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艸句会報:東陽(令和3年8月)

東陽通信句会

高点2句
江戸つ子を気取つて啜る走り蕎麦   中川 照子
秋風鈴ときどき息を吹き返す     飯田 誠子

父よりも母よりも生き盂蘭盆会    斎田 文子
日傘閉づ纏ふ日差しをひと振りし   新井 洋子
手花火の匂ひ残りて深き闇      飯田 誠子
朝顔やけふは寝坊の一年生      貝塚 光子
一身を風にまかせて猫じやらし    安住 正子
手でちぎるナンをカレーに終戦日   山本  潔
八月や流れゆくもの遠ざかる     堤 やすこ
子どもらは河童と人魚夏終る     松本ゆうき
味噌汁のかをりふくふく今朝の秋   岡崎由美子
ほつほつと対岸に灯や夜の秋     岡戸 林風
虱にも黒白ありき終戦日       中川 照子
総身にまとふ浜風秋立ちぬ      中島 節子

(清記順)

【一口鑑賞】江戸つ子を気取つて啜る走り蕎麦」照子さんの句。家族で行ったお蕎麦屋さんでの一場面かもしれない。上品に音を立てずに食べようとする周囲の人々を尻目に、「そんなに気取ってどうするの。江戸っ子はねぇ〜」と大胆にもりそばを啜ってみせたのだろう。作者の大好きな歌舞伎にもそんなシーンがありそうだ。「八月や流れゆくもの遠ざかる」やすこさんの句。上五の切れに強い感慨が込められている。暦のうえでは夏から秋に変わるが、暑さはまだ厳しい。そんななかに原爆忌と敗戦忌があり、お盆も重なる。中七の「流れゆくもの」とは一体何だろう。おそらく大いなる時間。強いて言えば作者にとっての「昭和」という時代そのものなのではないか。(潔)
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艸俳句会

Author:艸俳句会
艸俳句会のWeb版句会報。『艸』(季刊誌)は2020年1月創刊。
「艸」は「草」の本字で、草冠の原形です。二本の草が並んで生えている様を示しており、草本植物の総称でもあります。俳句を愛する人には親しみやすい響きを持った言葉です。

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