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艸句会報:連雀(令和3年9月1日)

連雀句会(三鷹駅前コミュニティセンター)
兼題「九」

さつきまで狂ひゐし灯蛾掃かれけり  坪井 信子
藤袴かるく吹かれて色淡き      矢野くにこ
秋声や波の模様の蜻蛉玉       山本  潔
総持寺の魚板のこだま今朝の秋    安住 正子
底紅の咲くアパートに孫娘      春川 園子
稲妻や音のせぬのも恐ろしき     松本ゆうき
きらめきに初秋の陰り別府湾     渕野 宏子
秋の水湛え水神祀らるる       進藤 龍子
長き夜やまた読む遠野物語      松成 英子
かなかなや檻のイグアナ眼閉ぢ    中島 節子
夕顔や灯りてよりの闇深く      飯田 誠子
戦没者慰霊碑暮色葉月尽       束田 央枝
友の訃や時いつくしむ夏の果     横山 靖子
九頭竜川に放つ灯籠流しかな     向田 紀子

(清記順)

【一口鑑賞】さつきまで狂ひゐし灯蛾掃かれけり」信子さんの句。夜になってコンビニかスーパーへ行ったのだろう。入口近くの誘蛾灯の周りを狂ったように飛ぶ蛾をちらと見た。それが帰る時にはもう掃かれていたのだ。さほど長い時間ではない。「あら、もう掃かれている」という驚きが一句になった。「灯蛾」への哀れみが感じられる。「稲妻や音のせぬのも恐ろしき」ゆうきさんの句。「稲妻」が秋の季語。遠くで光る雷で、夏の「雷鳴」や「落雷」のような激しい音は聞こえない。マンションの窓から眺める空中放電は神秘的でさえあるが、作者はふと「恐ろしき」と感じたのだ。いつ迫りくるかわからない怖さは、新型コロナウイルスにも通じるのではないか。(潔)
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艸俳句会

Author:艸俳句会
艸俳句会のWeb版句会報。『艸』(季刊誌)は2020年1月創刊。
「艸」は「草」の本字で、草冠の原形です。二本の草が並んで生えている様を示しており、草本植物の総称でもあります。俳句を愛する人には親しみやすい響きを持った言葉です。

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