艸句会報:東陽(令和3年7月)
東陽通信句会
高点3句
奥能登や青田の風は海に抜け 安住 正子
子らの声はみ出す日除駄菓子店 新井 洋子
製麺の音の洩れくる葭簾 向田 紀子
初蟬や一木一草うごかぬ日 野村えつ子
頬杖をついて無心や水中花 安住 正子
砂浜に小流れのすぢ浜豌豆 岡崎由美子
終バスの尾灯熱帯夜へ続く 新井 洋子
峡深き瀬音いつしか河鹿笛 岡戸 林風
古紙結ぶ紐の緩みも小暑かな 山本 潔
踏切の遮断機下りて炎暑なほ 長澤 充子
ビル街の隙間すきまの雲の峰 斎田 文子
梅雨晴や鳥群れくぐる葛西橋 中島 節子
浜風や烏賊がするめと化してゆく 中川 照子
空蟬や心は老いに追ひつかず 堤 やすこ
気散じのお鷹の道や岩清水 向田 紀子
ともかくも走つて逃げる夕立かな 松本ゆうき
蟬しぐれ聴きながら読む句集「艸」 貝塚 光子
岩の間の魚影きらめく群青忌 飯田 誠子
(清記順)
【一口鑑賞】関東甲信は平年より3日早く、7月16日に梅雨が明けた。ほぼ同じ頃に私は今年最初の蟬の声を聞いた。「初蟬や一木一草うごかぬ日」えつ子さんの句。初蟬が鳴いた日の感じを端的に書きとめている。「一木一草うごかぬ」とはいつも自然を観察している作者の実感。風がやみ初蝉だけが鳴いている。この日を境に季節も晩夏へと移ったのだろう。「踏切の遮断機下りて炎暑なほ」充子さんの句。情景としては遮断機が下りているだけなのだが、猛暑がやってきた日の1シーンとして共感できる。足止めを食っている作者の苛立ちは「炎暑なほ」に余すことなく表現されているのではないか。シンプルに季語の力を信じて詠んだ一句。(潔)
高点3句
奥能登や青田の風は海に抜け 安住 正子
子らの声はみ出す日除駄菓子店 新井 洋子
製麺の音の洩れくる葭簾 向田 紀子
初蟬や一木一草うごかぬ日 野村えつ子
頬杖をついて無心や水中花 安住 正子
砂浜に小流れのすぢ浜豌豆 岡崎由美子
終バスの尾灯熱帯夜へ続く 新井 洋子
峡深き瀬音いつしか河鹿笛 岡戸 林風
古紙結ぶ紐の緩みも小暑かな 山本 潔
踏切の遮断機下りて炎暑なほ 長澤 充子
ビル街の隙間すきまの雲の峰 斎田 文子
梅雨晴や鳥群れくぐる葛西橋 中島 節子
浜風や烏賊がするめと化してゆく 中川 照子
空蟬や心は老いに追ひつかず 堤 やすこ
気散じのお鷹の道や岩清水 向田 紀子
ともかくも走つて逃げる夕立かな 松本ゆうき
蟬しぐれ聴きながら読む句集「艸」 貝塚 光子
岩の間の魚影きらめく群青忌 飯田 誠子
(清記順)
【一口鑑賞】関東甲信は平年より3日早く、7月16日に梅雨が明けた。ほぼ同じ頃に私は今年最初の蟬の声を聞いた。「初蟬や一木一草うごかぬ日」えつ子さんの句。初蟬が鳴いた日の感じを端的に書きとめている。「一木一草うごかぬ」とはいつも自然を観察している作者の実感。風がやみ初蝉だけが鳴いている。この日を境に季節も晩夏へと移ったのだろう。「踏切の遮断機下りて炎暑なほ」充子さんの句。情景としては遮断機が下りているだけなのだが、猛暑がやってきた日の1シーンとして共感できる。足止めを食っている作者の苛立ちは「炎暑なほ」に余すことなく表現されているのではないか。シンプルに季語の力を信じて詠んだ一句。(潔)
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