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艸句会報:船橋(令和3年3月)

船橋通信句会
兼題「貝」


高点1句
花菜風枕木を行く保線員      新井 洋子

三月の波の言伝て忘れ貝      市原 久義
ポケットの浜の真砂と桜貝     沢渡  梢
厨から浅蜊ぶつぶつ独り言     飯塚 とよ
貝屑の混じる浦畑豆の花      針谷 栄子
深呼吸して香しき春の山      新井 洋子
テレビ欄先づチェックして蜆汁   中川 照子
わだなかのひかり遍し月日貝    岡戸 林風
春草や多摩の奥なる古戦場     小杉 邦男
鶯の声数えつつ朝寝かな      並木 幸子
手のひらにすこし欠けたる桜貝   川原 美春
啓蟄や軽く土打つ雨の音      平野 廸彦
鳥風やいわきの海の忘れ貝     山本  潔
深海に横たはるごと大朝寝     岡崎由美子

(清記順)

 【一口鑑賞】三月の波の言伝て忘れ貝」久義さんの句。二枚貝は離ればなれになると、互いを忘れるという。その一片を拾うと、苦しい恋を忘れるとも言われ、いつしか「忘れ貝」と呼ばれるようになった。東日本大震災から10年の歳月が流れたが、それはまだ一つの節目にすぎない。いまも「三月の波」は津波にのみ込まれた人々の思いを言伝のように運んでくる。「啓蟄や軽く土打つ雨の音」廸彦さんの句。そろそろ啓蟄だなあ、と思いながら雨音を聞いている作者。「軽く土打つ」に春らしい気分が書きとめられている。冬眠から覚めた地虫たちが動き始めたころの土の感触や色合い、匂いまで伝わってくるようだ。小さな春のにぎわいを、耳を澄まして捉えた一句。(潔)
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艸俳句会

Author:艸俳句会
艸俳句会のWeb版句会報。『艸』(季刊誌)は2020年1月創刊。
「艸」は「草」の本字で、草冠の原形です。二本の草が並んで生えている様を示しており、草本植物の総称でもあります。俳句を愛する人には親しみやすい響きを持った言葉です。

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