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艸句会報:すみだ(令和4年1月26日)

すみだ句会(すみだ産業会館)
兼題「香」

高点1句
寒蜆この世に未練もう少し      髙橋 郁子

松過ぎの厨の隅の残り酒       内藤和香子
雪嶺を仰ぐ出湯や大糸線       矢島 捷幸
寒牡丹人の吐息に囲まれり      工藤 綾子
寒の入わが書の並ぶ日書展      長澤 充子
寒肥を光のごとく零しけり      山本  潔
冴ゆる夜の妻の遺稿に目を通す    岡戸 林風
吸呑みの吸口かたき寒の夜      岡崎由美子
笑ひ皺ふえるもよろし明の春     福岡 弘子
人日の灯らぬ窓や夕ざるる      大浦 弘子
大寒の麻酔痺るる歯の治療      貝塚 光子
寒月やふと触れ合ひし手のぬくみ   山本 吉徳
犬二匹躾ける少女日脚伸ぶ      松本ゆうき
極寒の心身ほどくアロマの香     高橋 郁子

(清記順)

【一口鑑賞】寒蜆この世に未練もう少し」郁子さんの句。昨年、ご主人を亡くされた作者。寂しさを感じながらも、時の流れとともに前向きな気持ちが湧いてきたようだ。蜆はカルシウムやビタミンBが豊富で、食せば肝臓の機能を助けてくれる。「寒蜆」の熱い味噌汁でも味わいながら、この先のことを考えているのだろう。気張らずに「もう少し」と肩の力が抜けているところが人気を集めた。「吸呑みの吸口かたき寒の夜」由美子さんの句。吸呑みを使うのは病気をした時くらいだろう。ここ半年余りの間に、艸では手術を受ける人が相次いだが、それぞれ強靭な精神力で乗り越えた。作者もこのほど退院したばかり。冬の夜の病院のベッドで不安を抱えながら口にした吸呑み。その吸口の硬さを体感的かつ詩的に捉えたところが見事だ。読み手にも硬さが伝わってくる。(潔)
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艸俳句会

Author:艸俳句会
艸俳句会のWeb版句会報。『艸』(季刊誌)は2020年1月創刊。
「艸」は「草」の本字で、草冠の原形です。二本の草が並んで生えている様を示しており、草本植物の総称でもあります。俳句を愛する人には親しみやすい響きを持った言葉です。

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