艸句会報:東陽(令和3年6月)
東陽通信句会
高点1句
負ふものの重みは知らず蝸牛 岡戸 林風
方々にものの音する夏の朝 松本ゆうき
幼子のしやぼんの匂ひ夕薄暑 新井 洋子
汗ばめる額差し出す検温機 岡崎由美子
金魚草ほそぼそと継ぐ駄菓子店 山本 潔
辰雄忌の緑のインク落し文 岡戸 林風
吊橋揺れて万緑の谷動く 安住 正子
吹き抜ける風の軽さや麻暖簾 長澤 充子
風の無き草叢選りて夏の蝶 斎田 文子
引き返すことも賢明かたつむり 野村えつ子
町並みの様変りして日雷 堤 やすこ
紫陽花のこみちを夫と歩きけり 貝塚 光子
萍を押しのけて寄る神の鯉 中川 照子
あぢさゐの藍にほぐるる心かな 中島 節子
忽然と友は施設へ風知草 向田 紀子
行々子来て大利根の流れかな 飯田 誠子
(清記順)
【一口鑑賞】「負ふものの重みは知らず蝸牛」林風さんの句。人は誰しも重荷を背負って生きている。それを重いと感じるかどうかはその人次第だし、個人差もあるだろう。この句は、蝸牛を自分自身になぞらえているとも読めるし、重荷を背負う誰かのことを思いやっているとも読める。コロナ禍もあって自分のことで精一杯になりがちな世の中だが、人の苦労を思いやる優しさこそ必要だと思わせてくれる一句。「忽然と友は施設へ風知草」紀子さんの句。仲の良かった友人が前触れもなく、介護施設へ入ってしまったのだろう。上五の「忽然と」に作者の驚きがよく表れている。超高齢化社会では容易に起こり得ることだ。「風知草」はイネ科の植物で葉が細長く、表が白、裏は緑。表と裏の逆転した感じが戸惑いの大きさを物語る。(潔)
高点1句
負ふものの重みは知らず蝸牛 岡戸 林風
方々にものの音する夏の朝 松本ゆうき
幼子のしやぼんの匂ひ夕薄暑 新井 洋子
汗ばめる額差し出す検温機 岡崎由美子
金魚草ほそぼそと継ぐ駄菓子店 山本 潔
辰雄忌の緑のインク落し文 岡戸 林風
吊橋揺れて万緑の谷動く 安住 正子
吹き抜ける風の軽さや麻暖簾 長澤 充子
風の無き草叢選りて夏の蝶 斎田 文子
引き返すことも賢明かたつむり 野村えつ子
町並みの様変りして日雷 堤 やすこ
紫陽花のこみちを夫と歩きけり 貝塚 光子
萍を押しのけて寄る神の鯉 中川 照子
あぢさゐの藍にほぐるる心かな 中島 節子
忽然と友は施設へ風知草 向田 紀子
行々子来て大利根の流れかな 飯田 誠子
(清記順)
【一口鑑賞】「負ふものの重みは知らず蝸牛」林風さんの句。人は誰しも重荷を背負って生きている。それを重いと感じるかどうかはその人次第だし、個人差もあるだろう。この句は、蝸牛を自分自身になぞらえているとも読めるし、重荷を背負う誰かのことを思いやっているとも読める。コロナ禍もあって自分のことで精一杯になりがちな世の中だが、人の苦労を思いやる優しさこそ必要だと思わせてくれる一句。「忽然と友は施設へ風知草」紀子さんの句。仲の良かった友人が前触れもなく、介護施設へ入ってしまったのだろう。上五の「忽然と」に作者の驚きがよく表れている。超高齢化社会では容易に起こり得ることだ。「風知草」はイネ科の植物で葉が細長く、表が白、裏は緑。表と裏の逆転した感じが戸惑いの大きさを物語る。(潔)
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