳句を愛する人には親しみやすい響きを持った言葉です。

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