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艸句会報:すみだ(令和3年1月)

すみだ通信句会

高点1句
月並の句座も叶はず去年今年     岡戸 林風

人声を攫ひし怒濤冬の海       工藤 綾子
放牧の牛の口にも若菜かな      内藤和香子
笹鳴や菓子パン好きの子規が好き   山本  潔
海むいて並ぶ民宿水仙花       福岡 弘子
足型に足置き並ぶ鯛焼屋       岡崎由美子
坂がかる古き家並や冬すみれ     長澤 充子
退院の友より熟し冬苺        貝塚 光子
面会の叶はぬ夫や春を待つ      髙橋 郁子
読初は百鬼夜行の絵巻なり      松本ゆうき
寒夕焼レンガ造りの倉庫群      岡戸 林風
牛の眼の濡れし眸に芽吹山      大浦 弘子

(清記順)

【一口鑑賞】月並の句座も叶はず去年今年」林風さんの句。コロナ第3波の影響ですみだ句会も昨年5、6月以来の通信(郵便)句会となった。海外ではワクチン摂取が始まる一方で、変異型ウイルスの感染も拡大しており、情勢は予断を許さない。日本政府の対応は遅れており、コロナ終息の見通しは立っていない。この句は、毎月の句会にも影響が及ぶ日常がまだまだ続くことへの嘆きを冷静に詠んでいる。
 「放牧の牛の口にも若菜かな」和香子さんの句。「若菜」は新年の季語。七種粥に入れる若草を指す。それが牛の口についていたとは、今年が丑年であることも踏まえた想像の一句だろうか。もっとも、年が明けたばかりの野原に出て若菜を摘むこともあり、「若菜摘」も新年の季語。牧場での実景であってもおかしくない。「牛の眼の濡れし眸に芽吹山」大浦さんも牛を見て一句。潤んだ眸に映る山に春の芽吹きを見つけた。
 「読初は百鬼夜行の絵巻なり」ゆうきさんの句。日本の古い説話などに深夜に群れて徘徊する鬼や妖怪が登場する。暦によって、百鬼に遭遇すると死んでしまうと言われる日があり、貴族などは夜の外出を控えたという。そんな百鬼夜行の描かれた本を年初から読んだのだろう。コロナも言わば百鬼の一つかもしれない。(潔)
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艸俳句会

Author:艸俳句会
艸俳句会のWeb版句会報。『艸』(季刊誌)は2020年1月創刊。
「艸」は「草」の本字で、草冠の原形です。二本の草が並んで生えている様を示しており、草本植物の総称でもあります。俳句を愛する人には親しみやすい響きを持った言葉です。

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