艸句会報:若草(令和3年11月13日)
若草句会(亀有 ギャラリー・バルコ)
兼題「有」
高点1句
冬あたたか遺影の笑みと対座して 岡戸 林風
雑学を重ねし一世落葉焚 松本ゆうき
残菊を括り千代女の寺閑か 吉﨑 陽子
けらつつき老樹の木霊呼び覚ます 新井 洋子
保母さんのエプロン掴む児に小春 沢渡 梢
「訳有り」と朱書きのタグの松葉蟹 新井 紀夫
盆栽の朽ちてなほ咲く寒桜 石田 政江
神無月妻は中有の旅にあり 岡戸 林風
ひもすがら我を介助の木の葉髪 市原 久義
時雨忌や歳時記に有るめくり癖 針谷 栄子
有り体に言へば凡婦よちやんちやんこ 安住 正子
新橋も有楽町も時雨れけり 山本 潔
有機なる虫食ひ蕪菁届きけり 飯田 誠子
(清記順)
【一口鑑賞】「冬あたたか遺影の笑みと対座して」林風さんの句。先月末に奥様を亡くされた作者。日々遺影と向き合い、語る思い出は尽きないのだろう。奥様は手術から亡くなるまでの日々をずっとご自宅で過ごし、最期は「バイバイ」と手を振ってくれたそうだ。上五の「冬あたたか」には、奥様への感謝の念と、精いっぱい看病ができたという作者の思いが込められている。欠席投句だったが、句会では「季語に救われる思いがした」との声が上がった。「神無月妻は中有の旅にあり」も林風さんの句。「中有(ちゅうう)」は仏教用語。日本では死後49日までの間を言う。この日の兼題「有」から発想しての作だが、まさに今しか詠めない一句。悲しみと向き合う上でも、俳句が心の支えになっていると思わせてくれる。(潔)
兼題「有」
高点1句
冬あたたか遺影の笑みと対座して 岡戸 林風
雑学を重ねし一世落葉焚 松本ゆうき
残菊を括り千代女の寺閑か 吉﨑 陽子
けらつつき老樹の木霊呼び覚ます 新井 洋子
保母さんのエプロン掴む児に小春 沢渡 梢
「訳有り」と朱書きのタグの松葉蟹 新井 紀夫
盆栽の朽ちてなほ咲く寒桜 石田 政江
神無月妻は中有の旅にあり 岡戸 林風
ひもすがら我を介助の木の葉髪 市原 久義
時雨忌や歳時記に有るめくり癖 針谷 栄子
有り体に言へば凡婦よちやんちやんこ 安住 正子
新橋も有楽町も時雨れけり 山本 潔
有機なる虫食ひ蕪菁届きけり 飯田 誠子
(清記順)
【一口鑑賞】「冬あたたか遺影の笑みと対座して」林風さんの句。先月末に奥様を亡くされた作者。日々遺影と向き合い、語る思い出は尽きないのだろう。奥様は手術から亡くなるまでの日々をずっとご自宅で過ごし、最期は「バイバイ」と手を振ってくれたそうだ。上五の「冬あたたか」には、奥様への感謝の念と、精いっぱい看病ができたという作者の思いが込められている。欠席投句だったが、句会では「季語に救われる思いがした」との声が上がった。「神無月妻は中有の旅にあり」も林風さんの句。「中有(ちゅうう)」は仏教用語。日本では死後49日までの間を言う。この日の兼題「有」から発想しての作だが、まさに今しか詠めない一句。悲しみと向き合う上でも、俳句が心の支えになっていると思わせてくれる。(潔)
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